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「とりあえず任意継続」で大損。退職後の保険料…一気に跳ね上がる前に確認すべき「たった1つの条件」とは?【お金のプロが解説】

  • 2026.1.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

会社を辞めた後、健康保険の手続きで「とりあえず今の保険を続けよう(任意継続)」と、安易にハンコを押していませんか?実はその選択、あなたの場合だと“大損”になっているかもしれません。

会社員時代は会社が半分負担してくれていた保険料も、退職後は原則「全額自己負担」となり、金額は一気に跳ね上がります。しかし、条件次第では「国民健康保険(国保)」に切り替えたほうが、安くなるケースがあるのです。

今回は、金融機関の現役マネージャーであり、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の中川佳人さんにインタビュー。「独身か既婚か」「自己都合か会社都合か」など、状況によって異なる“正解”の選び方について徹底解説していただきました。

「独身・年収300万円」なら要注意。思考停止で「任意継続」を選ぶと大損するこれだけの理由

---退職者の多くが「とりあえず任意継続」を選んでしまいますが、実はこれが「大損」になる典型的なパターン(年収や家族構成)はどういう人ですか?

中川 佳人さん:

「退職時に『とりあえず任意継続』を選んでしまい、結果的に大きな損につながりやすいのは、年収が比較的低めで扶養家族がいない人や、倒産・解雇などの会社都合で離職した人です。このような方は、国民健康保険に切り替えたほうが保険料負担を抑えられる可能性があります。

理由は、任意継続では保険料の事業主負担がなくなり、退職時点の保険料負担が原則として約2倍になる仕組み(上限あり)だからです。収入が下がった直後の家計には重くなりやすい一方、国民健康保険は前年所得をもとに算定され、所得水準に応じた軽減制度や失業者向けの特例が用意されています。

目安として、扶養家族のいない単身世帯で、退職前の年収がおおむね300万円前後まで、かつ退職後に収入が大きく下がる場合には、国民健康保険の軽減制度が適用され、任意継続より保険料負担が軽くなるケースが見られます。自治体差はあるものの、収入が下がった直後ほど差が表れやすく、会社都合退職に該当する場合は、現役時代より負担が下がることもあります。

扶養がなく、退職後に収入が大きく下がる人ほど、『何となく任意継続』は注意が必要です。途中で切り替えることは可能ですが、最初に選んだ保険で高い保険料を数か月払い続けてしまう例もあります。国保の試算を一度行ってから判断することが、最適な選択をする近道と言えます。」

逆に「任意継続」を継続するべきなのは? 

---逆に、絶対に「任意継続」を継続した方がいいのはどのような人ですか? 「扶養家族」の人数が保険料に与える決定的な違いについて教えてください。

中川 佳人さん:

「退職後も『任意継続』を優先して選んだほうがよい人は、扶養家族がいる人です。扶養家族がいる場合は、任意継続を選ぶことで家計全体の保険料負担を大きく抑えられる可能性があります。

その理由は、健康保険には『扶養』という仕組みがあり、要件を満たす家族は何人いても追加の保険料がかからないからです。任意継続でもこの仕組みは変わらず、本人1人分の保険料で家族全員がカバーされます。これに対して国民健康保険には扶養の概念がなく、加入者一人ひとりに定額の保険料がかかるため、世帯人数が増えるほど負担が膨らみます。

例えば、配偶者が専業主婦で子どもが2人いる4人家族の場合、国保では4人分の均等割が発生します。所得がそれほど高くなくても、人数分の定額負担が積み重なり、結果的に任意継続より高くなるケースが見られます。また、現役時代の年収が高かった人は、任意継続の保険料に上限がある点も見逃せません。国保では所得に比例して負担が増え続けるため、高所得層ほど差が開きやすくなります。

扶養家族が1人でもいる場合は、国保に切り替える前に任意継続の保険料を必ず確認しましょう。近年は途中で切り替えができるようになったため、最初の1年は任意継続で家族を守り、翌年以降に状況を見て国保へ移る選択も可能です。家族構成を軸に考えることが、後悔しない判断につながります。」

保険料が最大7割安くなる? 倒産・リストラ退職者が絶対に申請すべき「国保の特例(軽減措置)」

---知っている人だけが得をする「国保の減免制度(非自発的失業者への特例)」について教えてください。会社都合退職の場合、国保の保険料が最大で約7割も安くなるというのは本当ですか?

中川 佳人さん:

「会社都合などで退職した場合、国民健康保険料が大きく下がる特例が用意されています。条件を満たせば、保険料が約7割程度軽減されることもあり、退職後の家計負担を大きく和らげる制度です。これは『非自発的失業者に対する国保の軽減措置』と呼ばれ、あらかじめ知っておくことで、余計な支出を防げる可能性があります。

この制度の特徴は、保険料を計算する際に使われる前年の給与所得を、実際の金額ではなく『3割程度の水準』として扱う点にあります。計算上の所得が大きく引き下げられるため、所得に応じて決まる保険料の負担が大幅に軽くなります。さらに、この引き下げ後の所得をもとに低所得世帯向けの軽減判定も行われるため、定額でかかる部分の負担まで抑えられる場合があります。

対象となるのは、65歳未満で倒産や解雇など、本人の意思とは関係なく離職した人です。雇用保険の離職理由コードが一定の条件に該当すれば、前年に300万円の給与収入があった場合でも、国保では90万円として保険料が計算されます。軽減期間は原則として最長2年間続き、退職直後の生活を支える制度と言えます。

ただし、この軽減措置は自動的に適用されるものではありません。雇用保険受給資格者証などを持参し、自治体での申請が必要です。会社都合で退職した場合は、イメージだけで任意継続を選ばず、この特例が使えるかを必ず確認しましょう。正しく手続きを行うことで、退職後の不安を減らすことにつながります。」

退職時の保険選びは「家族の人数」と「辞め方」で決まる。まずは役所で試算を!

「健康保険なんてどれも同じ」は大間違い。中川さんの解説により、属性によって有利・不利が二つに分かれることが明らかになりました。

今回のポイントを整理すると、判断基準の目安は以下の3点です。

  1. 「単身・低所得」なら国保を検討 扶養家族がおらず、退職後の収入が下がる場合は、国保の方が負担が軽くなる可能性が高いです。
  2. 「家族持ち」なら任意継続が鉄則 扶養家族がいる場合、1人分の保険料で家族全員をカバーできる任意継続が圧倒的に有利です(国保は人数分かかります)。
  3. 「会社都合」なら国保の減免を確認 リストラや雇い止めの場合、国保保険料が劇的に安くなる特例があります。これを使わない手はありません。

最も危険なのは「イメージだけで決めること」です。退職手続きの前に、源泉徴収票を持って自治体の窓口へ行き、「国保にしたらいくらになりますか?」と試算してもらいましょう。そのひと手間で、老後の大切な資金を守ることができます。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。
専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。