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学校トイレでの“暴行動画”が拡散…「見ていただけ」の生徒も罪になる?→弁護士「直接手を下していなくても犯罪が成立」

  • 2026.1.11
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

学校で起きた暴行事件。「法的責任」を問われるのは加害生徒だけではありません。その場にいた他の生徒や、様子を撮影してSNSに投稿した人も罪に問われる可能性があることをご存じでしょうか?

最近も高校の男子トイレでの暴行動画が拡散され、「犯罪だ」「深刻な問題だ」と大きな波紋を呼びました。

なぜ“手を出していない傍観者”も罪に問われるのか、動画投稿が逆にトラブルになるのはどうしてか。加害生徒の親や学校の責任も気になるところです。この記事では、法的観点から学校暴行事件にまつわる責任の範囲と対応のポイントを、アディーレ法律事務所 正木裕美 弁護士の見解をもとにわかりやすく解説します。

暴行に直接関与しない生徒も罪に問われるの?

---暴行動画がSNSで拡散された場合、暴行の実行者をはじめとして、暴行に手を出さず「見ていただけ・撮っていただけ」の生徒や、学校・親の法的責任はどこまで問えますか?

正木裕美 弁護士:

「まず、手を出した加害生徒本人は暴行罪、怪我をさせてしまったら傷害罪に問われます。
他の生徒については、直接手を下していなくても犯罪が成立することもあります。たとえば複数の生徒が暴行を計画し、その計画に基づいて仲間のうちの誰かが手を出したということなら、共謀共同正犯として手を出した加害生徒と同じ責任を問われることがあります。
また、今回は周囲の生徒がはやし立てる様子が映っていたようですが、計画に関与していなくても、暴行の現場で言葉等により一方に加勢してはやし立てていた場合は、加害生徒の精神的な手助けをしたと評価されて、暴行罪や傷害罪の幇助罪が成立する可能性があります。被害生徒が怪我をした現場におり、どちらにも加勢はせずはやし立てていたのなら、現場幇助罪が成立するとされています。
さらに、SNSでの動画拡散については、事件を明るみにしたいと正義感に駆られて行ったとしても違法になりえます。暴行を加えている様子を無断撮影してネットにアップすれば加害生徒の社会的評価を低下させるので名誉毀損罪に、加害生徒や被害生徒の肖像権や名誉権の侵害となり損害賠償責任を問われることもありえます。
加害生徒の責任については、加害生徒は高校生ですから一般的には責任能力が認められるので(責任能力が認められるのはおおむね12歳前後とされる)、加害生徒自ら損害賠償責任を負う可能性が高いでしょう。

加害生徒の親については、高校生といえど加害生徒が18歳以上の成人でなら責任を負わないのが原則です。一方、17歳以下の未成年なら、親が暴行を現認していたり、以前から問題行為があり他人に危害を加えるおそれがあったのに十分な対応していなかったなど監督義務違反が認められるときは、親自身の責任として損害賠償責任が認められる場合があります。
学校側は、生徒に対して安全配慮義務を負っていますし、いじめ防止対策推進法でも学校がいじめを認知したときは速やかに調査や指導することが義務づけられていますから、学校側が暴行行為を認識しながら適切に対応しなかったときは、教職員、学校や学校の設置者も損害賠償義務を負う可能性があります。」

加害者が高校生でも逮捕・起訴される?

---加害者が高校生の場合、成人のように「逮捕・起訴」されるのでしょうか?

正木裕美 弁護士:

「高校生といっても加害生徒の年齢次第ですが、一般的な15~18歳と仮定したいと思います。
成人の刑事事件では、起訴だけでなく不起訴や微罪処分(軽微な事件として警察限りで事件終了)、略式命令で罰金を科されて刑事手続きが終了することもあります。
これに対し、14歳以上であれば成人同様に逮捕される可能性はありますが、手続きは成人とは異なります。

20歳未満は法律上「少年」という扱いになり、原則として全件が家庭裁判所に送られて家庭裁判所が処分を決めることになっています。
そのため、逮捕後、勾留により身柄拘束がされたり、勾留に代わる観護措置がとられて少年鑑別所に収容されることはあるものの、これらの期間経過後、原則として全件家庭裁判所に送致されます。家裁では、少年審判で終局処分が行われることもありますし、重大事件で刑事処分が相当だと判断されると、検察官送致(逆送)されて起訴される場合もあります。
なお、原則逆送対象事件と呼ばれるものがあり、16歳以上の少年のときに犯した故意行為で被害者を死亡させた事件(殺人罪、傷害致死罪等)では、原則家裁は逆送しなければならないとされています。

さらに、少年であっても成人している18歳、19歳は「特定少年」として特殊な扱いを受け、先ほどの原則逆送対象事件に加えて、18歳以上で犯した死刑、無期又は法定刑の下限が1年以上の拘禁刑に当たる罪の事件(現住建造物等放火罪、強盗罪等)もが原則逆送しなければならないとされています。したがって、これらに該当する事件では成人と同じ手続きになる可能性が高いものの、暴行罪、傷害罪、名誉毀損罪はこれらには該当しません。」

加害者・親・学校など関係者の責任と対応の流れとは?

---もし学校での動画が拡散された場合、被害者やその保護者が最優先で取るべき初動対応と、証拠保全の具体的な方法を教えていただけますでしょうか。

正木裕美 弁護士:

「被害者側は精神的にも苦しい時期だと思いますが、ネットに投稿されたコンテンツは早々に削除されてしまうことも多いので、特にスピーディーな対応が求められます。

学校で起きた加害行為や動画拡散に関する法的責任を問い被害回復を行うためには、早急に客観的証拠の保全を行うことが大切です。ただし、どんな形であれ保存されていればいいわけではなく、デジタルの特殊性から改ざんを疑われないようにしなければなりません。
手持ちのスマホやPCでかまいませんので、「いつ・どこで・誰が・何を」投稿したのかわかるように証拠保全しましょう。URL、投稿日時、投稿者の情報(アカウント名、ID、プロフィール画像、プロフィールリンクなど)がまとめてうつるよう、画面録画機能を使ってURL等とともに録画して保存しておきましょう。別途投稿者のプロフィール画面があればそれもURL等とともにスクリーンショットをとって保存しておきましょう。もしURLが長すぎてスクショに全部がおさまらないなど問題があるときは、PDFで保存したり、印刷日時やURLを表示して印刷することも可能ですし、複数の方法で証拠を残すことが望ましいです。

また、せっかく保存した電子データの改ざんを疑われないために、電子データにタイムスタンプを付与することも有効です。
初動は大切ですが、証拠集めにはコツもあり、せっかく保存した証拠に不備があることもあるので、初動後はできるだけ早く弁護士に相談するのがよいでしょう。」

学校暴行事件における法的責任と適切な対処法

学校内の暴行事件は、手を出した加害生徒だけでなく、計画に加わった生徒や言葉で加勢した周囲の生徒にも法的責任が生じる場合があります。

また、正義感からのSNS投稿も名誉毀損や肖像権侵害に抵触することがあるため注意が必要です。加害生徒本人の責任は高校生であれば一般的に認められ、親や学校側にも監督義務違反や安全配慮義務違反があれば責任が及ぶ可能性があります。

被害者の側は、動画などの証拠がすぐに消されてしまうことが多いため、早急かつ確実に情報を保存し、できるだけ早く専門家に相談することが大切です。正しい知識と迅速な対応で、被害の回復と再発防止に繋げましょう。


監修者:正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属)アディーレ法律事務所名古屋支店

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正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属)アディーレ法律事務所名古屋支店

一児のシングルマザーとしての経験を活かし、不倫問題やDV、離婚などの男女問題に精通。TVでのコメンテーターや法律解説などのメディア出演歴も豊富。コメンテーターとして、難しい法律もわかりやすく、的確に解説することに定評がある。 アディーレ法律事務所は、依頼者が費用の負担で相談をためらわないよう、弁護士費用で損をさせない保証制度(保証事務所)を導入しています。「何もしない」から「弁護士に相談する」社会を目指しています。

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