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「差別ではないのか?」飲食店での二重価格…“観光客料金”は法律でOK?→弁護士「違法・無効になる可能性があります」

  • 2026.1.17
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出典元:PIXTA(※画像はイメージです)

観光地や飲食店などで、外国人観光客向けに異なる価格が設定されている「二重価格」。

これに対して「差別ではないのか?」「騙されたのでは?」といった不安や疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。なぜ二重価格はトラブルにつながりやすいのか、そして法的にはどのように判断されるのか、イメージだけではわかりづらい問題です。

本記事では、ベリーネスト法律事務所 齊田 貴士 弁護士に、二重価格設定の法的背景やトラブル発生時の対応について詳しく伺いました。これを読めば、納得したうえで二重価格と接することができるでしょう。

二重価格設定が法的トラブルを招くのはどんな場合?

---飲食店が観光客と地元客で異なる価格設定をする「二重価格」が法的にトラブルとなるのは、どのような場合でしょうか?憲法における「法の下の平等」や、人種差別撤廃条約などの観点から見て問題はないのでしょうか? 単に「国籍」で分けるのがNGなのか、それとも「居住者か非居住者か(在留カードの有無)」で分ければOKなのか、合法となるラインを教えてください。

齊田 貴士さん:

「まず、二重価格が明示されていない(事前に説明が無い)、明示されているとしても認知しづらい、分かりづらい、また当該価格設定の対象、内容、程度に合理的な理由が認められづらい場合には法的にトラブルになりやすいと思います。

次に、日本国憲法14条1項の「法の下の平等」や人種差別撤廃条約などとの関係ですが、前提として、営業の自由、契約自由の原則から二重価格を設定すること自体は許容されます。

「法の下の平等」や人種差別撤廃条約などとの関係で問題ないかは、その二重価格(例えば、対象、内容、程度等)に「合理的な理由」が認められるか否かによります。
それゆえ、合理的な理由(例えば、外国語対応のため人件費が増えた、文化の違う外国人への施設設備・維持費用がかかったなど)も無いのに、単に「国籍」で分けるのはNGになる可能性が高いです。

また、「居住者か非居住者か(在留カードの有無)」で分ければ一律にOKというわけではありません。なぜそのように分ける必要があるのか、その内容・程度も含め、合理的な理由の有無が重要です。」

二重価格は憲法や差別撤廃条約に違反しないの?

---観光客と地元客で異なる価格設定をする際、店頭やメニューへの明示が不十分だった場合、詐欺罪や景品表示法違反に問われるリスクはありますか?観光客が食事を終えた後に会計で「日本人より高いじゃないか! 返金しろ(差額を返せ)」と詰め寄った場合、店側に返金義務はあるのでしょうか? メニューに二重価格が記載されていれば文句は言えないのか、あるいは「英語表記が小さすぎた」などの理由で、契約が無効(または取り消し)になるケースはあるのでしょうか?

齊田 貴士さん:

「景品表示法違反に問われる可能性があるケースとして、例えば、通常はその価格で販売していないのに販売しているかのごとく併記し、現在の価格が安く見えるようにするものが考えられます(有利誤認)が、観光客と地元客で異なる価格設定をされた場合、価格は違えど、それぞれその価格で販売されている実態はあるので、この場合の二重価格が景品表示法違反に問われるリスクは低いと思います。

次に詐欺罪については、成立するためには欺罔意思(騙して金品や利益を詐取しようとする意思)、すなわち意図的な意思が必要なところ、ケースバイケースですが、店頭やメニューへの明示が不十分というだけでは欺罔意思までは認定できず、詐欺罪にまで問うことは難しいかもしれません。

食事を終えた後に店側に返金義務があるかについて、一概に返金義務があるとまでは言えないと思います。
法律的に整理すると、観光客の主張は、①差別だからその価格設定は無効だ、②価格はそのサービスの提供を受けるか判断するに関し重要な要素であるところ、その価格に錯誤(思い違い、勘違い、日本人と同じ価格で提供されると思っていた)があり、観光客価格であれば注文(契約)しなかったという2通りが考えられると思います。
まず、①について、その二重価格に合理的な理由の有無があるか吟味すべきところ、その場で結論が出るわけではないので、店側に即座に返金義務はないでしょう。
次に、②について主張したとしても、すぐにその主張が認められるわけではなく、店頭やメニューへの明示がどうだったのか吟味する必要があります。なぜなら、観光客側に重過失がある場合、すなわち、メニュー表をみれば自分が観光客としていくら支払えばよいか気付けたという場合、②の主張は認められないからです。
よって、ケースバイケースであり、一概に返金義務があるとまでは言えないと思います(消費者契約法にも不実告知、重要事項の不告知といった規定もありますが、同様です。)。

また、先に述べたように、営業の自由、契約自由の原則から二重価格を設定すること自体は許容されているため、メニューに二重価格が記載されているからといって一概に文句を言えるわけではありません。

「英語表記が小さすぎた」などの理由で、契約が無効(または取り消し)になるケースは前述②のとおり、観光客側に重過失がなければあり得ると思います。」

食事後の返金義務はある?トラブル時の法的対応とは

---二重価格を導入する際、店側が「外国語対応のスタッフ配置やメニュー作成にコストがかかるから」という理由で観光客価格を高く設定することは、法的に正当な理由(合理的な区別)として認められますか? 逆に、どの程度の価格差(例えば2倍、10倍など)になると「暴利行為」や「公序良俗違反」として違法になる可能性があるのでしょうか?

齊田 貴士さん:

「もちろん程度や内容にもよりますが、店側が「外国語対応のスタッフ配置やメニュー作成にコストがかかるから」という理由で観光客価格を高く設定することは、法的に正当な理由(合理的な区別)として認められる可能性はあると思います。

どの程度の価格差(例えば2倍、10倍など)になると「暴利行為」や「公序良俗違反」として違法になる可能性があるかについて、明確な基準は無く、ケースバイケースとしか言えませんが、合理的な理由が無い場合や一般取引通念に照らして不相当な価格である場合(例えば、周辺相場と比べ、著しく高いなど)には、「暴利行為」や「公序良俗違反」として違法・無効になる可能性があります。」

二重価格は合理的な説明がカギ。冷静な判断を心がけよう

二重価格は、営業や契約の自由という基本的な権利のもとで認められているものの、その設定に合理的な理由や適切な事前の説明が欠ける場合に、法的トラブルや消費者の不満に発展しやすいことがわかりました。

とくに国籍や居住者の違いによる価格差は、単なる区別ではなく合理性の有無が問われるため、業者は透明で分かりやすい情報提供が求められます。消費者側は、メニュー表示をよく確認し納得した上で注文することが大切です。

万が一トラブルがあった際には、慌てず合理的な説明の有無や表示の明確さを軸に判断しましょう。双方がルールを理解し尊重することで、不要な誤解や対立を避ける一助となるでしょう。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。


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