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「絶対にやらないで!」警視庁が“異例の注意喚起”→口座を売った人の“末路”…弁護士「知らなかったという言い分は通用しない」

  • 2026.1.14
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

近年、銀行口座の売買や貸し借りに関わる事件が増えていますが、多くの人が「犯罪に使われるなんて思わなかった」「一時的に貸しただけ」と軽く考えがちです。しかし、実はこうした主張がそのまま通ることはほとんどありません。

警視庁生活安全部(@MPD_yokushi)が公式Xにて、2026年1月9日に「口座を売ること・他人に渡すために携帯電話を契約することは絶対にやらないで!」と注意喚起をしました。

なぜ口座売買は法的に問題となるのか、犯罪に関与したとみなされる基準は何か、そしてもし口座売買が発覚した場合にどういった影響や責任が生じるのか。この記事では、法律の専門家の見解をもとに、口座売買にまつわる重要なポイントをわかりやすく解説します。あなたが知らずに抱えるリスクの全貌をお伝えし、安全な行動の選択に役立ててください。

口座売買で「知らなかった」は通用しない?故意のあり方とは

---多くの加害者は「犯罪に使われるとは思わなかった」「ただ預けただけ」と主張するようですが、なぜ法的には「知らなかった」では済まされないのでしょうか? 警察や裁判所は、どのような状況証拠をもって「未必の故意(犯罪に使われるかもしれないと分かっていた)」と判断するのか、その境界線を教えてください。

寺林智栄さん:

口座売買に関する事件では、加害者が「犯罪に使われるとは思わなかった」「一時的に貸しただけだ」と弁解する例が少なくありません。しかし、法的にはこのような主張がそのまま通ることはほとんどありません。その理由は、刑法においては「確定的な故意」だけでなく、「未必の故意」、すなわち犯罪に使われる可能性を認識しながらそれを容認して行為に及んだ場合も、故意犯として処罰の対象になるからです。

警察や裁判所は、本人の内心そのものではなく、外形的な事情や行動の積み重ねから「犯罪に使われるかもしれないと分かっていたかどうか」を判断します。たとえば、SNSや掲示板で「口座を貸すだけで簡単に稼げる」「身分証はいらない」などといった不自然な勧誘を受けていたかどうか、見知らぬ第三者にキャッシュカードや暗証番号を渡していたか、名義人本人が一切取引に関与せず指示どおりに動いていたかといった点は、強い状況証拠になります。また、報酬が相場とかけ離れて高額であったり、用途を尋ねても明確な説明がなかったりした場合も、「危険な行為であると認識できたはずだ」と評価されやすくなります。

重要なのは、「本当に犯罪だと確信していたか」ではなく、「普通の社会経験を持つ人であれば、違法利用の可能性に気づく状況だったか」という点です。その境界線を越えていると判断されれば、「知らなかった」という言い分は通用せず、未必の故意が認定されることになります。

口座売買発覚の社会的影響とは?生活に直結する重大な不利益

---刑事罰(拘禁刑や罰金)以外にも、口座を売った人には「全銀協のリストに載り、数年間どこの銀行でも口座が作れなくなる」というペナルティがあると聞きます。 現代社会において銀行口座を持てないということは、就職、給与受け取り、家賃契約などに具体的にどのような支障が出ますか? 弁護士から見た「生活への破壊度」を教えてください。

寺林智栄さん:

口座売買が発覚した場合、刑事罰とは別に、全銀協の不正利用者情報に登録され、一定期間ほぼすべての金融機関で新規口座開設ができなくなるという重大な不利益を受けます。この影響は、罰金以上に日常生活を直撃するものです。現代社会では、銀行口座は単なる「お金を入れる箱」ではなく、社会参加の前提条件になっているからです。

まず就職の場面では、多くの企業が給与の振込口座指定を必須としています。口座が作れない場合、採用自体を断られたり、雇用形態を制限されたりするケースも現実にあります。仮に就職できたとしても、給与の受け取り方法を巡って会社側に特別な対応を求めることになり、本人にとって大きな心理的負担となります。

住居に関しても深刻です。賃貸契約では、家賃の口座振替や指定口座への振込が前提となることが多く、保証会社の審査でも銀行口座の有無は重要なチェックポイントになります。口座を持てないというだけで、入居審査に落ちたり、条件の悪い物件しか選べなくなったりする可能性があります。

さらに、公共料金や通信費、各種サブスクリプションの支払い、クレジットカードの利用にも制限がかかり、生活は現金中心の不便なものになります。弁護士の立場から見ると、この状態は一時的な不自由にとどまらず、就労・住居・信用の3つを同時に失いかねない「生活基盤の破壊」に近い影響力を持つといえます。

口座売買者に損害賠償責任?刑事だけでなく民事上も問われる恐れ

---売却した口座がオレオレ詐欺などの振込先に使われた場合、詐欺の被害に遭った人から、口座の名義人(売った人)に対して損害賠償請求が来ることはありますか? 「数万円で売ったつもりが、被害者から数百万円の返済を求められる」という最悪のケースは、実務上起こり得るのでしょうか。

寺林智栄さん:

売却した口座がオレオレ詐欺などの犯罪に使われた場合、名義人である口座売却者に対して、被害者から損害賠償請求がなされる可能性は現実にあります。刑事事件とは別に、民事上の責任が問われる点は、あまり知られていませんが極めて重要です。

民事責任の根拠として問題になるのは、不法行為責任です。口座を売却・譲渡する行為自体が、詐欺などの犯罪を容易にする危険な行為であり、その結果として被害が発生した場合には、「結果を予見できたのに危険な行為をした」と評価されることがあります。特に、報酬目的で口座を渡している場合や、用途が不明なまま第三者に口座を支配させていた場合には、過失、場合によっては故意に近い評価がされることもあります。

実務上、「数万円で売っただけなのに、被害額全額の賠償を求められる」ということも現実的に起こる可能性があります。。裁判所は、口座売却者を単なる被害者とは見ず、「詐欺を助長した一因」として位置づけることがあるからです。被害者が複数存在し、被害総額が数百万円、あるいはそれ以上に膨らむことも珍しくありません。

すべてのケースで必ず全額賠償が認められるわけではありませんが、少なくとも「売った金額だけ返せば済む」という発想は極めて危険といえるでしょう。

口座売買のリスクを理解し、安易な取引を避けることの重要性

今回の取材を通じてわかったのは、銀行口座の売買や貸し借りは法的に非常に危険な行為であり、「知らなかった」「一時的に貸しただけ」という弁解がほとんど通用しないということです。

犯罪に使われる可能性を認識しながらそれを容認すると未必の故意が認められ、刑事罰だけでなく、銀行口座の利用制限や社会生活に大きな支障が生じます。さらに、犯罪に利用された場合は民事上の損害賠償責任を負うこともあります。そうした深刻な影響は、就職や住居、信用にまで及び、生活基盤を崩しかねません。

これからは、口座売買など安易な取引は絶対に避け、銀行口座の管理に責任を持つことが大切です。リスクと法的責任を正しく理解し、社会生活を守るための行動を心がけましょう。


監修者:寺林智栄
2007年弁護士登録。札幌弁護士会。2013年頃よりネット上で法律記事の執筆・監修を開始。Yahoo!トピックスで複数回1位獲得。読む方にとってわかりやすい解説を心がけています。