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「退職代行を使えば安全」は間違いだった。即日退社した社員の“末路”…→弁護士「損害賠償請求されるリスクがあります」

  • 2026.1.12
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退職代行などを利用した「即日退職」。精神的な限界から選ぶ手段ですが、最も気になるのは「会社から損害賠償請求をされないか」という点ではないでしょうか。

実は、引き継ぎの放棄や有期雇用の期間内退職など、特定の条件を満たすと実際に訴えられるリスクが高まります。また、金銭的な問題だけでなく、懲戒解雇や転職活動への悪影響といった社会的リスクも無視できません。

本記事では、齊田貴士氏の解説をもとに、即日退職で損害賠償請求される具体的な条件やケース、リスクを回避して身を守るための事前確認ポイントについて詳しく紹介します。

即日退職で損害賠償請求される条件とは?

---退職代行を利用して即日退社した場合、どのような状況や行動(例:引き継ぎ放棄、機密情報の持ち出しなど)が損害賠償請求のリスクを高めるのでしょうか?

齊田 貴士さん:

「まず、前提として、即日退職した場合、以下の3つのいずれにも該当していれば損害賠償請求されるリスクがあります。

① 労働者の退職について、労働者側に故意又は過失による加害行為があること。
② 上記により、会社に重大な損害(実損)が発生していること。
③ 労働者の故意又は過失による加害行為の存在や当該加害行為によって会社に損害が発生したことにつき、会社側が客観的に立証できること。

それゆえ、上記①~③を引き起こす行動や状況は、損害賠償請求のリスクを高めることになります。
具体的には、即日退職により損害賠償請求されるケースとして、以下のケースなどの場合には、即日退職により損害賠償請求されるリスクが高まると思います。

⑴ 有期雇用で期間内に一方的に退職してしまった場合
有期雇用で、まだ雇用されてから1年も経っていない場合ややむを得ない事由が無いにも関わらず、期間内に即日退職したことにより、会社に重大な損害(実損)が生じた場合には損害賠償請求のリスクが高まります。
⑵ 引き継ぎをせず退職した場合
労働者が退職するとき、業務の引き継ぎを行うことは、会社に対する信義則上の義務であると考えられています。
したがって、例えば、自身が重要な役割を担っていたにもかかわらず、引継ぎをせずに即日退職したことにより、会社が取引の機会を逸し、損害が生じたなどの場合には、損害賠償請求されるリスクが高くなります。
⑶ 研修・留学を経験後、短期間で退職した場合
当該研修や留学が「労働者にとっての利益が強く、業務性が薄い」場合、会社が支払った研修や留学の費用は、労働者に対する貸付金(立替金)とその返済期間の猶予と解され、かかった費用を会社から請求されるリスクが高まります。
⑷ 入社後、すぐに退職した場合
特定の業務を担当する目的で採用されたり、汎用性の低い業務等のために採用されたりした場合には、即日退職すると、会社が被った逸失利益を損害賠償請求されるリスクが高くなります。
⑸ その他
機密情報を持ち出したり、備品や機材を返却しなかったりした場合のように、労働者の責めに起因するトラブルにより会社に損害が発生した場合には、当然ですが、会社から損害賠償請求されるリスクが高くなります。」

即日退職で損害賠償請求されやすい具体例とは?

---賠償金以外に、即日退社した社員が背負う「社会的・キャリア的リスク」はありますか?

齊田 貴士さん:

「即日退職を申し出たものの会社が同意せず、かつ、有給休暇も2週間分残存していない場合、欠勤部分について給料が出ないことはもちろん、長期間欠勤したことを理由に、会社から解雇されるリスクがあります。

また、同じ業界内ないし地域内で即日退職したことがうわさで知れ渡り、即日退職のことを面接で聞かれたり、マイナスに評価されたりして、転職活動に悪影響が生じるリスクはあると思います。
その他、推薦・紹介・リファレンスチェックが必要な場合に不利に働いたり、人的ネットワークが使いにくくなったりして転職先の選択肢が狭まるリスクがあります。

なお、転職などにあたり、即時退職した勤務先から源泉徴収票などの法定書類を出してもらう必要がある場合、書類発行義務が前職にあるので、即日退職を利用したことによる書類上の不利は考えにくいですが、円満退社した場合と比較し、円滑に書類が入手しにくくなるリスクはあると思います。」

即日退職が転職活動や労働条件に与える影響は?

---退職代行を利用して即日退社を検討している方が、損害賠償リスクを避けるために「退職前に最低限確認すべきこと」を具体的に教えていただけますでしょうか。

齊田 貴士さん:

「まず、有期雇用の場合には、採用から1年経過しているのか、中途退職するやむを得ない事由はあるのか、即日退職することから直結する損害が会社に生じないか、引継ぎ書を残すなど即日退職しても会社の業務に支障が生じない状況が作れているかをご確認いただいたほうがいいと思います。

次に、有期雇用でない場合、即日退職することから直結する損害が会社に生じないか、引継ぎ書を残すなど即日退職しても会社の業務に支障が生じない状況が作れているか、仮に会社が即日退職に応じなかった場合、出社しなくても欠勤扱いにならないよう有給休暇日数が残っているか(長期欠勤として会社から解雇されるようなリスクは無いか)、研修・留学経験後であれば、研修・留学前に会社との間で合意した条件に違反しないかなどをご確認いただいたほうがいいと思います。」

即日退職のリスクを正しく理解し、慎重に判断を

即日退職は、即効性のある解決策に思える一方で、損害賠償請求のリスクだけでなく、転職活動や書類入手の面でもマイナス影響を及ぼす可能性があることがわかりました。特に有期契約の期間中や重要な引き継ぎをせず退職する場合、研修後の短期間退職などは損害賠償リスクが高まります。

今後、もし即日退職を検討するなら、まず契約形態や会社への影響を確認し、引き継ぎなど会社に支障を与えない準備を整えることが重要です。また、有給休暇の残日数や研修条件をチェックし、トラブルを防ぐことが賢明です。正しい知識を踏まえて慎重に判断すれば、後悔のないキャリア形成につながるでしょう。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。


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