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「特に注意が必要」不動産会社が警告。引っ越し時の見積もりで、“損をする客”の「4つの共通点」とは?

  • 2026.1.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

引越しの最後に行われる「退去立ち会い」。

早く手続きを済ませたいあまり、業者の言うことに「はい、わかりました」と機械的に頷いていませんか? 実はその瞬間、本来払わなくていいはずの数万円、時には数十万円を支払う約束をさせられているかもしれません。

賃貸の退去費用(原状回復費用)には、国が定めた明確なガイドラインがあります。しかし現場では、知識のない借主に対して、相場以上の修繕費やクリーニング代が請求されるケースが後を絶ちません。

そこで今回は、合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹 岩井佑樹さんにインタビュー。「退去立ち会いでカモにされないための振る舞い方」や「怪しい見積もりの見抜き方」、そして相手が思わず請求を引っ込める「交渉のキラーフレーズ」について、徹底解説していただきました。

「いい人」は狙われる? 退去立ち会いで業者が密かにチェックしている「入居者の隙」とは

---国の原則は「0.5ヶ月分」なのに、なぜ世の中の仲介手数料は「1ヶ月分」が当たり前になっているのですか? 私たちが知らないうちに「承諾」したことにされている、書類のカラクリについて教えてください。

岩井佑樹さん:

決定的なポイントは、その場で何も言わずに話を受け入れてしまうかどうかです。

退去立ち会いは原状回復の確認が目的ですが、実際の現場では「どこまで説明すれば納得するか」「どこまで突っ込んでくるか」を見られている場面でもあります。

例えば、次のような様子が見えると、業者側は「このまま進めても大丈夫そうだ」と感じやすくなります。

・「そうなんですね」とすぐに納得してしまう
・金額の話が出ても、理由を聞かない
・契約書やガイドラインの話が一切出てこない
・早く終わらせたい雰囲気が伝わってくる

特に注意したいのは「立ち会いで言われたこと=確定している」と思い込んでしまうケースです。立ち会いはあくまで確認の場であり、その場で借主が負担を認めたことにはなりません。

それでも、「ここは張り替えですね」「これは入居者様負担になります」と言われた瞬間にうなずいてしまうと、業者側は「説明すれば納得してもらえる」と判断します。
必ずしも悪意があるとは限らず、業者自身がガイドラインを正しく理解していない場合もあるため、なおさら注意が必要です。

一方で、次のような対応をするだけでも、請求内容が変わることは珍しくありません。

・入居時からあった傷や汚れを、写真を見せて指摘する
・立ち会い中にメモを取る
・「それはガイドライン上、どういう扱いになりますか?」と聞く
・その場で判断せず「一度確認してから連絡します」と伝える

これらは特別な交渉ではなく、当たり前の確認行為です。それだけで、「簡単には通らなそうだ」と判断され、請求が抑えられるケースも多くあります。

退去立ち会いでは、部屋の状態だけでなく、借主の姿勢そのものが見られています。黙って受け入れる必要はありません。

落ち着いて確認する姿勢を見せるだけで、結果が大きく変わります。

「クロス全面張り替え」「クリーニング一式」には要注意。知識がないと見落とす見積もりのカラクリ

---「手数料を安くして」と言うと、入居審査で落とされたり、態度が悪くなったりしないか不安です。プロの営業マンが言われて「これは断れない(0.5ヶ月にするしかない)」と観念する、交渉の「魔法の言葉」や「タイミング」はありますか?

岩井佑樹さん:

一つは、壁紙(クロス)に関する費用です。理由は以下のとおりシンプルです。

・一般の人が張替えの相場を知らない
・自然な劣化と借主負担の線引きが分かりにくい
・m2やメートル表記で、金額の大きさが実感しづらい

この条件が重なると、内容を深く確認しないまま受け入れてしまいやすくなります。

よくある説明としては「汚れがあるので全面張り替えになります」「次の入居者のために一式で交換します」といった言い方です。

ただし、国のガイドラインでは、普通に暮らしてできた汚れや日焼けは原則として貸主負担とされています。借主が負担するのは、落書きやタバコのヤニ、明らかな不注意による大きな汚れなど、限られたケースだけです。

それでも、実際の退去立ち会いでは、次のような説明を受けたという声をよく聞きます。

・6年住んだ部屋なのに、クロスを全面請求される
・一部の汚れだけなのに、部屋全体の面積で計算される
・耐用年数を考えず、新品交換前提の金額が出てくる

もう一つは「一式」と書かれたクリーニング費用です。

「ハウスクリーニング一式〇万円」とまとめて書かれていると一見妥当そうに見えますが、内訳を見ると最低限の作業しか含まれていないことも少なくありません。項目がまとめられている分「何にいくらかかっているのか」が分からず、借主側は指摘しづらくなります。

見積書を見るときに、特に注意したいポイントは次の点です。

・作業内容の内訳が大ざっぱ
・単価や計算の根拠が書かれていない
・面積や数量が、実際の部屋と合っていない

これが重なっている場合、その金額は最初から調整される前提で出されている可能性が高いと言えます。

怒鳴る必要はありません。不当な請求をピタリと止める「魔法の一言」と交渉術

---実は手数料を0.5ヶ月分どころか「0円」にできる物件もあると聞きます。業界用語でいう「AD(広告料)」付き物件の見抜き方や、それを交渉材料にする方法を教えてください。

岩井佑樹さん:

最も効果があるのは、次の一言です。

「国のガイドラインを前提にして、なぜ借主負担になるのかを書面で教えてください」

この言葉だけで、相手の対応が変わることは少なくありません。大切なのは、言い方です。怒ったり、最初から値下げを求めたりする必要はありません。

ポイントは次の3つです。

・感情的にならない
・「高いから下げてほしい」と言わない
・判断の理由を説明してもらう形にする

不当な請求の多くは「細かく聞かれない前提」で作られています。そのため、理由をはっきりさせようとするだけで話が通らなくなるケースが多いのです。

もう一歩踏み込むなら、次のように聞いてみてください。

・「これは経年劣化ではない、という判断の理由は何ですか?」
・「使用年数は金額に反映されていますか?」
・「借主負担になる特約は、契約書のどこに書かれていますか?」

どれも難しい言葉は使っておらず、ただ事実を確認しているだけです。それだけでも、相手から見ると「この入居者には、きちんと説明しないと通らない」と感じるようになります。

大切なのは、「払えません」と突っぱねることではありません。「なぜその金額になるのか、納得できる説明がほしい」という姿勢です。

その結果「今回は金額を見直します」「この部分は貸主負担に変更します」といった形で落ち着くことも決して珍しくありません。

退去費用は、知らないまま何も言わないと損をしてしまいます。分からないことを分からないまま流さないだけで「守れるお金」は確実にあります。

退去費用は「言われるがまま」ではなく「納得して払う」もの。知識が最大のお守りになる

退去時は忙しく、精神的にも余裕がないため、つい業者の提示する金額をそのまま受け入れてしまいがちです。しかし岩井さんの解説によれば、ほんの少しの知識と確認作業で、不当な出費は防げることがわかります。

今回のポイントを整理すると、以下の3点です。

  1. 立ち会いで即決しない:その場でサインを求められても、納得がいかなければ「持ち帰って確認します」と伝える勇気を持ちましょう。
  2. 「一式」や「全面」を疑う:本来は貸主が負担すべき「経年劣化」や「自然損耗」まで請求に含まれていないか、内訳を細かく確認することが重要です。
  3. 「ガイドライン」を共通言語にする:「安くして」と頼むのではなく、「ガイドラインのどこに該当しますか?」と聞くこと。これだけで、相手に対する牽制になります。

「知らないこと」は、不動産取引において最大のリスクです。大切な資産を守るためにも、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を一度確認し、毅然とした態度で退去手続きに臨んでみてはいかがでしょうか。


参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について(国土交通省)

監修者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹
合同会社ゆう不動産代表。『売る力 × 伝える力』を軸に、不動産の価値を最大化している。不動産売買の専門家として現場に立ちながら、不動産分野に特化したWebライターとして1,000本以上の記事を制作。売却査定から仲介・買取まで幅広く対応し、物件の魅力を正しく伝えることで「早く・高く・安心」の取引を実現している。派手な宣伝よりも、目の前の一人に誠実に向き合う姿勢を大切にしている。地域に寄り添いながら、不動産とWebを掛け合わせた独自の発信力で、オーナーに最良の選択肢を示すことが使命。「売買専門 × 情報発信」の融合ビジネスで、不動産の価値を丁寧に引き出している。