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「サボり」と誤解されたくない…。仕事中の『トイレ離席』1日何回までOK? 許される「法的なライン」とは【弁護士が解説】

  • 2026.1.13
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

勤務中のトイレ離席に関して、「どれくらいの回数や時間までなら問題ないのか?」と悩んだことはありませんか?「サボっているのでは?」と誤解される恐れもあり、実際にトイレの頻度や時間が問題視されるケースもあります。しかし、法律的な基準や明確な目安は存在しません。では、どのような場合に会社側が問題と判断できるのか、逆に労働者としてどう対応すれば誤解を防げるのか。本記事では、専門家の見解をもとにトイレ離席にまつわる誤解と適切な対応についてご紹介します。あなたの疑問の答えがここにあります。

トイレ離席に明確な基準はある?

---トイレ離席が許容されるのは1日何回まで、合計何分まで」といった法的な基準や、過去の判例における目安はあるのでしょうか? また、会社側が『サボり(職務専念義務違反)』とみなすための決定的な判断要素は何になりますか?

齊田 貴士さん:

まず、トイレ離席について「1日何回まで、合計何分までなら許容される」といった法的な基準や過去の判例における目安はありません。

次に、会社側が、いわゆるサボり(職務専念義務違反、服務規律違反)とみなすための決定的な判断要素としては、例えば、トイレという名目で離席したにもかかわらず、他のことをしているというものが考え得ると思います。

・トイレ内で長時間、私用連絡をしたり、動画視聴などスマホ操作をしたりしている。
・トイレ後、すぐに席に戻らず、喫煙や雑談、外出、休憩などがセットになっている。

また、決定的な判断要素とまではいえませんが、トイレ離席の頻度や時間の異常性は、補助的判断要素になってくる可能性があります。

・疾患や持病が特に無いにも関わらず、トイレの回数が、同職種・同環境の他の労働者に比べて著しく多く、そうした状況が継続して続いている。
・1回あたりのトイレ離席が毎回20~30分以上など相当に長い状況が継続して続いている。
・トイレ離席の時間が勤務時間の相当部分を占めている。

ただし、体質や持病、疾患、その時の健康状態により、トイレが多くなったり、時間が長くなったりすることはあります。トイレに行くこと自体は、生理的に不可欠な行為で正当性があるので(逆に、トイレに行くこと自体を理由に、いきなり会社が懲戒、減給などの何等かの不利益扱いをすることは、合理性を欠き、違法または無効と判断される可能性が高いです。)、繰り返しになりますが、トイレ離席の頻度や時間といった要素はあくまで補助的な判断要素に過ぎないことは注意が必要です。

病気や体質的な事情で人事評価のマイナス対象になり得るの?

---頻尿や過敏性腸症候群(IBS)など、病気や体質的な事情でトイレの回数が多くなってしまう場合でも、懲戒処分や人事評価のマイナス対象になり得るのでしょうか? その場合、従業員側は事前にどのような対策(診断書の提出など)をしておくべきですか?

齊田 貴士さん:

「まず、病気や体質的な事情でトイレの回数が多くなってしまうことを理由に、懲戒処分や人事評価上マイナスに扱うことは、原則として違法・無効となる可能性が高いため、そうした不利益処分の考慮要素・理由にはなりません。

上記のとおり、懲戒処分や人事評価のマイナス対象には扱われませんが、サボり、勤務態度不良と誤認され不利に扱われてしまわないように、事前に自身の病気や体質的な事情を自ら説明し、業務内容や配置などに合理的な配慮を求めることは重要だと思います。

また、その事前の説明の際、専門家である医者の診断書があると、なお会社側の理解を深められ、会社側もより適切な合理的な配慮を図ることが可能になるため望ましいと思います。」

トイレ離席に関するプライバシーや聞き取りの注意点は?

---仮に離席回数が多くても、「本当に用を足しているのか」「個室でスマホゲームや株取引をしていないか」を会社側が証明するのは難しいと思います。 会社側による調査(トイレの使用記録や聞き取りなど)は、プライバシー侵害等の観点からどこまで許されるのでしょうか?

齊田 貴士さん:

「前提として、身体・排泄・健康状態に関わる情報はプライバシー性が極めて高いため、トイレの使用記録を付けたり、トイレ前での待ち伏せ、時間計測といった行為は、プライバシー侵害として許されない可能性が高いです。

次に、聞き取りについても、詰問・追及したり、回答を強制したりするようなやり方は好ましくないと思います。あくまで説明の機会を与えるというスタンスで、「会社側で配慮が必要な事情はあるか」、「時間内に業務が終わらなかったり、他の人の負担が増えたり、業務が円滑に進んでいない状況があるが、例えば体調面などについて、会社側で配慮が必要な事情はあるか」という風に確認し、病名や詳細を無理に聞かないようにしたほうがいいと思います。

トイレにフォーカスして調査するというよりも、例えば、離席によりどれだけ業務に影響が出ているのかにフォーカスして、上記のような聞き取りや勤務実績データ、勤務実態に関する調査であれば、必要性・相当性の範囲内として許される可能性が高いと思います。」

トイレ離席の誤解を防ぐには何が大切か?

今回の取材からわかったのは、トイレ離席について法律で明確な制限がないこと、そして会社が「サボり」と判断するにはトイレ以外の私用行為が明らかである必要があることです。トイレの頻度や時間が多いだけで不利益に扱われるのは違法または無効とされる可能性が高いため、健康上の理由がある場合は事前に病気や体質の事情を会社に説明し、医師の診断書を用いて合理的配慮を求めることが重要です。また、会社側もプライバシーを尊重し、不当な調査や詰問を避ける姿勢が望まれます。トイレ離席に関わる誤解やトラブルを防ぎ、安心して働ける環境づくりのために、双方が正しい理解と配慮を持つことが何より大切です。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。


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