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「数十万円を逃した事例も」社労士が明かす。“有給消化”で損をしないために…退職届を出す「ベストなタイミング」とは?

  • 2026.1.14
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

退職日を月末に設定すると、有給休暇が消化しづらくなったり、社会保険料や賞与の関係で損をしたりするという話を聞いたことはありませんか?

実際には、なぜ月末退職で損をすると言われるのか、その理由や仕組みを正しく理解している人は少ないのが現状です。

本記事では、退職時の「有給休暇の消化」「社会保険料の扱い」「賞与支給の要件」について、あゆ実社労士事務 加藤あゆみさんの解説を交えてわかりやすくご紹介します。これを読めば、退職日設定で後悔しないためのポイントが見えてきますので、ぜひ最後までお読みください。

月末退職で有給が消化できないのはなぜ?企業の計算慣行に理由あり

---1月末など月末退職を選ぶと有給消化の面で損をしてしまう背景には、どのような労働法上の仕組みや給与計算のタイミングが関係しているのでしょうか?

あゆ実社労士事務 加藤あゆみさん:

月末退職で有給消化が損になるという話は、実は労働法上の仕組みそのものではなく、企業の給与計算の実務慣行と退職日の認識のずれから生じることが多いのです。

労働基準法では、退職日は労働者が最後に会社に在籍する日を指し、有給休暇を取得した日も在籍日として扱われます。

つまり法律上は、1月31日を退職日とすれば、その日まで有給を使って休んでも問題ありません。ところが、給与計算は多くの企業で月末締め・翌月払いという形を取っており、退職に伴う最終給与の計算を早めに確定させたいという事務的な都合があります。そのため「1月31日退職なら、有給消化は1月中旬までに終えてほしい」といった暗黙のルールが現場で生まれやすいのです。

例えば、ある中堅社員が1月末退職を希望し、残りの有給を全て消化しようとしたところ、人事担当者から「月末締めの関係で、最終出社日は1月20日までにしてほしい」と言われ、結果的に数日分の有給が消化できなかった事例がありました。
もちろん、引き継ぎなど業務上の支障がない範囲で有給を取得することが前提であり、退職日そのものを後ろにずらして有給消化期間を確保するといった調整で、対応できる余地もあります。

こうした事態を防ぐには、退職を申し出る段階で「退職日」と「最終出社日」を明確に区別し、有給消化のスケジュールを具体的に示すことが重要です。企業側も、退職手続きの説明資料に「退職日=在籍最終日」「有給消化中も在籍扱い」を明記し、労使双方の認識を揃える配慮が求められると思います。

月末退職は社会保険料や賞与面でも不利?二つのカラクリを理解しよう

---退職日を1月末に設定すると、賞与や社会保険料の面で損をする可能性があると聞きましたが、具体的にどのような仕組みで不利になるのでしょうか?

あゆ実社労士事務 加藤あゆみさん:

退職日を1月末に設定すると不利になる可能性があるのは、社会保険料の徴収ルールと賞与の在籍要件という二つの仕組みが関係しています。

社会保険料については、資格喪失日が属する月の前月分まで保険料が発生します。

たとえば1月31日に退職すると、資格喪失日は翌日の2月1日となり、1月分の社会保険料が発生します。一方、1月30日に退職すれば資格喪失日は1月31日となるため、1月分の保険料は発生せず、12月分までの保険料で済むのです。月の途中で退職した場合、その月の保険料は徴収されないという原則があり、1月30日まで在籍していても1月分の保険料を払わずに保険の恩恵を受けられます。

なお、同じ月に転職先で社会保険に加入した場合は、転職先で1月分の保険料が発生し、二重徴収はありません。健康保険料と厚生年金保険料を合わせると、給与によっては数万円の違いになることもあります。

次に賞与については、多くの企業が支給日に在籍していることを要件としています。夏のボーナスが7月10日支給で、退職日を7月9日に設定してしまうと、賞与を受け取れなくなる可能性があります。例えば、ある管理職が、賞与支給日の前日を退職日にしてしまい、数十万円の賞与を逃したという事例もありました。企業側も、退職面談の際には社会保険料の仕組みや賞与支給日を明示し、労働者が十分に情報を得た上で退職日を選択できるよう支援することが、不要なトラブルを防ぐことにつながると感じています。

退職届提出前に押さえるべきは「退職日」「最終出社日」「有給消化」の関係

---退職を考えている人が、有給消化で損をしないために、退職届を出す前に必ず確認すべき最優先事項を教えていただけますでしょうか。

あゆ実社労士事務 加藤あゆみさん:

退職届を提出する前に最も重要なのは、退職日と有給休暇の残日数、そして最終出社日の関係を正確に把握することです。多くの人は「退職日=最後に会社に行く日」と誤解していますが、実際には退職日をいつにするかを決め、その前日までを最終出社日と有給消化で埋めるケースが多いのです。

たとえば、有給が15日残っていて退職日を1月31日に設定する場合、1月15日を最終出社日とし、1月16日から31日までを有給で消化するといった形になります。この認識がずれていると、有給を使い切れなかったり、逆に退職日が予定より遅くなって転職先との調整が必要になったりします。

次に確認すべきは、就業規則に定められた退職予告期間と、賞与の支給日および在籍要件です。法律上は2週間前の予告で退職できますが、多くの企業では1か月前や2か月前といった規定があります。例えばある若手社員が、転職先の入社日に合わせて退職日を設定したところ、賞与支給日の2日前が退職日となり、数十万円を逃したという事例がありました。

さらに、社会保険料の徴収ルールも押さえておくべきです。月末退職か月末前日退職かで、会社の社会保険料負担が1か月分変わりうることは知らない人が多いのが実情です。ただし、国民健康保険や転職先の加入タイミングなどによってトータル負担はケースバイケースです。企業側も、退職を申し出た社員に対して、有給消化や賞与、社会保険料などの重要事項を整理した資料を共有し、認識をすり合わせる時間を持つことで、後悔の残らない退職を支えられると思います。

正しい知識で円満退職へ、月末退職の落とし穴を避けよう

月末退職が「有給休暇が使い切れない」「社会保険料や賞与で損をする」といったトラブルは、労働法の問題ではなく、企業の給与計算慣行や社会保険料のルール、賞与支給の条件によるものです。退職日と最終出社日、有給消化の関係を正しく理解し、企業側としっかり認識合わせをすることで、多くのトラブルは防げます。

また、社会保険料の発生タイミングや賞与の在籍要件を踏まえて退職日を設定すれば、金銭面の不利益も最小限に抑えられます。何より、退職届を出す前に「退職日の意味」と「有給・賞与・社会保険の仕組み」を把握し、計画的にスケジュール立てを行うことが重要です。


監修者:あゆ実社労士事務
人材育成・キャリア支援領域で約10年の経験を持ち、社会保険労務士/国家資格キャリアコンサルタントとしても活動。
累計100名以上のキャリア面談を実施し、1on1面談制度の設計、キャリア面談シート作成などを通じて、組織の人材定着と成長を支援してきました。
新入社員向けの「ビジネスマナー」「マインドセット」「ロジカルシンキング」研修やキャリア研修では、企画・コンテンツ作成から講師まで一貫して担当。
人間関係構築、部下育成、効果的な伝え方に関する実務経験を活かし、読者・受講者が一歩踏み出すきっかけとなる関わりを大切にしています。