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「法律はまだ整備されていません」生成AIによる“性的フェイク画像”…→取り締まることはできないって本当?【弁護士が解説】

  • 2026.1.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

インターネット上でAI技術を用いて作られる性的な画像、いわゆる性的ディープフェイクが増えています。

しかし、こうした画像を取り締まる明確な法律はまだ整備されていません。なぜ、AIが生成した画像は法の抜け穴になりやすいのでしょうか?

被害に遭った場合、どのように対応すべきか悩んでいる方も多いはずです。この記事では、寺林智栄 弁護士の見解をもとにAI生成の性的画像に関する法的な現状と、被害を受けた際にとるべき具体的な手順についてわかりやすく解説します。

日本の法律はAIが生成した性的画像をどう取り扱うのか?

---AIが生成した性的画像を日本の法律は直接取り締まれるのでしょうか?どのような法的対応が可能なのか教えてください。

寺林智栄さん:

「日本にはAIが生成した性的画像を直接取り締まる明確な法律はまだ整備されていません。生成AIで画像を作る行為自体を処罰する規定は基本的に存在せず、法律は「実際の画像・動画」を前提にしているため、AIだけで生成されたものについては立件が難しいとされています。現状、警察・検察は様々な既存の法律を当てはめて対応しています。

具体的には、次のような責任が検討されます:

1 名誉毀損罪(刑法230条)
無断で特定の人物の顔を使った性的フェイク画像を公開すると、その人物の社会的評価を低下させたとして名誉毀損で処罰される可能性があります。実際、このようなケースで捜査・処分例が報告されています。

2 わいせつ電磁的記録陳列罪(刑法175条)
わいせつな画像を不特定多数が閲覧できる状態にした場合、刑事責任が問われることがあります。

3 その他の関連罪(リベンジポルノ防止法など)
元交際相手など実在人物の写真を用いた場合、私事性的画像記録公表罪や公表目的提供罪などが成立する余地があります。

4 児童ポルノ関連法
子どもの性的画像については、AI生成物であっても「児童ポルノ禁止法」などで取り締まりを強化する動きがありますが、現行法は実在する児童の画像を前提としており、AI生成のケースは対象になりにくいとの指摘もあります。

以上に加えて、肖像権・プライバシー侵害に基づく民事責任(損害賠償請求)も重要です。無断で人物を合成した画像は人格権を侵害するとして、投稿者への削除請求や損害賠償請求の根拠になります。

総じて、現行法でもいくつかの犯罪類型を適用できる余地はあるものの、AI独自の生成行為自体を明確に処罰する規定は不十分であり、法的責任の判断は個別事案ごとの解釈に委ねられているのが実情です。」

AI生成の性的画像に対する民事責任とプライバシー保護の重要性

---性的なディープフェイク画像を投稿した場合、名誉毀損罪やわいせつ物頒布罪のほかに、どのような法的責任(例:肖像権侵害、プライバシー侵害など)を問われる可能性がありますか?

寺林智栄さん:

「性的なディープフェイク画像を投稿した場合、名誉毀損罪やわいせつ物頒布罪以外にも、民事・刑事の両面で複数の法的責任を問われる可能性があります。

まず、民事上の責任として典型的なのが肖像権侵害です。本人の承諾なく、特定の人物と認識できる顔や容貌を用いて性的画像を作成・公開する行為は、人格的利益としての肖像権を侵害すると評価されやすく、削除請求や慰謝料請求の対象となります。AIで合成された画像であっても、「本人であると受け取られるか」が判断基準となります。

次に、プライバシー侵害の問題があります。性的な姿態や性行為を想起させる情報は、私生活上の秘匿性が極めて高い情報とされており、虚偽であっても公開されれば重大なプライバシー侵害と評価される可能性があります。実在人物をモデルにした性的ディープフェイクは、この点で違法性が認められやすい分野です。

悪質なケースでは不法行為(民法709条)に基づく精神的損害賠償責任が広く認められます。被害者が社会的信用の低下、職業上の不利益、強い精神的苦痛を受けた場合、高額の慰謝料が認容される可能性も否定できません。

加えて、継続的な投稿や嫌がらせ目的が明確な場合には、侮辱罪や、状況によってはストーカー規制法の問題が生じる余地もあります。また、被害者が未成年であれば、児童ポルノ関連法の適用が問題となる可能性も否定できず、重い法的責任が課されることとなります。」

性的ディープフェイク被害に遭ったらまず何をすべきか?

---性的ディープフェイク画像が勝手に投稿された場合、被害者はどのように対処すればいいのでしょうか?具体的な行動を教えてください。

寺林智栄さん:

「まず最初に行うべきは、証拠の確保です。問題となる画像や投稿ページについて、URL、投稿日時、アカウント名が分かる状態でスクリーンショットを保存します。可能であれば、画面全体が分かる形で複数枚撮影し、動画の場合は画面録画も行います。削除後に備え、ウェブ魚拓サービスなど第三者による保存を行っておくことも有効です。

次に、プラットフォーム運営者への削除申請を行います。SNSや動画サイトには、肖像権侵害やハラスメントに関する通報窓口が設けられており、比較的早期に対応されるケースもあります。この段階では感情的なやり取りを避け、被害事実を簡潔に伝えることが重要です。

並行して、被害の程度が深刻な場合や拡散が止まらない場合には、弁護士への相談を検討します。弁護士を通じて、発信者情報開示請求や削除仮処分を行うことで、投稿者の特定や迅速な削除が可能となる場合があります。

また、悪質性が高い場合には、警察への相談・被害届の提出も選択肢となります。名誉毀損や侮辱、わいせつ物頒布等に該当する可能性があるため、証拠を整理した上で相談することが望ましいでしょう。」

AI生成性的画像の被害に備え、冷静かつ迅速な対応を

AI技術の発展に伴い、性的ディープフェイクの被害は今後ますます増加する可能性があります。

日本の現行法では、AI生成行為自体を明確に処罰できる規定はまだ不十分ですが、名誉毀損罪やわいせつ物頒布罪など複数の既存法律を適用し、民事上の肖像権・プライバシー侵害を根拠に損害賠償請求も可能です。

被害に遭った際には、まず証拠を確保し、プラットフォーム運営者への削除申請や弁護士相談、場合によっては警察への相談も視野に入れてください。冷静かつ迅速な対応が被害拡大を防ぎ、適切な法的救済を得るための大切な一歩です。


監修者:寺林智栄
2007年弁護士登録。札幌弁護士会。2013年頃よりネット上で法律記事の作成や慣習を始める。Yahoo!トピックスで複数回1位を獲得。読む人にとってわかりやすい解説を心がけています。