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「あの時、いっそ…」脳腫瘍から認知障害を抱えた父への本音。家族の実体験に「本音を描いてくれてありがとう」

  • 2026.1.14

36歳になってから、SNSで育児日記として漫画を描き始めた吉田いらこ(@irakoir)さん。彼女が長年胸に秘めてきた家族の物語がある。それは1990年代、まだ「認知症」という言葉すら浸透していなかった頃の出来事だ。

始まりは、父の「異常ないびき」「頭痛」だった。病院で判明したのは脳の腫瘍。緊急手術が決まっても、吉田さんには現実感がなかったという。しかしこれが、優しかった父との別れ、そして23年にわたる壮絶な介護生活の幕開けであった。

本記事は、吉田さんがブログで公開している「若年性認知症の父と私」をベースに取材したもの2025年2月には、当時の詳細な物語をより深く描いた『家族を忘れた父親との23年間』がKindleで出版された 知られざる23年間の軌跡を、彼女の視点から紐解いていく。

美談にはできない。「早く死んでほしい」という残酷な本音

「早く死んでくれないかな」。介護の渦中、吉田さんは父に対してそう願うことがあった。今回の漫画化にあたり、吉田さんはこの「残酷な本音」をあえて隠さずに描いている。差別的な感情や父を疎ましく思う気持ち。何十年経っても消えない事実は、決して美談にはできないからだ。

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『若年性認知症の父と私』17話 テレビ番組で見る家族に対する、正直な思いが描かれたシーン

ーー「死んでほしい」といった、非常に強い拒絶の感情を描くことへの迷いはありましたか?

吉田いらこ(以下、吉田): 描く時は本当に迷いました。でも、自分の心に嘘はつけなかったんです。「嫌だ、辛い、いなくなってほしい」という気持ちは、何十年経っても変わらない、私の中に固まった紛れもない真実でした。介護は決して綺麗事ではありません。そのドロドロした感情をさらけ出すことで、自分自身の気持ちをようやく吐き出せた気がします。

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『若年性認知症の父と私』17話 テレビ番組で見た家族とは裏腹な気持ちを抱えていることに後ろめたさを感じる吉田いらこさん

ーー作品を公開した際、読者からはどのような反応が届いたのでしょうか。

吉田: 批判されることも覚悟していましたが、届いたのは「私も同じことを思ったことがある」「本音を描いてくれてありがとう」という、当事者の方々からの切実な共感の声でした。介護の辛さを人に話すと、どうしても「頑張っているね」と美談にされがちですが、誰もが抱える「後ろめたさ」を肯定し合える場所が必要だったのだと、改めて感じています。



▶︎「お前は誰だ もう来るな!」優しかった父が“最愛の娘”を忘れる日まで【本編を読む】

#1 変わらぬ愛を誓えますか?…
#1 変わらぬ愛を誓えますか?…

取材協力:吉田いらこ
書籍情報:『家族を忘れた父親との23年間』(Kindle版)

1990年代、脳腫瘍から認知機能に障害を抱えた父。混乱する家庭、薄れゆく記憶、そして壮絶な介護の果てに家族が見つけたものとは。SNSで大きな反響を呼んだ実体験コミック。