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運動と睡眠、どちらかを選ぶなら「睡眠」であるべき理由

  • 2025.12.10
運動と睡眠、どちらを優先すべき? / Credit:Canva

十分な運動と十分な睡眠は、どちらも健康のために欠かせない習慣です。

それでも忙しい現代人にとって、その両方を毎日しっかり満たすことは簡単ではありません。

もし「今日は運動するか、早く寝るか」のどちらかしか時間がないとしたら、私たちはどちらを優先すべきでしょうか。

この疑問に対して、オーストラリアのフリンダース大学(Flinders University)が、世界中の人々が日常生活の中で記録した睡眠と身体活動のデータを分析し、両者がどのように影響し合っているのかを調べました。

その結果、「睡眠」を優先すべきであることが明らかになりました。いったいなぜでしょうか。

研究成果は2025年12月8日付の『Communications Medicine』に掲載されています。

目次

  • 「十分な睡眠」と「十分な運動」を選ぶなら、睡眠を優先すべき
  • 睡眠を優先すると、次の日の運動量が増える

「十分な睡眠」と「十分な運動」を選ぶなら、睡眠を優先すべき

近年、国際的な健康ガイドラインでは「7〜9時間の睡眠」と「1日8000歩以上の身体活動」が推奨されています。

しかし、日常生活は仕事や家事に追われることが多く、この両方を毎日守り続けることは決して容易ではありません。

そこで研究チームは、人間の生活リズムの中で、睡眠と運動には優先順位があるのではないかという視点から、研究者たちは大規模データの解析に踏み切りました。

今回の研究で使われたのは、一般の人が家庭で使用する市販の健康デバイスから得られたデータです。

睡眠はマットレスの下に置く睡眠センサーが記録し、歩数は手首に装着する活動量計が自動で測定しました。

これらの機器が連続して記録したデータは、世界中の7万人以上の人々による合計2,800万日分です。

睡眠と身体活動の関係を扱った研究としては非常に大規模な解析となっています。

研究者たちはこの記録を使い、前日の睡眠が翌日の身体活動にどれほど影響するのか、そして日中の活動量が当夜の睡眠にどれだけ影響するのかという関係性を日単位で詳しく解析しました。

その結果、睡眠から身体活動への影響は大きく、身体活動から睡眠への影響はごくわずかであることが明らかになりました。

つまり、睡眠と運動の関係は双方向ではなく、ほぼ一方通行であるということです。

睡眠と運動はどちらも大切ですが、「睡眠」を優先するなら、翌日の運動量も増やせます。

この理由や具体的なデータの詳細については次項で詳しく解説します。

睡眠を優先すると、次の日の運動量が増える

分析により、まず最初に明らかになったのは、推奨される睡眠と運動を日常的に達成できている人が全体の12.9%しかいないという事実です。

多くの人は7〜9時間の睡眠か1日8000歩のどちらか、あるいは両方を満たせていませんでした。

さらに全体の16.5%は睡眠が7時間未満で、歩数が5000歩未満という組み合わせに該当しました。

睡眠不足と低い身体活動はそれぞれ健康リスクと関連することが知られているため、この層は特に注意が必要だと考えられます。

次に、睡眠が翌日の身体活動にどう影響するかという点では明確な傾向が見つかりました。

睡眠時間と翌日の歩数の関係は山型になり、解析の条件によって最も歩数が多くなる睡眠時間はおよそ6〜7時間付近に位置しました。

また、睡眠効率が高い人ほど、翌日に自然と多くの歩数を記録することが分かりました。

実際に睡眠効率が高い人は翌日の歩数が200〜300歩ほど多く、これは日常生活の中でも無視できない差だと言えます。

この結果は、前夜の睡眠の質や量が、翌日の体の動きやすさや意欲に関わる重要な土台になり得ることを示しています。

つまり、よく眠れた日の翌日は自然と体を動かしやすくなる可能性が高いということです。

一方で、運動量が睡眠に与える影響は非常に小さく、歩数が多いからといって睡眠時間が延びたり、睡眠が深くなったりすることはほとんどありませんでした。

この研究の意義は、健康づくりの優先順位がよりはっきりした点にあります。

睡眠と運動を同列に扱う従来のガイドラインは、多くの人にとって現実的ではない可能性があります。

むしろ、まず睡眠の質を整えることが、結果として日中の活動量を高める近道になるかもしれません。

もちろん、「寝てばかりで運動しない」ことが健康に良いわけではありません。

それでも、「十分な運動」と「十分な睡眠」のどちらかしか選べない場面では、睡眠を優先するほうが良いでしょう。

参考文献

Scientists Say If You Have to Choose Between Working Out And Sleeping, You Should Always Pick Sleep. Here’s Why
https://www.zmescience.com/science/news-science/scientists-say-if-you-have-to-choose-between-working-out-and-sleeping-you-should-always-pick-sleep-heres-why/

Getting rest is the best
https://www.eurekalert.org/news-releases/1108620

元論文

Bidirectional associations between sleep and physical activity investigated using large-scale objective monitoring data
https://doi.org/10.1038/s43856-025-01226-6

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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