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『夫の年収1000万円』と『夫婦で年収500万円ずつ』には“決定的な差”があった…→最終的に得をするのはどっち?【お金のプロが解説】

  • 2026.1.25
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出典元:photoAC(

「世帯年収1000万円」といえば、かつては裕福な家庭の象徴でした。しかし実際に到達してみると、「税金ばかり取られて生活が楽にならない」「手当がもらえなくて損をしている気がする」と感じる方が少なくありません。

実は日本の税制や社会保障制度において、「夫が1人で1000万円稼ぐ家庭」と「夫婦で500万円ずつ稼ぐ家庭」の間には、埋めがたい“決定的な差”が存在することをご存知でしょうか。その差は、毎月の手取り額だけでなく、受けられる行政サービス、さらには老後の年金受給額にまで及び、生涯で見ると家一軒分に匹敵する金額になることもあります。

今回は、金融機関の現役マネージャー 中川佳人さんにインタビュー。「手取り額のリアルな差」から「所得制限の壁」、そして「老後資金の勝敗」まで、徹底的な試算をもとに解説していただきました。

手取りだけで「年間70万円」も違う? 日本の税制が“片働き1000万”に厳しいこれだけの理由

---同じ世帯年収1000万円でも、「1人が稼ぐ場合」と「2人で稼ぐ場合」では、税金(所得税・住民税)と社会保険料を引いたあとの「手取り額」には、年間でどれくらいの差がつきますか?

中川 佳人さん:

「同じ世帯年収1000万円でも、1人で稼ぐ場合と、夫婦2人で500万円ずつ稼ぐ場合では、手取り額に一定の差が生じるケースが一般的です。条件をそろえた試算では、共働き世帯の方が年間でおおむね40万円〜70万円程度、手元に残るお金が多いとされています。

この差が生まれる主な理由は、日本の税制が所得の高い人ほど税率が上がる累進課税を採用している点にあります。所得を1人に集中させると、高い税率が適用されやすくなりますが、2人に分散すれば、それぞれが比較的低い税率で課税されます。さらに、給与所得控除や基礎控除といった控除を、夫婦それぞれが利用できる点も、税負担を軽くする要因です。

具体的には、年収1000万円を1人で稼ぐ場合、所得税と住民税を合わせて約140万円前後となり、社会保険料を差し引いた可処分所得は710万円〜730万円程度になります。一方、500万円ずつの共働き世帯では、税負担は世帯合計で70万円台から80万円弱に収まり、手取りは780万円前後になるケースが一般的です。社会保険料は税金と違って税率が上がる仕組みではないため、世帯年収が同じであれば、稼ぎ方による差は比較的小さくなります。

もっとも、実際の可処分所得は、賞与の有無や加入している保険の種類、扶養の状況などによって変わります。どの家庭でも同じ金額差が出るわけではありませんが、平均的なモデルでは、共働きの方が手取りが多くなりやすい傾向があると考えてよいでしょう。」

「高校無償化」も対象外に…。高所得世帯を苦しめる「所得制限」の壁、共働きなら突破できるのか

---高年収世帯を苦しめるのが「所得制限」です。特に子育て世帯において、「片働き1000万」だとカットされてしまうが、「共働き500万×2」なら受け取れる行政サービス(高校授業料無償化など)にはどのようなものがありますか?

中川 佳人さん:

「同じ世帯年収1000万円でも、共働き世帯であれば、高校授業料の支援や保育料の軽減、自治体独自の教育支援に加え、住宅ローン控除といった税制上の優遇を受けられるケースがあります。片働きの高所得世帯では所得制限により対象外となりやすい制度でも、共働きでは支援を享受できる可能性があります。

こうした差が生じる理由は、多くの制度が世帯の合計年収ではなく、各人の所得から控除を差し引いた後の課税所得や住民税の課税標準額を基準に判定しているためです。共働き世帯では、夫婦それぞれが給与所得控除や基礎控除を受けられる分、同じ世帯年収でも判定基準となる金額を抑えやすくなります。

具体例として分かりやすいのが高校授業料の支援制度です。私立高校の場合、片働き世帯では年収が910万円を超えると対象外になるケースが多い一方、共働き世帯では所得が分散されることで、世帯年収が1000万円を超えていても支援対象となる場合があります。その結果、年間で十数万円から数十万円の負担差が生じることもあります。

また、住宅ローン控除では、共働きでペアローンを組むことで夫婦それぞれが控除を受けられ、節税効果が高まります。なお、児童手当は2024年10月の制度改正により所得制限が撤廃され、現在は世帯年収による支給差はありません。制度の対象かどうかは自治体や家庭の条件によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。」

老後資金でも「1000万円」の差がついた。年金受給額で見る、最強の働き方はどっちだ

---現役時代は「共働き」が圧倒的に有利に見えますが、視点を「老後(年金受給額)」に移した場合、勝敗は変わりますか?

中川 佳人さん:

「現役時代は共働きが有利でも、老後はどうなのかと不安に感じる方は多いですが、年金受給額の面でも共働き世帯の優位性は基本的に変わりません。

理由は、公的年金が夫婦それぞれの加入実績に応じて支給される仕組みだからです。共働き世帯では、夫婦2人分の厚生年金を受け取ることができます。一方、片働き世帯では、厚生年金は主に1人分に限られます。また、厚生年金には算定の上限があるため、所得を1人に集中させるよりも、2人で分けた方が世帯全体の受給額が伸びやすくなります。

具体的な試算では、65歳以降の年金額は、片働き世帯1000万円で年間約330万円台、共働き500万円×2世帯では380万円前後になるケースがあります。この差は毎年約40万円以上となり、老後30年で考えると1000万円を超える差になります。年金額の差は、生活費だけでなく、医療費や介護費といった突発的な支出への対応力にも直結します。

さらに、共働き世帯は現役時代から自分名義の年金を積み上げているため、将来に対する心理的な安心感を得やすい点も見逃せません。老後資金を夫婦それぞれで確保できることは、ライフプランの選択肢を広げる要素になります。

ただし、遺族年金では共働き世帯は併給調整が入り、配偶者が先立った場合の上乗せが限定される点には注意が必要です。それでも、老後を夫婦で支え合える構造や収入源の分散という意味では、共働きの安心感は高いと言えるでしょう。」

日本の制度は「共働き」が最強の攻略法。夫婦で稼ぐことは最大のリスクヘッジになる

「1人で高収入を稼ぐ」ことは素晴らしい能力ですが、こと日本の税制や社会保障制度においては、「2人で分散して稼ぐ」ほうが圧倒的にコストパフォーマンスが良いことがわかります。

中川さんの解説を整理すると、共働き世帯のメリットは以下の3点に集約されます。

  1. 現役時代の手取りが多い 税率を低く抑え、控除をダブルで使えるため、年間数十万円の差がつきます。
  2. 所得制限を回避しやすい 高校無償化などの判定基準をクリアしやすく、行政サービスの恩恵を受けやすくなります。
  3. 老後も安泰 「厚生年金×2人分」のパワーは絶大で、老後資金の不安を大きく軽減します。

もちろん、家庭の事情はそれぞれであり、無理に共働きを選ぶ必要はありません。しかし、「働き方でこれだけの金額差が生まれる」という事実を知っておくことは、今後のライフプランや家計戦略を練る上で、強力な武器になるはずです。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。
専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。