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「メリットばかりじゃない」小学校での“タブレット配布”に物議…「宿題をしていると思ったら…」「夜中に子ども同士でビデオ通話」

  • 2026.2.26
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

近年、小学校ではGIGAスクール構想のもと、タブレット端末が子どもたち一人ひとりに配備され、学びの形は大きく変化しています。そして、デジタル教科書を正式な教科書として位置づける動きも出てきています。

しかし、「一体、子どもたちの学習はどう変わるの?」「デジタル化ってメリットばかりじゃないのでは?」「先生たちも大変なんじゃないか」といった、教育現場のリアルな声や保護者の方々の不安を感じている方も少なくないのではないでしょうか。

そこで今回は、12年間の教員経験を持ち、ICT導入期の試行錯誤を最前線で経験した教育ライターの風間千歌さんに、小学校のデジタル教育の「今」について伺いました。現場の専門家の見解を通じて、デジタル化がもたらす「光」と、私たちが向き合うべき「影」について深く掘り下げていきます。

タブレットは「思考の可視化」を実現する?メリットと懸念

---GIGAスクール構想でタブレット端末が導入され、学びの現場は大きく変化していると思います。その最大のメリットと、一方で先生方が懸念している点について教えてください。

風間千歌さん:

「最大のメリットは『思考の可視化と即時共有』です。タブレット端末の導入により、子どもたちの多様な意見を一瞬で集約し、クラス全体で比較検討する双方向の学びが可能になりました。

また、体育の器械運動で自身のフォームを撮影し客観的に分析するなど、動画機能を活用した『自ら課題を見つける学習』も定着しつつあります。

一方で、懸念すべきは『デジタル格差』と『学習への没入感』です。ICTを文房具のように使いこなす子がいる一方で、学力が定着していない子ほど、学習に関係のない画面を開いたり、端末への依存傾向が見られたりする側面もあります。これらは新たな指導負担となり、現場の重たい課題となっています。

私個人の考えとしては、全教科の完全デジタル化には慎重であるべきだと感じています。デジタルはあくまで強力な『ツール』に過ぎません。特に小学校段階においては、紙の教科書をめくり、鉛筆でノートに書くという身体性を伴う学習こそが思考の土台となります。デジタルというツールを使いこなすためにも、まずは紙と鉛筆による学習で『じっくり考える土台』を整えること。それが今の教育現場に最も求められていると感じます。」

教員のICTスキル格差、どう乗り越える?現場の奮闘

---学校現場では、ICTツールの導入にあたって、教員間のスキル格差も課題になりやすいと聞きます。この課題解決に向けて、どのような取り組みが必要だとお考えですか?

風間千歌さん:

「教員間のICTスキル格差は、導入初期に必ず直面する壁です。

この課題を解決するには、一部の得意な教員だけが突っ走るのではなく、『組織として知見を共有する仕組み』が不可欠です。

具体的には、まずは校内研修を通じて基本的な操作やアプリの活用事例をボトムアップで共有することから始めます。私が現場にいた際も、端末を用いた研究授業を積極的に行い、『この単元ではこう使うと効果的だった』という成功体験を可視化することで、苦手意識を持つ教員の心理的ハードルを下げてきました。

デジタル教科書が本格導入される際も、単なる操作説明に留まらず、授業のどの場面でデジタルに切り替えるべきかという『活用シーンの標準化』を校内で議論することが重要です。また、自治体レベルでICT支援員を適切に配置するなど、教員が授業準備や教材研究に集中できる環境をハード・ソフト両面から整えることが、現場の負担軽減への近道だと考えます。」

保護者の不安をどう解消?学校と家庭の連携が鍵

---保護者の方々からは、デジタル端末の導入や活用についてどのような声が寄せられていますか?また、学校としてどのように対応していますか?

風間千歌さん:

「導入当初、保護者から最も多く寄せられたのは『物理的な負担』への懸念でした。端末の重量が想像以上に重く、成長期の子どもの肩にかかる負担を心配する声は非常に切実なものでした。そのため、私の勤務校では週末のみ持ち帰らせて宿題に活用するなど、運用の工夫を重ねてきました。

また、家庭での利用ルールも大きな火種となります。『宿題をしていると思ったら不適切なサイトを見ていた』『夜中に子ども同士でビデオ通話をしてトラブルになった』といった相談も受け、自治体側で利用制限を強化するなどの対応に追われた経験もあります。タブレット学習の普及により、家庭も「デジタルとどう付き合っていくか」という新たな悩みに直面していると感じます。

一方で、授業参観などで実際に端末を使いこなす子どもたちの姿を目の当たりにすると、『自分たちの時代とは違う、進化した学び』に対して感嘆や期待の声をいただくことも多いです。保護者の不安を解消するためには、学校側が活用の意図やメリットを丁寧に発信し、理解を深めていく継続的なコミュニケーションが欠かせません。」

デジタル教育の未来へ 紙とデジタルの最適なバランスを求めて

小学校のデジタル教育は、子どもたちの「思考の可視化」や「自ら課題を見つける学習」といった、従来の教育では難しかった可能性を大きく広げています。しかし、その一方で「デジタル格差」や「学習への没入感」といった子どもの側面の課題、そして「教員のスキル格差」「保護者の不安」といった現場や家庭の課題も山積しています。

元教員である風間先生は、「デジタルはあくまで強力なツールであり、小学校段階では紙と鉛筆による『じっくり考える土台』が重要」と語ります。これは、単にデジタル化を進めるのではなく、紙とデジタルの特性を理解し、それぞれの良い点を最大限に活かす「最適なバランス」を追求していくことの重要性を示唆しています。

デジタル教育の成功には、学校が活用の意図を丁寧に伝え、教員同士が知見を共有し、保護者と学校が密に連携する「継続的なコミュニケーション」が不可欠です。私たち一人ひとりが、この新たな学びの形を多角的に理解し、建設的に関わっていくことが、子どもたちの豊かな未来につながるでしょう。


監修者:風間千歌
12年間の教員生活を経て、現在は教育・育児分野を中心に活動するフリーライター。現場では低・中・高学年と特別支援学級担任を経験し、子ども一人ひとりの個性に寄り添った指導を実践。専門の国語教育に加え、ICT導入期の試行錯誤も最前線で経験した。現在は2児の育児に奮闘しながら、教員と保護者、両方のフラットな視点から教育のあり方を伝えている。