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「かえって生活が苦しくなる」お金のプロが警告。住宅ローンの“繰り上げ返済”…貧乏になる「典型パターン」とは?

  • 2025.12.31
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

住宅ローンの繰り上げ返済は、多くの人が「なるべく早く返したい」と考えがちです。しかし、実際には手元資金の管理がうまくいかず、生活が苦しくなったり、高金利の借入に頼らざるを得ないケースも少なくありません。

なぜ繰り上げ返済が家計を圧迫してしまうのか、不安を抱える方も多いでしょう。この記事では、住宅ローンの繰り上げ返済を検討する際に見落としがちな生活防衛資金や短期支出の準備について、金融機関勤務の現役マネージャー 中川 佳人さんに詳しく伺いました。安心できる家計運営のポイントを一緒に確認していきましょう。

繰り上げ返済が招く家計の苦境とは?生活防衛資金の欠如が原因

---住宅ローンの繰り上げ返済を優先してしまう家庭が貧困に陥りやすい背景には、どのような心理的要因や金融リテラシーの欠如が関係しているのでしょうか?

中川 佳人さん:

「住宅ローンの繰り上げ返済を優先してしまう家庭が貧困に陥りやすい背景には、ローン残高を早く減らしたいという心理と、生活防衛資金や短期的に必要となる資金を家計の中で整理・確認できていないという課題があります。

住宅ローンは返済が長期にわたり、利息の負担も大きいため、繰り上げ返済を早めに実施すること自体は家計にとって有効な選択です。返済額や残高が減ることで、精神的な安心感を得られることもメリットの一つでしょう。しかし、不測の事態に備えるお金や、近い将来に必要となる資金を考慮せずに繰り上げ返済を行ってしまうと、かえって生活が苦しくなることがあります。

具体的には、生活防衛資金を十分に確保しないまま繰り上げ返済を行い、病気や失業、収入減といった想定外の出来事に直面した際に対応できないケースです。手元資金が不足すると、生活費や必要経費を補うために別の借入に頼らざるを得ず、家計の負担がさらに重くなることもあります。

住宅ローンの繰り上げ返済は、早めに実施すれば効果の大きいものです。しかし、『繰り上げ返済は早くした方がいい』という考えだけで判断するのではなく、手元資金の役割を整理したうえで行うことが、家計を安定させるために重要と言えるでしょう。」

繰り上げ返済後に起こり得る高金利ローンへの依存リスク

---繰り上げ返済を優先するあまり、手元資金が枯渇して急な出費に対応できず、結果的に高金利のローンを組むことになる事例はありますか?

中川 佳人さん:

「住宅ローンの繰り上げ返済を優先した結果、手元資金が不足し、やむを得ず高金利のローンを利用する事例は決して珍しくありません。

繰り上げ返済によって現金を減らしすぎてしまうと、急な支出が発生した際に選択できる対応手段が限られてしまいます。繰り上げ返済自体は家計改善に一定の効果が期待できる方法です。しかし、生活防衛資金やすぐに必要となるお金まで繰り上げ返済に充ててしまうと、突発的な支出が生じた際に、カードローンやフリーローンなど金利の高い借入に頼らざるを得なくなります。

具体的には、貯蓄の多くを繰り上げ返済に充てた後、病気やケガによる医療費、車や住宅設備の故障、収入の一時的な減少が重なり、生活費を補うために借入を行うケースです。これらのローンは住宅ローンよりも金利が高く、返済期間も短く設定されることが多いため、月々の返済額が家計に与える影響は非常に大きくなります。

その結果、住宅ローンで支払う利息を減らしても、別の借入による利息負担が増え、家計全体では支出が増えてしまうこともあります。繰り上げ返済は家計を改善するための有効な手段ですが、手元資金とのバランスを考慮せずに実施すると、かえって家計を圧迫しかねません。繰り上げ返済を行う前には、生活防衛資金とライフプランを十分に確認したうえで判断することが重要と言えるでしょう。」

繰り上げ返済前に確保すべき生活防衛資金と短期的資金

---住宅ローンの繰り上げ返済を検討している方が、まず最初に確認すべき「手元資金の目安額」と、その金額を確保するための具体的な家計管理のコツを教えていただけますでしょうか。

中川 佳人さん:

「住宅ローンの繰り上げ返済を検討する前に、『生活防衛資金』と、『短期的に必要になるお金』を確保しておきましょう。『生活防衛資金』の目安は、会社員や公務員であれば生活費の3〜6か月分、個人事業主であれば生活費の1〜2年分が理想です。また、『短期的に必要なお金』とは、5年以内に使う予定のお金を指します。

繰り上げ返済によって手元資金を減らしてしまうと、収入の変動や急な支出が生じた際の対応力が大きく低下してしまいます。具体的には、病気や失業といった不測の事態だけでなく、教育費や車の買い替え、住宅設備の修繕費など、数年以内に発生する可能性のある支出も考慮し、資金を準備しておく必要があります。さらに、冠婚葬祭や転職に伴う一時的な収入減など、家計を揺らす出来事は重なりやすい点にも注意が必要です。これらの支出を十分に把握しないまま繰り上げ返済を行うと、必要なタイミングで資金が不足し、別の借入に頼らざるを得ない状況になりかねません。

繰り上げ返済を判断する際は、生活防衛資金を確保したうえでライフプランを作成し、将来必要になるお金を確認することが大切です。余裕資金の範囲内で行うことが、長期的に安定した家計を維持するための重要なポイントと言えるでしょう。」

安心して繰り上げ返済を進めるために知っておきたいこと

住宅ローンの繰り上げ返済は、利息負担を減らし家計改善に大きく役立つ方法です。しかし、手元資金の取り扱いを誤ると、生活防衛資金が不足し、急な出費や収入の減少に対処できなくなるリスクが高まります。結果として、より高金利のローンに頼らざるを得なくなり、家計全体の負担が増えてしまうこともあります。

そのため、まずは生活防衛資金の目安を満たし、今後5年以内に必要な支出を洗い出してから繰り上げ返済を検討しましょう。これにより、安心して返済を進めながら、長期的に安定した家計を築くことが可能です。焦らずに家計全体の状況を見極めることが、住宅ローン返済の成功につながります。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。
専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。