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「アニサキスは死滅しません」厚労省が“注意喚起”→魚介類による「食中毒」…家庭でやりがちな“NG行動”は?【管理栄養士が解説】

  • 2026.1.21
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

 

新鮮な魚介類が手に入りやすくなり、自宅で刺身や寿司を楽しむ機会が増えた一方で、ニュースなどで「アニサキス食中毒」という言葉を耳にする機会も増えてきました。

厚生労働省食品安全情報(@Shokuhin_ANZEN)も、Xにて「一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、しょうゆやわさびでは、#アニサキスは死滅しません!」との注意喚起を行いました。

実は、昔から言われている対策の中には、アニサキスには効果がない誤った常識も存在します。

そこで今回は、かきねキッチンの管理栄養士・小池三代子さんに取材。なぜ今アニサキス食中毒が増えているのかという意外な背景から、多くの人が勘違いしている「NGな対策」、そして家庭で魚を安全に食べるための「正しい予防法」までを徹底解説していただきました。

なぜ今増えている? アニサキス食中毒の背景にある「流通の進化」と「食文化の変化」

---アニサキス食中毒が増加している背景には、魚介類の流通や消費者の調理習慣において、どのような要因が関係しているのでしょうか?

かきねキッチン 管理栄養士 小池三代子さん:

アニサキスは魚類に寄生する線虫の一種です。アニサキス幼虫は、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、マグロ、イカなどの魚介類に寄生します。寄生した魚類を生で食べると、アニサキス幼虫が胃壁や腸壁に刺入して、食中毒(アニサキス症)を引き起こします。
アニサキス症は、一般的にアニサキスが体内に入ってから数時間〜1日程度で発症します。生の魚類を摂取後、激しい腹痛や吐き気・嘔吐などの症状が表れた場合は速やかに医療機関を受診してください。
アニサキスによる食中毒が増加している背景には、流通・輸送システムの進化があります。高度な保冷技術と高速道路網の整備により、かつては産地でしか食べられなかった鮮魚が、全国どこでも手に入るようになりました。また、鮮度を保ったまま輸送できるようになり、アニサキスが死滅する「冷凍処理」を介さない「生(チルド)」の状態での流通が増えたことも、感染リスクを高めています。
私たち消費者の調理習慣においても、アニサキス食中毒のリスクを高める方向に変化しています。新鮮な魚類が手に入るようになったことで、以前は生食しなかった魚種を生食する機会が増えたのです。

こうした背景は、豊かな食文化が育まれる一方で、アニサキス食中毒が増加している要因として考えられています。

「酢締め」や「薬味」は効果なし?! 勘違いしやすいアニサキス対策のNG行動

---家庭でよく行われている魚介類の保存・調理方法(例:酢締めや塩漬けなど)で、アニサキスが死滅すると誤解されやすいNG行動があれば教えてください。

かきねキッチン 管理栄養士 小池三代子さん:

家庭での調理において、最も危険なのは「調味料の殺菌効果を過信してしまうこと」です。アニサキスは非常に生命力が強く、人間が美味しいと感じる程度の味付けでは全く死滅しません。具体的に誤解されやすい「NG行動」をまとめました。

◎酢締め・塩漬け
しめ鯖やマリネなどは、アニサキス対策としては不十分です。
アニサキスは、酸性環境に強く、PH2〜4のクジラの胃内部でも生き続けます。
一般的な酢締め・塩漬けの調理法では、アニサキスは死滅しません。
◎薬味・調理料での殺菌
わさび・醤油・酢などの調味料、生姜・にんにく・青紫蘇などの薬味には殺菌作用があるイメージがありますが、対アニサキスには無力です。
食事に使う程度の濃度では、アニサキスは死滅しません。
◎よく噛んで食べる
アニサキス幼虫は体長2〜3cmほどで、滑らかな弾力があり、よく噛んで死滅させることは至難の業です。体が噛み切れても頭部が残っていれば死滅せず、アニサキス食中毒を発症する可能性があります。
◎表面だけの加熱・冷凍
アニサキスは魚の身の奥深くに入り込むので、表面を炙っただけの「たたき」では加熱が不十分です。また、家庭用の冷凍庫では中心部の温度が十分に下がり切らず、24時間冷凍しても死滅しないことがあります。

家庭でできる最も確実な予防策とは? 「加熱・冷凍」の基準と「食品表示」の落とし穴

---家庭で魚介類を安全に食べるために、アニサキス食中毒を防ぐために今日からできる最も確実な対策を教えていただけますでしょうか。

かきねキッチン 管理栄養士 小池三代子さん:

家庭で実践できる、アニサキス食中毒を防ぐための最も確実な対策は、「十分な加熱調理」もしくは「業務用レベルの冷凍」です。
・加熱:70℃以上、または60℃なら1分
・冷凍:-20℃以下で24時間以上

中心部までしっかり加熱できる焼き魚・煮付け・揚げ物は最もリスクが低い食べ方です。
家庭用の冷凍庫(通常-18℃前後)は、アニサキスが死滅する条件に対して少し温度が足りません。-20℃以下での冷凍保存環境が必要です。

それ以外にも、以下の対策が有効です。
・新鮮な魚を選び、すぐに内臓を取り除く
・魚の内臓を生で食べない
・目視で確認して幼虫を除去する

また、購入する際にはラベル等の食品表示をよく確認しましょう。
「生食用」、「刺身用」、「そのままお召し上がりになれます」等の生食用である旨の記載があることを確認してください。
ただし、生食用である旨の表示があってもアニサキスの不在を保証するものではありません。薄造りにしたり、細かく切ったりして、調理する際にアニサキスの有無をしっかり確認しましょう。
特に注意が必要なのは、「生」という表示は「冷凍していない」ことを意味するだけで、「生食用(刺身で食べられる)」とは限らないという点です。
確実なアニサキス対策としては、「解凍済み刺身」「生食用(冷凍処理済)」等、冷凍処理がしてあり、尚かつ生食できることを示す表示があることを確認しましょう。

正しい知識と対策で、安全に旬の魚を楽しもう

アニサキスは酢や塩、薬味では死滅しないため、これらを過信するのは大変危険です。最も確実な予防策は「中心部までの十分な加熱」または「-20℃以下で24時間以上の冷凍」です。一般的な家庭用冷凍庫では温度が足りない場合がある点にも注意しましょう。

また、鮮魚を購入する際は「生食用」の表示を確認し、調理時には目視でアニサキスを取り除くことが大切です。「生」という表示だけでは生食可能とは限らないことも覚えておきましょう。流通が発達し、美味しい魚が手に入りやすくなった今だからこそ、正しい知識と対策を身につけ、家庭でも安全に魚料理を楽しんでください。


監修者:かきねキッチン 管理栄養士 小池三代子
管理栄養士×保育士|実務経験13年|現在はフリーランスの管理栄養士として、栄養相談や献立作成、記事執筆・監修を中心に活動中。「人に寄り添い、無理なく実現できる食生活のサポート」をモットーに、忙しい中でも続けられる、簡単でおいしい時短レシピを発信している。