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「死亡例も報告されています」管理栄養士が警告。“ローストビーフ”で食中毒に…自宅で作るときの「注意ポイント」とは?

  • 2025.12.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

華やかな印象のローストビーフは、年末年始の食卓に彩りを添える定番料理として人気です。最近は、フライパンや炊飯器を使った簡単レシピもSNSやレシピサイトで多数紹介され、「自宅でトライしてみたい!」という声も増えています。

でも、簡単そうに見えるからといって安心してはいけません。実は、ローストビーフには食中毒のリスクが潜んでいるのをご存知でしょうか?

今回は、見た目だけに頼らない安全な調理のコツと注意点を、管理栄養士の工藤まりえさんに詳しく伺いました。家庭でおいしく、そして安心してローストビーフを味わうためのポイントをしっかり押さえましょう。

簡単調理でも注意が必要!ローストビーフと食中毒のリスク

---家庭でローストビーフを手作りする際、食中毒リスクが高まる主な原因として、どのような調理上の要因が関係しているのでしょうか?

工藤まりえさん:

「一見すると難しそうなローストビーフですが、最近ではフライパンや炊飯器を使った簡単レシピがレシピサイトやSNSで多く紹介され、年末年始に自宅で作ってみようと考える方も増えているかもしれません。手軽に作れる印象がある一方で、ローストビーフは調理のしかた次第では食中毒のリスクが高まる料理でもあります。

特に注意したいのが、中心部の加熱が不十分なまま仕上がってしまうケースです。見た目がきれいなロゼ色でも、安全性が保証されているとは限りません。簡単そうに見えるレシピほど、温度管理や衛生面の説明が省かれていることもあり、「なんとなく」で作ってしまうと、思わぬトラブルにつながることがあります。

また、最近は低温調理や余熱調理も人気ですが、「低温だから安全」と思い込むのは要注意です。細菌は20~50℃くらいの温度で増えやすく、加熱の途中や加熱後に常温で長く置いてしまうと、かえってリスクが高まることがあります。年末年始は準備や来客対応でバタバタしがちなので、衛生管理がおろそかにならないよう気をつけたいところです。

加えて、生肉を切った包丁やまな板、触った手から、加熱後のローストビーフに菌が移ってしまう二次汚染にも注意が必要です。見た目では問題なさそうでも、安全とは限りません。」

低温調理の罠?安心だと思い込まないための衛生管理

---家庭でローストビーフを作る際、中心部の温度管理や加熱時間が不十分だと、どのような食中毒リスクがあるか教えてください。

工藤まりえさん:

「家庭でローストビーフを作る際、中心部の温度管理や加熱時間が不十分だと、食中毒のリスクが高まります。

特に注意したいのが、腸管出血性大腸菌(O157など)です。牛肉由来の代表的な食中毒菌で、少量でも感染し、激しい腹痛や下痢、血便を引き起こし、子どもや高齢者では重症化や死亡例も報告されています。過去には、加熱が不十分なローストビーフやレアな牛肉料理が原因とされる集団食中毒が、国内外で実際に発生しています。

また、サルモネラやウエルシュ菌もリスクとなります。サルモネラは加熱不足や調理器具からの二次汚染で発症しやすく、発熱や下痢などの症状を引き起こします。ウエルシュ菌は、低温調理や加熱後の放置によって増殖しやすく、ローストビーフを含む肉料理が原因となった事例も報告されています。さらに、調理中の手指や器具から黄色ブドウ球菌が付着すると、加熱後でも毒素による食中毒が起こる可能性があります。

ローストビーフは見た目や食感を重視しがちですが、「中心まで十分な温度に達しているか」が安全性を左右します。見た目だけで判断せず、加熱不足が実際の健康被害につながってきた事例があることを理解することが大切です。」

温度と時間の管理が命!安全に楽しむローストビーフの加熱基準

---自宅でローストビーフを安全に作るために、初心者が最初におさえるべき温度管理や調理のコツを教えていただけますでしょうか。

工藤まりえさん:

「ローストビーフは見た目や食感を重視しがちですが、『中心まで十分な温度に達しているか』が安全性を左右します。

見た目だけで判断せず、加熱不足が実際の健康被害につながってきた事例があることを理解することが大切です。自宅でローストビーフを作るときは、見た目や感覚に頼らず、温度と時間をきちんと意識することが安全への近道です。

食品安全委員会では、牛肉を安全に食べるための目安を『肉の中心部が63℃に達してから30分以上加熱する、またはそれと同等の殺菌効果が得られる加熱条件』としています。簡単に言い換えると、肉の中心温度が63℃で30分以上、70℃なら3分、75℃なら1分以上加熱することが一つの目安になります。

ここで気をつけたいのは、オーブンや湯せんの設定温度や、加熱を始めてからの時間では判断できないという点です。低温調理では、中心部が63℃に到達するまでに想像以上に時間がかかることもあります。『63℃で30分加熱したつもり』でも、実際には安全な条件を満たしていないケースがあるため、お肉に直接刺して中心温度を測ることのできる調理用温度計で確認することが欠かせません。

また、生肉を扱った包丁やまな板、手指からの二次汚染にも注意が必要です。器具を使い分け、こまめに手を洗うといった基本を守るだけで、リスクは大きく下げられます。さらに、SNSなどで見かける『短時間』『余熱だけ』で仕上げるような、温度や時間がはっきりしない素人レシピは安易に真似しないことも大切です。

加熱後は常温で放置せず、できるだけ早く食べるか冷蔵保存を。ローストビーフは手軽そうに見えて、実は丁寧な管理が必要な料理。ポイントを押さえれば、年末年始も安心して楽しめます。」

安心しておいしく。ローストビーフの「安全ルール」を守ろう

自宅で楽しむローストビーフは、見た目の鮮やかさや食感にこだわりたくなりますが、安全性はそれ以上に重要です。

中心部の温度と時間をしっかり管理すること、そして生肉を扱う際の衛生管理を怠らないことが何よりのポイントです。調理用温度計で中心温度を確認し、決められた基準を守ることで、食中毒のリスクを大きく減らせます。

また、包丁やまな板、手指の清潔にも気を配ることが必須です。年末年始は忙しく気が緩みがちですが、丁寧な管理で安全安心なローストビーフを作り、家族やゲストと楽しい時間を過ごしましょう。


監修者:工藤まりえ
大学にて栄養学と分析化学を専門とし、管理栄養士免許を取得。卒業後は都内飲食系会社にてフードコーディネーターとして勤務。また、管理栄養士としてはスポーツジムに通う方を対象に、体質改善・ダイエットのための栄養指導を実施。短期的な痩身だけではなく、健康的で太りにくい体質への改善を目指した、専門的かつ行動に移しやすいアドバイスを毎月100名程に対して行っている。