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突然「親の銀行口座」が凍結された。認知症対策を怠った子供の“末路”…今のうちに進めるべき「代理人手続き」とは?

  • 2026.1.21
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

親が認知症を発症したとき、突然「銀行口座が凍結された」というニュースを耳にし、不安に襲われる家族は少なくありません。

なぜ本人の大切なお金が使えなくなってしまうのか、その仕組みや背景がわからないと戸惑いは大きくなるばかりです。本記事では、銀行口座凍結の根本的な理由や起こり得る問題点、そして家族が今すぐできる対策について、金融機関勤務の現役マネージャー 中川 佳人さんの見解をもとに詳しく解説します。

認知症とお金の問題に向き合うきっかけとして、ぜひお読みください。

親の認知症で口座が凍結される理由とは?

---親が認知症になった際に銀行口座が凍結されてしまう根本的な理由は何で、金融機関はどのような基準や法的背景に基づいて判断しているのでしょうか?

中川 佳人さん:

「親が認知症になると銀行口座が凍結されてしまう根本的な理由は、『預金者本人の財産を守ること』と『金融取引の法的な有効性を確保すること』にあります。家族にとっては突然で不安に感じられますが、金融機関は預金者を守る立場から口座凍結という判断を行っています。

判断能力が低下した状態で行われた取引は、法律上、後から無効とされる可能性があります。もし銀行が払い戻しに応じた場合、正当な代理人などから『無効な取引だ』として預金の返還を求められるケースも想定されます。この二重払いのリスクを避けるため、銀行は慎重な対応を取らざるを得ません。

また、判断力が落ちた高齢者は、特殊詐欺や悪質な勧誘などの被害に遭いやすい状況です。金融機関には預金者の財産を守る義務があり、その防波堤として口座の利用を止める判断が行われます。

実務では、医師の診断書だけでなく、窓口での受け答えや署名の様子、暗証番号ミスの多発、不自然な引き出しなども判断材料になります。家族が窓口で『認知症が進んでいて』と伝えることも、きっかけになる場合があります。

口座凍結は本人の権利を守るための措置です。ただし一度凍結されると家族でも引き出しが難しくなるため、元気なうちに代理人手続きなどの事前準備を検討しておくことが大切です。」

手続きを先延ばしにするリスクとは?最悪のケースに備える重要性

---認知症の兆候が見られる親の口座について、子どもが「まだ大丈夫だろう」と代理人手続きを先延ばしにした結果、実際に起こり得る最悪のケースを教えてください。

中川 佳人さん:

「認知症の兆候が見られるにもかかわらず、『まだ大丈夫だろう』と代理人手続きを先延ばしにした結果、起こり得る最悪のケースは、親の資産が完全に凍結され、その影響で家族全体が経済的にも精神的にも追い詰められてしまうことです。問題は親本人だけでなく、子ども世代にも及びます。

金融機関は名義人の判断能力低下を察知すると、財産保護を目的に口座を凍結します。一度凍結されると、家族であっても生活費や介護費、医療費を引き出せません。本格的な解除には法定後見制度を利用する必要があるケースが大半です。(※使途が医療費などに限定される場合は柔軟に対応してくれる金融機関もありますが、原則は厳しい審査が必要です)

現実的には、介護施設の入居費や医療費を子どもが立て替えざるを得なくなり、自分たちの家計が圧迫されるケースが少なくありません。また、専門職後見人が選任されると、毎月の報酬を長期間支払い続ける必要が生じます。さらに、実家を売却したくても許可が下りず、空き家の維持費と介護費の二重負担に陥ることもあります。

このように『まだ大丈夫』と様子を見ることは、結果的に最も負担の大きい選択につながります。親に判断能力が残っているうちに、代理人手続きなどの事前対策を進めておくことが、家族を守る大切な備えになります。」

認知症の親と安心して話せる!まずはお金の管理について家庭で共有を

---認知症や相続への備えがまだの親を持つ家族が、今日から始められる「代理人手続き」の最も確実な第一歩を教えていただけますでしょうか。

中川 佳人さん:

「認知症や相続への備えがまだの親を持つ家族が、今日から始められる『代理人手続き』の最も確実な第一歩は、親本人とお金の管理について話し合う時間を持つことです。書類や制度よりも先に、親の希望を聞きながら、その後の手続きを考えていくことが大切です。重たい準備ではなく、日常会話から始めてみましょう。

代理人手続きは、すべて『本人の意思が確認できること』が前提になります。家族のためであっても、本人の理解や同意がなければ銀行手続きや法的な備えは進められません。判断能力があるうちに意思を共有できれば、選択肢は大きく広がります。

『もし入院したらお金の管理はどうする?』『手続きが必要になったら、どうすれば安心かな?』といった日常会話に近い話題から始めてみましょう。その中で、利用している口座や支払い方法、任せたい相手を自然に確認していくことが大切です。ここまで共有できて初めて、銀行の代理人届や任意後見、家族信託といった具体策を検討できます。

制度選びよりも先に、本人を含めた家族で話し合いの時間を持つことが何より大切です。将来にわたり家族が幸せに過ごしていくために、これからの暮らしについて話す時間を意識的に作ってみましょう。」

認知症の備えは「今」の家族の話し合いから始まる

親が認知症を発症すると、銀行口座が凍結されるのは本人の財産を守り、金融取引の安全を確保するためのやむを得ない措置です。しかし、この状態になると家族であっても自由にお金を引き出せなくなり、介護費用などの支払いに大きな負担が生じます。代理人手続きを事前に済ませておくことが、後の負担軽減につながる重要なポイントです。

そして、その第一歩は、硬い書類手続きではなく、日常会話のなかで親とお金の管理について意識的に話し合うことです。本人の意思が確認できるうちにこれらを共有すれば、家族みんなが安心して将来に備えられます。早めの準備が、家族を守る最も確実な方法であることをぜひ心に留めておきましょう。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance)

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。
専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。