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「手取りが減るケースも」お金のプロが警告。“通勤手当は非課税だからお得”は間違いだった…給与明細の「意外な落とし穴」

  • 2026.1.19
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「通勤手当は非課税だから、増えても手取りは変わらないはず…」そんなふうに考えていませんか?実は、通勤手当の増額が社会保険料の計算に影響を与え、結果として手取りが減ってしまうケースもあるのです。なぜ通勤手当が社会保険料に含まれるのか、その仕組みと注意点を、マネーシップス代表 石坂貴史さんに詳しく伺いました。この記事を読むことで、通勤手当の非課税と社会保険料の関係について正しい理解が深まり、自分の給与明細の見方や手取り額の変動を的確に把握できるようになります。

なぜ通勤手当は社会保険料の計算に含まれるのか?

---通勤手当が社会保険料の算定基礎に含まれることで保険料が上がる仕組みについて、具体的にどのような計算ロジックや基準額が影響しているのでしょうか?

石坂貴史さん:

通勤手当が社会保険料の計算に含まれる理由は、社会保険が税金とはまったく異なる考え方で設計されているためです。

所得税では、通勤手当は「生活に必要な実費補填」という考えから、一定額まで非課税とされています。一方、健康保険や厚生年金では、「非課税かどうか」は判断基準になっていません。

社会保険で重視されるのは、会社から労働の対価として、継続的に支払われているかどうかです。そのため、基本給や残業代、役職手当と同様に、毎月支給される通勤手当も原則として報酬に含まれます。社会保険料は、実際の給与額に直接保険料率を掛ける仕組みではなく、「標準報酬月額」という段階的な区分を使って、計算されます。

まず、基本給と通勤手当などを合算した報酬月額を算出して、その金額を一定の幅で区切られた等級表に当てはめます。そして、その等級ごとに決められた基準額をもとに、健康保険料と厚生年金保険料が決まります。

この仕組みのため、通勤手当が増えたことで報酬月額がわずかに増えただけでも、等級の境目を超えると、保険料がまとめて上がることがあります。通勤手当が非課税であるという事実と、社会保険料の計算は無関係である点を理解しておくことが大切です。

通勤手当の増額で手取りが減るケースはある?

---通勤手当が非課税だからと安心して高額な定期代を申請している会社員が、実は社会保険料の等級が上がることで手取りが減るケースはありますか?

石坂貴史さん:

通勤手当が非課税であることから、「通勤手当が増えても損はしない」と考えてしまう会社員は少なくありません。しかし、社会保険の仕組みを踏まえると、通勤手当の増額によって手取りが減るケースは、実際に起こると言えるでしょう。

たとえば、基本給と各種手当を合計した報酬月額が、標準報酬月額の等級の上限に近い水準にある人が、通勤経路の変更や転居によって、高額な定期代を申請した場合を考えてみます。この通勤手当自体には、所得税はかかりません。

しかし、報酬月額全体が増えることで、社会保険の等級が一段階上に変更される可能性があります。等級が上がった場合、健康保険料と厚生年金保険料が同時に引き上げられて、毎月の本人負担額が増加してしまいます。その結果、通勤手当として受け取る金額よりも、社会保険料の増加分の方が大きくなり、差し引きの手取りが以前より少なくなることがあります。

この現象は、特に新幹線通勤や長距離通勤などで、定期代が高額になる場合に起こりやすく、給与水準が等級の境目付近にある人ほど、影響を受けやすい点が特徴です。非課税という言葉だけで判断せず、社会保険料を含めた「全体の手取り」で考える必要があるでしょう。

給与明細から通勤手当の影響をどう見極める?

---読者が給与明細を確認する際、通勤手当が社会保険料に与える影響を正しく把握するために、まず最初にチェックすべきポイントを教えていただけますでしょうか。

石坂貴史さん:

通勤手当が社会保険料にどのように影響しているかを知るには、給与明細の見方を一つずつ整理することが大切です。多くの人は、通勤手当の金額だけを見て判断する傾向がありますが、それだけでは、実際の影響は分かりません。

まず確認すべきなのは「標準報酬月額」という項目です。この金額は、基本給と通勤手当、その他の手当を合計した金額を、社会保険の区分表に当てはめた後の基準額です。社会保険料は、この標準報酬月額をもとに計算されます。そのため、通勤手当が増えても、この金額が変わっていなければ、保険料は増えていません。反対に、標準報酬月額が一段階上がっていれば、通勤手当の増加が影響している可能性があります。

次に確認したいのが、定期代を変更した時期です。特に4月から6月の給与は、その後おおむね1年間の社会保険料に使われます。この時期に通勤手当が増えると、影響が長く続いてしまいます。

さらに、給与明細だけでは判断しにくい場合は、会社から渡される等級変更のお知らせを見ると、いつ、なぜ金額が変わったのかが分かるでしょう。通勤手当だけを見るのではなく、標準報酬月額の動きをよく確認することが、手取りの変化を理解する近道です。

通勤手当の非課税と社会保険料の関係を理解して賢く対処しよう

通勤手当は所得税の計算上は非課税である一方、社会保険料の計算基準である標準報酬月額に含まれるため、増えると社会保険料が上がる可能性があります。特に、報酬月額が等級の境目付近にある人は注意が必要です。

給与明細の「標準報酬月額」や定期代の変更時期、等級変更の通知をしっかりチェックすることで、手取りの変化の原因を正確に把握できます。通勤手当の増額を喜ぶだけでなく、社会保険料の影響も含めた「手取り全体」で賢く考えることが、納得のいく給与管理につながります。

今後は自分の給与明細や社会保険の仕組みを理解し、必要に応じて専門家に相談するなど、対策を講じながら賢く働くことが求められます。


監修者:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。