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「パサつきやすく、味が薄く感じる」管理栄養士が指摘。“肉の解凍”でやりがち…旨味が減る「避けるべき解凍法」とは?

  • 2026.1.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

冷凍庫にストックしたお肉、急いで調理したいときにどんな解凍方法を選んでいますか?『お湯に浸ける』『常温に放置』『電子レンジを使う』など、手軽で早い方法に頼りがちかもしれません。しかし、その選択が実はお肉の味や食感を損なう原因になっていることをご存知でしょうか?

本記事では、管理栄養士の工藤まりえさんの専門的な見解をもとに、よくある誤解とともに、冷凍肉を美味しく解凍するための正しい方法について解説します。いつもの解凍方法を見直して、より美味しいお肉料理を楽しみましょう。

お湯解凍は肉の旨みを損なう? その理由とは

---お湯で冷凍肉を解凍すると旨味が流れ出てしまう現象は、肉の細胞や成分にどのような変化が起きることで生じるのでしょうか?

工藤まりえさん:

「お肉の解凍方法にはいろいろありますが、時間がないとつい「お湯に浸ければ早い」と思ってしまいがちです。

けれど、この方法は肉の旨味や食感を大きく損ねてしまう原因になります。お湯解凍でドリップ(赤い液体)が大量に出るのは、単に水に触れたからではなく、肉の細胞構造そのものが壊れてしまうことが大きく関係しています。

肉は、細胞の中に水分やアミノ酸、ミネラルといった旨味成分を閉じ込めた状態で成り立っています。冷凍すると、細胞内の水分が氷の結晶となり、細胞膜を内側から押し広げます。この時点でも多少のダメージは受けていますが、ここにお湯という急激な温度変化が加わると、外側から一気に解凍が進み、細胞膜や細胞壁が耐えきれず破れてしまいます。
さらに、お湯の温度が高い場合、解凍のつもりでも表面のたんぱく質が軽く加熱され、変性が始まります。たんぱく質が変性すると、水分を抱え込む力(保水性)が低下し、細胞内に留まっていた水分と一緒に、グルタミン酸などの旨味成分が外へ流れ出やすくなります。これが、解凍後にトレーに溜まるドリップの正体です。

つまり、お湯解凍は「急激な温度変化による細胞破壊」「たんぱく質の変性」「旨味成分と水分の流出」を同時に引き起こす方法なんです。結果として、焼いたときに「パサつく」「コクがない」と感じやすくなり、肉本来の美味しさを活かしきれなくなってしまうのです。」

常温や電子レンジ解凍のリスクとは?味と栄養が損なわれるメカニズム

---冷凍肉の解凍時に、時短を理由に常温放置や電子レンジの強加熱を選んでしまうと、栄養価や食感にどのような影響が出るのでしょうか?

工藤まりえさん:

「冷凍肉を使う場面では、『できるだけ早く調理したい』という状況になることもすくなくないですよね。常温に置いて解凍したり、電子レンジで一気に解凍したりする方法を選ぶケースも少なくありません。しかし、こうした解凍法は、肉の栄養価や食感に大きな影響を与える可能性があります。

まず常温放置の場合、肉の表面だけが先に温まり、中心は凍ったままという状態になりやすくなります。この間、表面は細菌が増えやすい温度帯にさらされ、たんぱく質やアミノ酸が分解されやすくなります。見た目に変化がなくても、旨味が減ったり、調理後ににおいが出やすくなることがあります。夏場は特に注意が必要です。

また、常温解凍ではドリップが出やすく、水分と一緒にビタミンB群やミネラルなどの水溶性栄養素が流れ出てしまいます。その結果、焼いたときにパサつきやすく、味が薄く感じられる原因になります。

一方、電子レンジの強加熱解凍は、加熱ムラが起きやすいのが問題です。外側や薄い部分だけが先に加熱され、部分的に火が通ると、たんぱく質が変性して水分保持力が低下します。これにより肉汁が逃げやすくなり、食感が硬くなります。さらに、熱に弱いビタミンB1などの栄養素も失われやすくなります。早さを優先した解凍は、美味しさと栄養の両方が犠牲になってしまいます。」

おすすめは「緩慢解凍」!プロが教える美味しい解凍法

---冷凍肉を美味しく解凍するために、家庭で今日からすぐに実践できる「正しい解凍方法」を具体的に教えていただけますでしょうか。

工藤まりえさん:

「冷凍肉を美味しく解凍するコツは、「緩慢解凍」を意識することです。緩慢解凍とは、低い温度で時間をかけて解凍する方法のこと。急激な温度変化を避けることで、肉の細胞へのダメージを抑え、旨味や水分の流出を最小限にできます。
家庭で最もおすすめなのが冷蔵庫解凍です。使う前日に冷凍庫から冷蔵庫へ移し、0~5℃程度の環境でゆっくり解凍します。この方法は細菌の増殖リスクが低く、ドリップも出にくいため、肉本来のジューシーさを保ちやすいのが特長です。トレーやバットを敷いておくと、庫内を汚さず衛生的です。
時間があまりない場合は、氷水を使った解凍も有効です。肉を密閉袋に入れ、氷水に浸すことで、低温を保ったまま空気より効率よく熱が伝わります。常温解凍より安全で、緩慢解凍に近い状態を保てる点がメリットです。
氷水を使った解凍をする時間もないときには、電子レンジの「解凍モード」や、ワット数を下げて低出力で解凍させましょう。一度で完全に解凍せず、半解凍で止めてすぐ調理することで、加熱ムラやパサつきを防げます。どの方法でも、解凍後は放置せず、早めに調理することが美味しさを守るポイントです。」

正しい解凍法で、美味しさと栄養をしっかりキープしよう

お肉の解凍は「早く済ませたい」と急ぐあまりに、ついお湯を使ったり常温に放置したり、電子レンジの強い熱で一気に済ませたりしがちですが、それが旨味の流出や食感の悪化につながっていることがわかりました。

そこで大切なのが「緩慢解凍」。時間をかけて低温で解凍する方法なら、肉のジューシーさや旨みを守りながら安全に調理へつなげられます。冷蔵庫でのじっくり解凍が一番のおすすめですが、時間がないときは氷水解凍や電子レンジの低出力解凍も効果的です。

「美味しいお肉の料理は、解凍方法から」と心得て、ぜひ今日から試してみてください。ほんのひと手間で、肉本来の味わいと栄養をしっかり楽しめるはずです。


監修者:工藤まりえ
大学にて栄養学と分析化学を専門とし、管理栄養士免許を取得。卒業後は都内飲食系会社にてフードコーディネーターとして勤務。また、管理栄養士としてはスポーツジムに通う方を対象に、体質改善・ダイエットのための栄養指導を実施。短期的な痩身だけではなく、健康的で太りにくい体質への改善を目指した、専門的かつ行動に移しやすいアドバイスを毎月100名程に対して行っている。