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「極めて危険です」医師が警告。冬の朝ランニングで『突然死』を引き起こす…気をつけるべき「3つのNG行動」とは?

  • 2026.1.24
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「走り始めれば体は温まるから、寒くても我慢して外に出る」もしあなたがそんな習慣を続けているなら、それは心臓にとって「ロシアンルーレット」を回しているのと同じかもしれません。

冬の朝、特に起床直後のランニングは、条件が重なると健康な人であっても心筋梗塞や致死性不整脈による「突然死」のリスクが跳ね上がります。その背景にあるのは、単なる寒さだけでなく、私たちの体が持つ生理的なリズムと血液の状態でした。

今回は、林裕章先生にインタビュー。冬の朝に体内で起きている「モーニング・サージ」の恐怖と、明日から実践できる「安全な走り出しの黄金ルール」について徹底解説していただきました。

冬の朝、ランナーの体内で起きている「モーニング・サージ」とは?

---冬の朝のランニングで突然死のリスクが高まる背景には、気温や血圧の変動以外に、どのような生理学的メカニズムが関わっているのでしょうか?

林 裕章さん:

「冬の朝、突然死のリスクが高まる最大の要因は、単なる「寒さ」だけではなく、体内時計(サーカディアンリズム)と自律神経の劇的な切り替わりにあります。

1. モーニング・サージと自律神経の嵐
人間は起床前後、活動に備えて交感神経が急激に優位になります。これにより血圧が上昇しますが、冬場はここに「寒冷刺激」が加わります。皮膚が冷気に触れると、体温を逃がさないために末梢血管が収縮し、さらに血圧が跳ね上がります。これが「モーニング・サージ」と呼ばれる現象です。この急激な血圧上昇は、血管壁に強いストレスを与え、心臓への負荷を最大化させます。

2. 血液の粘度(ドロドロ血)と血栓リスク
就寝中は呼吸や発汗によりコップ1〜2杯分の水分が失われます。朝は体内の水分が不足し、血液が凝縮されて粘度が高まっている状態です。さらに、午前中は血小板の凝集能(固まる力)が高まる生理的特性があります。
この「固まりやすい血液」が、血圧上昇によって傷ついた血管壁のプラーク(脂肪の塊)を剥がすと、それが冠動脈や脳血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。

ここにランニング(運動強度)という追加ストレスが乗ると、冠動脈の狭窄や動脈硬化がある人では、心筋梗塞や致死性不整脈(心室細動など)の発症が現実的になります。要するに冬の朝は、「血管は縮む」「心臓は興奮する」「血液は固まりやすい」が同時に起きやすい、リスクが重なる時間帯です。」

「起きてすぐダッシュ」「厚着で汗だく」は危険!“死を招くNG習慣”とは?

---冬の朝に突然死リスクを高める具体的な行動パターン(例:起床後すぐの激しい運動、厚着のままのランニングなど)について、医学的な根拠とともに教えていただけますでしょうか?

林 裕章さん:

「医学的根拠に基づくと、以下の3つの行動は冬の朝において極めて危険です。

1. 「起きてすぐ」の無給水・無ウォーミングアップ
起床直後は、先述の通り血液が濃縮され、体温も一日のうちで最も低い状態です。この状態で水分も摂らずに外へ飛び出し、心拍数を急上昇させる激しいランニングを始めるのは、「錆びついたエンジンを極寒の中でフルスロットルで回す」ようなものです。心臓は急激な酸素需要に応えられず、心不全や不整脈を起こしやすくなります。

2. 過度な厚着による「ヒートストレス」
寒さを恐れるあまり、通気性の悪い防寒着を何枚も重ね着して走ることも危険です。運動開始後、体温が急上昇しても熱が逃げ場を失うと、体温調節機能がパニックを起こします。
急激な発汗はさらなる脱水を招き、血液粘度を高めます。また、暑すぎて急に上着を脱ぐと、その瞬間の冷気による温度差(ヒートショック)が心臓への追い打ちとなります。

3. “自覚症状が軽い”前兆を無視する
心筋虚血のサインは、典型的な胸痛だけでなく、息切れ・胸の圧迫感・みぞおちの不快感・冷汗・吐き気・いつもより妙に脚が重いなど曖昧な形で出ます。冬の朝は「寒いから」「寝起きだから」で片付けやすく、結果として対応が遅れます。
特に“普段運動しない人が冬だけ急に頑張る”は事故パターンとして有名で、雪かきが心臓に危険という注意喚起がAHA(米国心臓協会)から出るのも同じ構造です。」

玄関を出る前に勝負は決まる。医師が提唱する、準備運動と給水の「黄金の4ステップ」

---冬の朝に突然死のリスクを避けるため、明日から実践できる最も重要な「運動前の準備」を具体的に教えていただけますでしょうか。

林 裕章さん:

「冬の朝、安全に運動を始めるために守るべき「黄金の4ステップ」を提案します。

1. 室内での「プレ・ハイドレーション(予備給水)」と血圧確認
布団から出たらまず、コップ一杯の白湯(または常温の水)を飲みましょう。これにより血液の濃度を下げ、内臓を内側から温めて起こします。 可能であれば、運動前に血圧を測定してください。

2. 室内での「動的ストレッチ」による予熱
いきなり外に出るのではなく、室内で5〜10分ほど、肩甲骨や股関節を大きく動かす「動的ストレッチ(ラジオ体操など)」を行ってください。
これにより、心拍数を緩やかに上げ、筋肉への血流を増やしておくことで、外気による血管の収縮を和らげることができます。体が少しポカポカし、軽く汗ばむ程度が目安です。

3. 「玄関先での順応」と首元の保温
外に出る際は、玄関などの少し冷える場所で1〜2分待機し、体を冷気に慣らしてください。この時、最も重要なのが「首・手首・足首」の3つの首を隠すことです。特に首元には太い血管が通っており、ここをマフラーやネックウォーマーで保護するだけで、脳への血流急変を防ぎ、血圧の急上昇を劇的に抑えることができます。
ただし「ヒートストレス」を避けるため、服装は走ると暑くなる前提で。体幹は薄手を重ねて厚着し過ぎず控えめに。

4. 玄関を出て最初の5分は“会話できる強度”で歩く〜超スロージョグ
→これにより「起床→寒冷刺激→高強度運動」という危険な三段跳びを、
「起床→室内で段階的に起動→屋外に適応→運動」という安全なスロープに変えられます。
冬は起床前後の自律神経・血圧サージが強まりやすいことが示されているので、特にこの“なだらかさ”が有効です。

中止基準(これがある日は“休むのが正解”)
・最高血圧が普段より20mmHg以上高い場合や、160mmHgを超えている場合
・胸部圧迫感、普段と違う息切れ、冷汗、強い動悸
・風邪・発熱・下痢(脱水)
・いつもより明らかに血圧が高い/頭痛がする
このあたりは「やれば鍛えられる」ではなく、事故の前段階として扱いましょう。

最後に強調すると、冬の朝ランは悪者ではありません。問題は “出力(強度)”ではなく“立ち上げ方(準備と漸増)”です。冬の朝は体が繊細な条件に入りやすいので、そこに合わせた起動手順にする——これが、突然死リスクを現実的に下げつつ運動を続けるコツです。」

冬のランニングは「出力」より「起動手順」。丁寧な助走が命を守る

「冬の朝ラン」そのものが悪なのではありません。林先生の言葉を借りれば、問題なのは「急激な変化」に体を晒してしまうことです。

安全に走り続けるためのポイントを整理すると、以下の3点になります。

  1. 寝起きは「脱水&高血圧」状態 まずはコップ一杯の白湯を飲み、血液をサラサラにしてから動き出しましょう。
  2. 室内でエンジンを温める いきなり外に出ず、室内での動的ストレッチで心拍数を少し上げ、体を予熱することが重要です。
  3. 最初の5分は「歩く」勇気を 玄関を出てすぐ走るのではなく、ウォーキングや超スロージョグで外気に体を慣らす「助走期間」を設けましょう。

「今日はなんだか息苦しい」「いつもより脚が重い」──そんな些細な違和感は、体が発する重要なサインかもしれません。 冬の間だけは、タイムや距離を追うことよりも、「いかに滑らかに体を起動させるか」に意識を向けて、安全なランニングライフを楽しんでください。


監修者:林 裕章
国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。現在、外科医の父と放射線科医の妻と、その人その人に合った「人」を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営しており、医療・介護の両面から地域のかかりつけ医として総合診療を行っている。科学的根拠だけでは語れない、人間の心理に寄り添う医療を実践している。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。