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「高齢者の事故に注意」消費者庁が“注意喚起”…→介護のプロ「他人事と思わないで」年末年始で気をつけるべき“3つの事故”

  • 2026.1.1
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

年末年始の帰省や寒い季節になると、高齢者の転倒や誤嚥などの事故が増加します。

消費者庁(@caa_shohishacho)も12月23日に「年末年始の高齢者の事故に注意!」との注意喚起を行いました。

なぜこの時期に事故が多いのか、具体的にどのような危険が潜んでいるのか、家族として何を注意し、どう支えればよいのか悩んでいる方も多いでしょう。

この記事では、高齢者に起こりやすい「転倒・ヒートショック・餅による窒息」などの冬季事故のリスクを、介護支援専門員のeruruさんの見解をもとに詳しく解説します。適切な予防策や見守りポイントを知り、ご家族の安全を守りましょう。

寒い季節に増える高齢者の転倒とヒートショックとは?

---消費者庁も注意喚起していますが、年末年始は高齢者による『餅による窒息』と『入浴中のヒートショック』が多発します。家族団らんで気が緩みがちなこの時期、食事中や入浴時に家族が絶対に見逃してはいけない『直前の危険サイン』と、プロが実践している具体的な見守りのタイミングを教えてください。

eruruさん:

「高齢者の事故で多いのが転倒・転落、次いで食べ物を気道に詰まらせる誤嚥・窒息が挙げられております。

年末年始は大掃除や地域によっては降雪や凍結の影響で転倒のリスクは高くなります。さらに問題となってくるのが、寒い時期の入浴中に起こるヒートショックです。
ヒートショックの原因は寒暖差による血圧の急激な上昇と下降によるものです。寒い所に行くと血圧は急激に上昇し温かい所へ行くと血圧は急激に下降します。

温かいリビングでは安定した血圧が脱衣所の寒さにより急激に上昇します。その状態から湯船に浸かって温まることで血圧は下降し、湯船から出るときには水圧がかからなくなるため、さらに急激に血圧が下降します。

こうした一連の流れからめまいや立ち眩み、不整脈などが生じて転倒事故に繋がってしまいます。また、重篤な場合は心筋梗塞や脳梗塞などを生じて死に至る場合もある恐ろしい現象です。

では、家族として事前に防ぐべき策や気を付けるポイントはないのでしょうか?
確実に防ぐことは難しいですが、ヒートショックになりやすい人の特徴や本人に気を付けてもらうポイントがありますのでお伝えします。

まずヒートショックになりやすい方の特徴ですが、高血圧や糖尿病、心臓病などの持病を持っている方です。高齢になると多くの方が患っている病気ですが、両親がこういった病気を持っている場合はヒートショックのリスクが高くなりますので十分に注意してください。

次に本人に気を付けていただくポイントです。ヒートショックは食後すぐに入浴すると生じやすいとされています。理由として、食後は食べ物を消化するため消化器官への血流量が増加し、血圧が急激に下降しやすい状況になるためです。ですから、食後すぐに入浴する方は必ず1時間程度時間を空けてから入浴するようにしましょう。

もう1つ、気を付けていただくポイントは熱いお湯に浸からない事です。寒い時期ですし熱いお湯に浸かりたくなる時期ですが、お風呂の温度は40℃程度に設定し、入浴前にはかけ湯を行うように心がけましょう。

また、長時間の入浴も危険ですので、入浴時間は10分程を目安にしてください。これだけのことに注意を払ってもヒートショックは完全に防ぐことができませんので、家族による見守りが大切になってきます。見守りのタイミングとしては入浴直後と入浴後10分程度がいいかと思います。入浴直後は血圧が急激に上昇するタイミングですので湯船に浸かるまで見守れるといいですね。

入浴後10分は湯船から上がるタイミングにもなるので、「そろそろ上がる時間だよ?」の声掛けと、湯船から上がる際の急激な低下によって転倒やふらつきの危険性が高いので見守って頂けると転倒のリスクを軽減することができます。

年末年始の事故で忘れてはいけないのが「餅による窒息」です。ニュースなどで頻繁に見る事故ですが、他人事と思わずに注意が必要です。

家族としては詰まらせてからでは取り返しのつかない事故になりかねないので未然に防ぎたいと思いますよね?普段の生活から食べ物を飲み込む力が弱くなっているか確認することが重要ですので、そのポイントをお伝えします。

同居している家族の場合は食事にかかる時間に注目してみてください。食事時間が伸びているようなら飲み込む力が弱っているサインになります。普段の食事が分からない場合は簡単に短時間で飲み込む力を評価できるテストがあります。

まず、水を一口飲んでいただきます。この際にむせ込みや咳がないかを確認してください。また、飲み込む力が十分にあれば一回で飲み込むことができますが、飲み込む力が弱っていると数回に分けて飲み込むことがあるので、飲み込む回数も確認しておくことも重要です。

最後に水を飲んだ後、声を出してもらいます。声に変化があれば、水を誤嚥している危険性もありますので確認してみてください。

普段の食事やテストから飲み込む力が十分にあったとしても、“お餅”という食べ物は非常に危険ですので、高齢の方が食べる場合は、食事中や食後の見守りができる環境下で食べていただくことが望ましいです。」

ヒートショックを防ぐために家族ができることは?

---久しぶりに帰省した際、親が『元気だよ』と言っていても、家の様子から身体機能や認知機能の低下を見抜くポイントはありますか? 例えば『冷蔵庫の中身』や『お風呂場のカビ』『階段の手すりの汚れ』など、プロが実家に入った瞬間にチェックする『隠れSOS』の場所を教えてください。

eruruさん:

「親にはいつまでも元気でいて欲しいですが、加齢とともに身体機能や認知機能の低下は必ず見られます。本人自身は感じていても、久しぶりに会う子供に対して「心配かけたくない」という気持ちから、強がってしまう親御さんも多いでしょう。

そんな時は日常生活の中に隠れている「隠れSOS」を見つけ、身体的・認知的な低下がないかを見抜くことが重要になってきます。

身体機能の低下を見抜く上で最も分かり易いのが“歩くこと”です。
家の中を見て使っていない部屋はありませんか?私が高齢者の自宅を訪問する際は寝室を見ることが多いです。
多くの方はリビングやキッチン、お仏壇のある座敷は使っていますが、家の中で動くことが大変になると寝室を使わなくなる傾向にあると感じています。
リビングに布団を敷いて寝ることで、生活の中で動く必要性が減ってくるためです。
寝室を見て、掃除ができておらず汚れていたり、カレンダーが数か月前のままだった場合は、家の中でも動くのが大変になるほど身体的な低下があると予想されます。

また、家の中に“隠れSOS”がなかった場合も安心はできません。
そういった場合は買い物や外出に誘ってみるのが分かり易いと思います。今までは喜んで外出していた方が、「いいわ。家にいるよ。」などと外出することに消極的になっていた場合は身体機能の低下が生じている可能性があります。

次は認知機能低下の“隠れSOS”です。
特に注目して頂きたいのは冷蔵庫の中身です。同じ食材がいくつも入っていないか?賞味期限切れの食材がたくさんないか?を確認してみてください。
認知機能が低下していると、買い物をしたことを忘れてしまい、同じものをたくさん買ってきてしまう方がいらっしゃいます。
同じ食材がたくさんあれば、使いきれずに賞味期限が切れてしまうことにも繋がるので、冷蔵庫の中身は認知機能低下を予想する上で重要なポイントです。

もう1つは光熱費やその他の支払いがしっかり行えているかです。
認知機能が低下してくると金銭管理が難しくなるため、口座引き落としでの支払いでも滞ってしまうことが度々見受けられます。
また、支払い書での支払いの場合も届いていることを忘れて、滞納していることがありますので、認知機能を見抜く上で“隠れSOS”となります。
帰省した際は久しぶりに会いますし、滞在時間が短いと“隠れSOS”に気付けない場合もあります。

そんな時は近所の方に、普段の生活ぶりを確認するのも効果的です。
「最近は外に出なくなったようだよ。」や「ゴミ捨ての曜日を間違えることが増えたね。」など身体的・認知的な機能の低下を疑うヒントが得られる場合があります。

こういった方法でご両親の“隠れSOS”に早めに気付いてあげられるようにしましょう。」

冬に増える餅の窒息事故と隠れSOSを見逃さないために

---実家の段差や古くなった設備が危険だと感じても、親はプライドから『まだ大丈夫』と手すりの設置や片付けを拒否しがちです。親の自尊心を傷つけずに安全対策を受け入れてもらうための『魔法の言葉』や、大掛かりな工事なしで今すぐできる『転倒防止策』はありますか?

eruruさん:

「実家に帰省した際に段差やお風呂場の設備が古くて「生活しにくいのではないか?」「ここで転んでしまいそうだな?」と思うことはありませんか。

ご両親に話しても「困ってないよ。」や「まだ直すほどではないよ。」などと住宅を改修することに抵抗がある方も多いです。
理由として多いのは“健康への自信”です。「まだまだ元気だから手すりなんて必要ない!」と老人扱いされる事を嫌がる方が多いです。

次いで挙げられる理由が金銭的な問題です。「住宅の改修にお金をかける余裕がない」「子どもたちに負担させてしまうかも?」といった不安点が多いです。その気持ちをないがしろにしてしまうと自尊心を気付つけてしまいます。

そんな時はケアマネージャーや理学療法士と言った専門家に介入してもらうのが効果的です。
専門家から見て、家の中には転倒のリスクが高い場所が多く存在しますが、そんな危険な場所でも手すりをつけるだけで転倒の危険性が激減するのです。
理学療法士に家の中を確認してもらい、手すりを付けた方が安全な所を説明してもらうと、親の自尊心は気付つけずに手すりの設置に前向きになってくれる方も多いです。

金銭面での不安はケアマネージャーに相談しましょう。手すりの設置は介護保険制度では“住宅改修“に含まれるのですが、介護保険制度を利用することで住宅改修にかかった費用のうち、20万円を上限として戻ってきます。
ですから、自己負担が少なく安全な住環境にしてくれますので金銭的な負担は軽減します。

さらに、この住宅改修は“介護度”が3段階上がると再び利用することができます。皆さんも“要支援1”や“要介護1”といった言葉を聞いたことがありませんか?介護度は要支援1.2と要介護1~5の7段階で設定されており、要支援1が最も軽く、要介護5が最も重い状態となります。

在宅で生活している場合は要支援1か要支援2の方が多いと思いますが、この段階で転倒予防などを目的とした住宅改修を行っておくことで、今後、介護度が要介護3に上がった場合は再び住宅改修費として上限20万円の支援を受けることができます。

介護保険制度をうまく利用するためにも、「まだ大丈夫」と思っているうちに、少しでも住みやすい環境へ変えていくことがおススメです。
また、工事を必要としない手すりも多くあります。先ほど話した玄関の上がり框ですが、玄関に使う踏み台に手すりが付いたものを置くだけで、上がり框の昇り降りが楽になり、転倒の危険性も減らすことができます。他にも突っ張り棒タイプの手すりがあります。これは、床と天井に突っ張り棒の要領で手すりを設置するだけなので、お風呂場やベッドの横などに簡単に設置することが可能です。

工事の必要がない分、すぐに利用できますし、手すりの位置が固定されないため必要な所へ移動できるのもメリットになります。

高齢者の冬場の安全は家族の気づきと環境づくりから

年末年始に増える高齢者の転倒やヒートショック、餅の窒息事故にはそれぞれ対策と注意点があります。寒暖差による血圧変動のヒートショックは、持病のある方や食後すぐの入浴、高温のお湯、長時間のお風呂入浴を避けることが大切ですが、それだけで完全に防ぐことは難しいので、家族による細やかな見守り・声掛けが欠かせません。

また、餅の窒息事故は日ごろの飲み込み力のチェックや見守り体制の構築、さらに親の身体・認知機能の「隠れSOS」に早く気づくことが未然防止につながります。食事時間や自宅の様子、冷蔵庫の中身や光熱費の支払い状況など、ささいな日常の変化を家族で共有しましょう。

これらの知識と気づきをもとに、専門家への相談や介護保険制度の活用で安全な住環境づくりも進めれば、高齢の親御さんが自宅で安心して暮らせる環境づくりにつながります。冬の季節は特に注意が必要ですが、温かい気持ちで見守ることが事故防止への第一歩と言えるでしょう。


出典元:消費者庁(@caa_shohishacho)

監修者:eruru

4年制大学理学療法学科を卒業後、整形外科クリニックにて3年間勤務
整形外科クリニックにて整形外科疾患や脳血管疾患を含む2000人以上の症例を担当
その後、介護老人保健施設へ転職
数年働く中で、利用者の身体的な改善だけでなく、家族の力にもなりたいと考え、介護支援専門員の資格を取得
現在は介護老人保健施設にて理学療法士兼介護支援専門員として勤務
今後ますます高齢者が増えていく中で、理学療法士として高齢者の健康寿命の増加と安全な在宅での生活を目指し、介護支援専門員として家族が安心して介護できる環境づくりや適切な介護保険サービスの提供に励んでいます