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スーパーフード「ケール」の栄養を抜群に引き出す“あるもの”とは?

  • 2025.12.12
ケールの栄養を抜群に引き出すものとは? / Credit:Canva

アブラナ科の野菜「ケール」は、その豊富な栄養からスーパーフードとして有名です。

しかし最新の研究によると、私たちが思っているほど、その栄養が体に吸収されていない可能性があります。

ミズーリ大学(University of Missouri)の研究チームは、ケールの主要な栄養素が「食べ方次第」で大きく変化することを示し、あるシンプルな工夫が吸収率を大きく引き上げると報告しました。

研究成果は2025年9月25日付で『Food Nutrition』に掲載されています。

目次

  • ケールと一緒に食べるべき「あるもの」とは?
  • なぜ「油と一緒」がいいのか?

ケールと一緒に食べるべき「あるもの」とは?

「野菜の王様」「スーパーフード」と呼ばれるケールには、目の健康を支えるルテインや、抗酸化作用をもつβカロテン・αカロテンなどのカロテノイドが豊富に含まれています。

こうした背景から、多くの人が「ケールを食べれば栄養はしっかりとれる」と信じているはずです。

では、ケールの栄養を最大限に引き出すにはどうすればよいのでしょうか。

ミズーリ大学の研究チームは、食卓で一般的に行われる「生で食べる」「加熱する」「ドレッシングをかける」「油と一緒に調理する」といった食べ方が、どれほど吸収性に影響するのかを体系的に検証しました。

研究ではケールを次の5種類の条件で準備しました。

  1. 生のケールのみ
  2. 生ケール+油のナノエマルション(油滴の入ったモデルドレッシング)
  3. 加熱したケールのみ(100℃で5分加熱)
  4. 加熱ケール+ナノエマルション
  5. ケールとナノエマルションを一緒に加熱したもの

ここで用いられたナノエマルションは、オリーブオイルを水中に細かく分散させたもので、食品科学の分野で「栄養の吸収を手助けする油滴」としてよく使われるタイプです。

次に、これらのケールを、人間の消化過程を試験管内で再現する設備を用い、それぞれの栄養素の吸収率をテストしました。

その結果、生のケールだけを食べた場合、ルテインは47%、βカロテンは41%ほどが「体が利用できる形になった」ことが示されました。

αカロテンは0.6%にとどまり、ほとんど利用されていませんでした。

加熱したケールだけを見ると、ルテインは34%、βカロテンは32%、αカロテンは0.25%と、いずれもやや低下していました。

一方で、同じケールにナノエマルションを加えると、数字は一気に変わりました。

生ケール+油では、ルテインは88%、βカロテンは83%、そしてαカロテンは約49%まで跳ね上がりました。

加熱ケールに油を加えた場合も同様で、ルテイン97%、βカロテン95%、αカロテン44%と、ほとんどが吸収可能な形に変わりました。

さらに興味深いことに、「ケールとナノエマルションを一緒に加熱」しても同じような結果が得られました。

つまり、油を後からかけても、炒め物やスープのように油と一緒に加熱しても、カロテノイドの吸収性は十分に高まることが示されたのです。

では、なぜ油があるだけで吸収率がこれほど大きく改善するのでしょうか。

なぜ「油と一緒」がいいのか?

研究者は、ケールに含まれるルテイン、βカロテン、αカロテンについて、「これらの栄養素は水溶性ではなく脂溶性であるため、私たちの体はそのままだと吸収しにくい」と述べています。

だからこそ、油を加えることで、体がケールの栄養をつかまえて運びやすくなる仕組みが働きます。

細かく分かれた油が体の中で分解されると、栄養を包んで腸まで運ぶ“乗り物”がたくさん作られるため、ケールの成分が吸収されやすくなるのです。

一方で、「加熱」そのものにはあまり効果がありませんでした。

トマトやニンジンなどの野菜では、加熱によって細胞構造が壊れ、カロテノイドが取り出しやすくなることがあります。

しかしケールは葉物野菜で、もともと組織が比較的柔らかく、消化過程で自然に壊れやすい構造をしています。

そのため、ケールの場合は、加熱しても“細胞が壊れやすくなる”というメリットがほとんどありません。

今回の研究が示す意義は、とても実用的です。

まず、私たちがふだん「スーパーフード」と呼んでいる食材でも、含まれている栄養と、実際に体に入ってくる栄養はかなり違うことが改めて浮き彫りになりました。

また、ケールのような野菜に少量の油を組み合わせるだけで、栄養の“実質的な効果”を大きく高められることも示されています。

これは、ほうれん草やケールといった葉物とビタミンCを一緒に摂取すると鉄の吸収が増える、という従来の知見とも通じる、「食材の組み合わせが健康効果を左右する」典型例と言えます。

さらに研究者らは、この知見を応用して、今後は「栄養吸収を高めるためのドレッシングやソース」の開発を進めたいと述べています。

もし次にケールを食べるなら、オイルを用いたドレッシングやソースと一緒がおすすめです。

参考文献

The simple ingredient that unlocks kale’s real nutritional power
https://newatlas.com/diet-nutrition/simple-kale-health/

Mizzou researchers find simple way to make kale healthier
https://cafnr.missouri.edu/stories/mizzou-researchers-find-simple-way-to-make-kale-healthier/

元論文

Culinary strategies for improving carotenoid bioaccessibility in kale: The role of thermal processing and excipient emulsions
https://doi.org/10.1016/j.fnutr.2025.100049

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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