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「相手が悪ければ晒してもいい」急増するSNSでの“ネット私刑”…→弁護士「高額な損害賠償請求に変わる可能性が」

  • 2026.1.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「ひどいニュースだ、許せない」「面白い動画だからみんなにも見てほしい」 そんな軽い気持ちで押したSNSの「リポスト(拡散)」ボタン。自分が書いた文章ではないし、ただボタンを押しただけだから責任はない──そう思い込んでいませんか?

実はそのワンクリックが、ある日突然、裁判所からの通知や高額な損害賠償請求に変わる可能性があります。近年、SNS上での誹謗中傷や「晒し行為」に対する法的措置は厳格化しており、「元ネタを作った人」だけでなく、「それを広めた人」も同様に責任を問われるケースが増えています。

今回は、ベリーベスト法律事務所 齊田貴士 弁護士にインタビュー。知らなかったでは済まされない「リポストの法的責任」と「私刑(晒し行為)のリスク」について、弁護士視点のリアルな実情を伺いました。

「自分はボタンを押しただけ」は通用しない? リポストでも賠償責任を負う“法的根拠”

---「私は元の投稿を書いたわけじゃない、ただリポスト(拡散)ボタンを押しただけだ」という主張は、裁判でどの程度通用するのでしょうか?

齊田 貴士さん:

まず、リポストボタンを押しただけでも名誉棄損(不法行為)は成立し、損害賠償責任を負う可能性があるので、注意が必要です。

大阪高裁令和2年6月23日判決では、「元ツイートの内容が・・・他人の社会的評価を低下させるものであると判断される場合、リツイート主がその投稿によって元ツイートの表現内容を自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置くということを認識している限り、違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き、当該投稿を行った経緯、意図、目的、動機等のいかんを問わず、当該投稿について不法行為責任を負う」として、損害賠償責任を認めています。

なお、例えば、単に何も言葉を付さずリポストする場合の他、元のツイートに迎合したコメントをしてリポストしたり、迎合ではなく中立的なコメント(例えば、「真実かは分かりませんが、~のようなツイートがありました。」)を付してリポストしたりする場合にも、同様に不法行為が成立する可能性があるので注意が必要です。

リポストする際には、元のツイートが名誉棄損ないし侮辱するものでないか十分に注意されたほうがいいと思います。

「相手が悪ければ晒してもいい」は危険な勘違い。事実であっても“私刑”が許されない理由

---「相手が実際に迷惑行為をした動画なんだから、事実を広めて何が悪い」と反論する人もいます。法的に見て、事実であれば何を晒しても許されるわけではない理由(公益性とプライバシー)を教えてください。

齊田 貴士さん:

日本では、自力救済や私的制裁は認められておらず、犯罪の処罰権限があるのは国だけです。

それゆえ、犯罪を認識したのであれば、警察に通報するなどの適切な行為を行えばよく、あえて晒すという私刑行為には、公益目的や正当性が認められにくいです。

ある日突然「開示請求」が届いたら…。解決までにかかるリアルな「期間」と「慰謝料」の相場

---ある日突然「発信者情報開示に係る意見照会書」が自宅に届いた場合、そこから解決までには、リアルにどれくらいの「期間」と「金銭(慰謝料+相手の弁護士費用)」がかかるものですか?

齊田 貴士さん:

まず期間についてですが、これは意見照会書に対し、どういった回答をするのかにより異なると思います。
仮に同意して早期に示談交渉をする場合、何をもって解決と定義するかにもよりますが、1か月から3か月程度で解決すると思います(交渉で示談できず、裁判までいけば1年くらいはかかるかもしれません。)。
他方で、意見紹介書に対し、情報の開示を拒否した場合、1年から1年半ほどはかかるかもしれません。

また、金銭(慰謝料+相手の弁護士費用)も事案の内容によるため、なんとも言いにくいのですが、数十万から100万円程度が多いのではないかと思います。

なお、上記はあくまで参考程度であり、期間も金銭も事案によりけりなので、詳細についてはそれぞれの事案を弁護士に相談されるときに直接ご確認いただいたほうがよいと思います。

その拡散ボタン、押す前に「法的リスク」を想像できますか?

SNSは情報を手軽に共有できる便利なツールですが、そこには現実社会と同じ、あるいはそれ以上の法的責任が伴います。 齊田弁護士の解説を整理すると、身を守るためのポイントは以下の3点です。

  1. リポストは「賛同」とみなされる 「自分は書いていない」という言い訳は法廷では通用しません。拡散した時点で、あなたも加害者の一人になる可能性があります。
  2. 正義感による「晒し」もNG 相手に非があっても、個人がネットで裁くことは許されません。犯罪行為を見つけたらSNSに投稿するのではなく、警察に通報するのが正解です。
  3. 解決には「時間」と「お金」がかかる 一度トラブルになれば、解決までに1年以上かかることもあり、数十万円単位の金銭的負担ものしかかります。

「みんながやっているから」という同調心理は、いざという時にあなたを守ってはくれません。 指先一つで人生の時間を奪われないよう、拡散ボタンを押す前に「これは本当に広めるべき情報か?」「誰かの権利を侵害していないか?」を一瞬立ち止まって考える癖をつけることが大切です。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。