1. トップ
  2. 年金『月15万円』支給予定→まさかの減額?! FP1級が試算。60歳過ぎてもバリバリ稼ぐ人の手取りが減る「魔の月収ライン」

年金『月15万円』支給予定→まさかの減額?! FP1級が試算。60歳過ぎてもバリバリ稼ぐ人の手取りが減る「魔の月収ライン」

  • 2026.1.14
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

年金を受給しながら働く60歳以上の方にとっておなじみの在職老齢年金制度。

しかし、収入が増えると年金が減額される仕組みがよく理解できず、「働くほど損をしているのでは?」という疑問を持つ方も多いでしょう。

2026年4月からは支給停止基準額が引き上げられ、働き方や年金の受け取り方にも影響が出そうです。本記事では、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の柴田充輝さんの見解をもとに、在職老齢年金の基本から最新の改正内容、賢い年金の繰り下げや働き方の工夫まで丁寧に解説。あなたの年金と仕事の両立に役立つ情報をお届けします。

在職老齢年金とは何か?2026年からの支給停止基準額引き上げに注目

---給料と年金の合計が月50万円(基準額)を超えると年金が減る」と聞きますが、この「50万円」には何が含まれるのでしょうか? 「ボーナス」や「手当」は含まれるのか、それとも「手取り」ではなく「額面」なのか、多くの人が勘違いしやすい計算の落とし穴を教えてください。

柴田 充輝さん:

在職老齢年金の対象となるのは、老齢厚生年金を受給しながら厚生年金適用事業所で働く60歳以上の方です。

2026年4月より、在職老齢年金の支給停止基準額が現行の月額51万円から62万円へと大幅に引き上げられることが決まりました。これにより、これまで年金が減額されていた方の多くが、減額なしで年金を受け取れるようになる見込みです。ただし、2026年3月までは現行の51万円基準が適用されるため、引き続き仕組みをしっかり理解しておく必要があります。

在職老齢年金の「月51万円」という基準は、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計を指します。

基本月額とは、あなたが受け取る老齢厚生年金の月額のことです。年金額を12で割った金額と考えてください。たとえば、年間の老齢厚生年金が180万円であれば、基本月額は15万円となります。なお、老齢基礎年金(国民年金部分)は在職老齢年金の計算には含まれません。あくまで老齢厚生年金だけが対象です。

総報酬月額相当額は、働いて得る収入を月額に換算したものです。具体的には「標準報酬月額」と「その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割った額」を足し合わせたものになります。

計算に使われるのは「額面」で「手取り」ではありません。標準報酬月額とは、毎月の給与(基本給に加え、残業手当、通勤手当、役職手当、住宅手当などの各種手当をすべて含めた総支給額)を一定の等級に当てはめた金額です。社会保険料や税金を差し引く前の「額面」が基準となります。

ボーナスも在職老齢年金の計算に含まれます。ただし、単純にその月のボーナス額が加算されるわけではありません。過去1年間に受け取ったボーナスの合計を12で割り、毎月の収入に上乗せする形で計算されます。たとえば、夏と冬にそれぞれ60万円、合計120万円のボーナスを受け取っている場合、120万円÷12=10万円が毎月の総報酬月額相当額に加算されます。

在職老齢年金の計算方法と働くメリット・デメリットを理解する

---年金がカットされるくらいなら、仕事をセーブしたほうがマシなのでしょうか? それとも、減額されてでも働いたほうが、トータルの手取り額は増えるのでしょうか? 「働き損(働きすぎで手取りが増えない)」と感じてしまう具体的な年収ラインや、FPとして推奨する「賢い働き方のバランス」があれば教えてください。

柴田 充輝さん:

「年金がカットされるなら働かないほうがいいのでは?」という疑問はよく聞かれます。しかし、ほとんどの場合、年金が多少減額されても働いて収入を得たほうが、トータルの手取りは増えます。

なぜなら、在職老齢年金で減額されるのは「基準額を超えた分の半分」だからです。たとえば、基準額を10万円超えた場合、減額されるのは5万円です。つまり、「働いた分がすべて無駄になる」わけではありません。

とはいえ、心理的に「損をしている」と感じる点は否めません。私としても、在職老齢年金は高齢者の方の就労意欲を削ぐ「よくわからない制度」と感じています。

年収400万円〜500万円の層は、月給で換算すると33万円〜42万円程度です。年金月額が15万円前後の場合、ちょうど基準額51万円を超え始めるでしょう。「あと少し働けば」と思って収入を増やすと、増えた分の半分が年金から引かれるため、「頑張っても報われない」という感覚を持つかもしれません。

年収600万円以上になると、年金のかなりの部分、場合によっては全額が支給停止になるケースもあります。ただし、それでも給与収入自体は手元に残るため、純粋に家計運営を考えると「働いたほうが得」という結論は変わりません。

なお、数年前から在職老齢年金の廃止が議論されています(なかなか実現には至っていませんが)。今後ますます働く高齢者が増え、さらに企業の人手不足が深刻化していく可能性を考えると、近い将来に制度そのものの廃止が実現するのではないかと考えています。

年金繰り下げや働き方の工夫で在職老齢年金の影響を減らす方法

---年金を増やそうとして受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」を検討している人も多いですが、働きながらこれをやろうとすると、「在職老齢年金の仕組みによって、増やそうとしていた年金部分まで消えてしまう(増額対象にならない)」という噂は本当ですか? 65歳以降もバリバリ働きたい人が注意すべき、制度の組み合わせの罠について教えてください。

柴田 充輝さん:

年金の繰り下げ受給とは、65歳から受け取れる年金をあえて受け取らず、受給開始を遅らせることで年金額を増やす制度です。繰り下げた期間に応じて、1ヶ月あたり0.7%、年金額が増額されます。

たとえば、70歳まで5年間(60ヶ月)繰り下げると、0.7%×60ヶ月=42%の増額になります。月15万円の年金が21.3万円になる計算です。75歳まで10年間繰り下げれば、84%増額で月27.6万円になります(税引き前)。

私も、長生きリスクに備えるうえで繰下げ受給は有用な選択肢だと考えています。しかし、在職老齢年金で支給停止されている部分は、繰り下げによる増額の対象にならないという点に注意が必要です。

繰り下げ受給による増額は、「本来受け取れるはずだった年金額」に対して計算されます。しかし、在職老齢年金の仕組みによって「支給停止」されている部分は、「受け取れるはずだった年金」から除外されてしまうのです。高収入で働いている方は、在職老齢年金によって年金が全額支給停止されているケースもあります。この場合、繰り下げによる増額効果はゼロです。

繰下げ受給のメリットを活かすためには、老齢厚生年金は繰り下げずに65歳から受け取り始めて、老齢基礎年金は繰り下げるという方法が考えられます。これにより、働きながらでも年金の増額メリットを最大限活用できるでしょう。

なお、「働き方を変える」ことで在職老齢年金の適用を回避できます。在職老齢年金の仕組みが適用されるのは、「厚生年金に加入している」場合に限られます。つまり、厚生年金に加入しない働き方を選べば、年金は減額されません。

会社と雇用契約を結ばず、業務委託契約で仕事を受ける場合、厚生年金には加入しません。そのため、いくら稼いでも在職老齢年金の対象にはならず、年金は満額受け取れます。フリーランスや個人事業主として独立する方法も同様です。

自分の会社を持っている経営者や、給与形態を自分でコントロールできる立場にある方は、賞与の仕組みを活用して年金カットを回避できる可能性があります。在職老齢年金の計算において、賞与は「1回あたり150万円」が上限とされています。つまり、150万円を超える部分は「なかったもの」として扱われるのです。毎月の給与を抑えて、報酬の大半を賞与として受け取ることで、在職老齢年金による年金カットを回避することが可能です。

ただし、この方法には注意点があります。まず、これは自分で給与形態を決められる立場にある人(会社経営者など)でないと実行できません。実現の可能性でいうと、個人事業主として働くケースのほうが高いでしょう。

在職老齢年金を理解し、自分に合った働き方と年金受給を考えよう

在職老齢年金の仕組みと2026年4月からの支給停止基準額引き上げは、多くの高齢労働者にとって収入の見通しを変える重要な情報です。収入の増減に応じた年金の減額はありますが、「働けば得」という基本は変わりません。

また、年金の繰り下げ受給制度を賢く活用したり、厚生年金加入を避ける働き方に切り替えたりすることで、年金減額の影響を最小限に抑えることも可能です。自分の収入状況や今後のライフプランを見据え、今回の制度改正と制度のポイントをしっかり理解しておくことが大切です。

近い将来、在職老齢年金制度の廃止も議論されており、今後も変化が予想されます。最新情報を常にチェックしながら、賢く働き、充実したシニアライフを目指しましょう。


監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。