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「安くなったら買い直せばいい」は間違いだった。新NISA初心者がやりがちな「自滅行為」とは?【お金のプロが警告】

  • 2026.1.16
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

投資の税金を有利にするために選ぶ人も多いNISA(少額投資非課税制度)。しかし、もしNISA口座で損失を確定してしまったらどうなるのでしょうか?「損してしまったら、何か税金で救済はあるのか?」と不安に感じる方も多いはずです。この記事では、NISA口座の損失に関する税制のしくみと、その影響をマネーシップス代表 石坂貴史さんの見解を交えて分かりやすく解説。さらに、NISAでの売買や積立投資における注意点も詳しくお伝えします。投資家なら知っておくべき大切なポイントを押さえ、今後の資産運用のヒントにしていただけます。

NISAで損すると税金面で救済はない?損失の扱いはどうなる?

---特定口座(課税口座)であれば、損失が出ても他の利益と相殺(損益通算)して税金を安くできますが、NISA口座でマイナス確定させてしまった場合、「単に損をして終わり(税制上の救済措置が一切ない)」というのは本当でしょうか? NISAで狼狽売りをすることが、通常の口座で損切りするよりも“痛手”になる制度上の理由を教えてください。

石坂貴史さん:

「NISA口座で損失を確定させた場合、税金面での救済はなく、「損をして終わり」という理解は事実です。

特定口座であれば、投資で出た損失を他の利益と差し引くことができます。差し引いても余った損失は将来に回すことができるのです。これにより、損をしても後の税金が軽くなり、結果的にダメージを抑えられます。

しかしNISAでは、損失は税務上なかったものとして扱われます。利益が非課税になる代わりに、損失は存在しない扱いになるという仕組みです。そのため、他の利益と相殺することもできません。さらに重要なのは、値下がりした状態で売却すると、その投資に使っていた非課税の枠自体が消えてしまう点です。新NISAでは、翌年に新しい投資枠は与えられますが、過去に安い価格で手放した枠を取り戻すことはできません。

本来であれば、回復後に出た利益を非課税で受け取れたはずの枠を、自分で放棄する形になります。つまりNISAでの狼狽売りは、「損失を確定させる」「税金面で取り戻せない」「将来の非課税チャンスも失う」という三重の不利を抱える行動になります。この制度の構造を理解すると、NISAは短期の判断に向かない制度だということが分かるはずです。」

NISAでの損切りはなぜ慎重に考えるべきか?短期判断の落とし穴

---「一旦売って、底値になったら買い戻せばいい」と考える人が多いですが、プロの経験上、初心者にそれは可能でしょうか? 過去のデータにおいて、暴落後の急激な回復局面(稲妻が輝く瞬間)を逃してしまうことが、長期的なリターンにどれほど壊滅的な差を生むのか、具体的な数字や事例があれば教えてください。

石坂貴史さん:

「相場が下がると、「一度売って、もっと安くなったら買い直せばいい」と考える人は少なくありません。しかし実際には、この行動を安定して成功させるのは、初心者には非常に難しいと言えます。理由は、どこが底かは、結果が出た後でしか分からないからです。

相場は下落中でも上がったり下がったりを繰り返して、そのたびに「もう底かもしれない」「まだ下がるかもしれない」という迷いが生じます。

恐怖で売った人ほど、「また下がったらどうしよう」という不安が強くなり、価格が上がり始めてもすぐに買い戻せません。過去の市場を振り返ってみると、長期的な利益の多くは、限られた短期間の急上昇によって、生まれている傾向があります。

こうした上昇は、相場が最も不安定で、悲観的な空気が強い時期に起こることが多く、その時に市場から離れていると、回復の中心部分を逃してしまいます。結果として、「下落は避けられたが、回復も取れなかった」という状態になります。

売る判断は恐怖が後押ししやすく、買う判断は不安が邪魔をします。この心理の差がある限り、売買を繰り返して下落だけを避け続けることは、現実的には再現性が低い行動だと、やはり考えるべきです。」

暴落時に積立投資を止めるのはなぜ危険?損失拡大の「負の循環」

---暴落時に保有商品を売却するのもNGですが、恐怖心から「毎月の積立設定を解除(停止)してしまう」ことの弊害についてはどうお考えですか? 株価が下がっている時こそ「安くたくさん買えるチャンス」であるにもかかわらず、積立を止めてしまう人が陥る“負のループ”について解説してください。

石坂貴史さん:

「暴落時に積立投資を止めてしまう行動は、感情面では自然なことですが、長期的な資産形成には不利に働きます。

積立投資の仕組みは、価格が高いときには少なく、価格が下がったときには多く買うことで、平均の購入価格をならす点にあります。

価格が下がっている時期は、同じ金額でより多くの数量を買えるため、将来の回復時に大きな効果を発揮します。しかし、不安から新NISAなどの積立を止めてしまうと、その最も重要な時期に買わないことになります。たとえば、その後、相場が落ち着き、安心感が戻ってから積立を再開する人も多いですが、その時点では価格はすでに上がり始めています。

結果として、「高い時期にだけ買い、安い時期には買わない」という、積立の利点を自ら消す行動になります。この流れを一度経験すると、「積立をしても意味がない」という誤った印象を持ちやすくなるでしょう。

そして、次の下落でも同じ行動を取ってしまう可能性が高いです。これが積立を止めることで生まれる「負の循環」です。積立投資は、相場の上下を当てないことを前提に成り立つ方法であり、恐怖心で止めた瞬間に、その大きな前提が崩れてしまう点を理解することが大切です。」

NISAの損失と積立投資で心に留めるべきこと

今回の取材から分かったのは、NISAでの損失は税制上の救済がないため、「損をして終わり」となること、さらに値下がりした状態で売ると非課税枠も失うということです。この性質から、NISAは短期的な市場の動きに応じた売買には向いていません。

また、市場が不安定なときに「一度売って買い直す」戦略は初心者には難しく、恐怖や不安が判断を鈍らせ、結果的に利益の回復局面を逃しやすくなります。さらに積立投資を暴落時に止めてしまうのは、購入価格平均化の利点を失い、「積立は無意味」という誤解を招きやすいことも見過ごせません。

長期的な資産形成を目指すなら、NISAの制度の特徴と自分の心理状態をよく理解し、焦らず積立を継続することが何より大切です。これにより、安定した資産運用の土台を築けるでしょう。


監修者:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。