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【天神】体全体を使って自由にうたえる「手歌」で奏でる“新しい第九”公演

  • 2025.12.2

皆さん、こんにちは。リビングふくおか・北九州Web地域特派員のkurinaです。

街を歩けば、景色はいつの間にかクリスマスイルミネーション一色。木々は紅葉したばかりだというのに、季節はもう年の瀬の気配をまとい始めています。私はいま、2025年3月に開館したばかりの福岡市民ホール・小ホールに来ています。

出典:リビングふくおか・北九州Web

ここでは12月7日(日)に開催される『みえる かんじる 新しい第九~ぼくらはみんなうたいたい~』の舞台を前に、『手歌』という表現方法を用いて新しい音楽の世界を創造する出演者と、九響合唱団の有志の方々によるワークショップ&合同練習が、まさに行われているところです。

ホワイトハンドコーラスNIPPONと九州交響楽団が紡ぐインクルーシブな音楽会。その世界とは一体どのようなものになるのでしょうか。少しでも皆さんにお届けできればと思います(^^♪

ホワイトハンドコーラスNIPPONとは♪♪

ホワイトハンドコーラスNIPPONは、ろう者、難聴、全盲、弱視、車いすユーザーなど、多様なメンバーを含むすべての子どもに開かれたインクルーシブな合唱団。障がいの有無に関わらず、また経済的な状況に関わらず、誰もが無料で参加し、学ぶことができる。手話の表現で歌う(手歌)サイン隊と、声で歌う声隊がともに奏でる音楽は、可能性に溢れた未来世代の芸術創造です。

英語で「すべてを含んでいる」「包括的」という意味の「インクルーシブ」。その言葉のとおり、すべての人々が多様な表現のもと、一つの音楽を奏でる「インクルーシブな音楽会」。その舞台はどのように形づくられていくのでしょう。

今回の音楽会では『手歌』を用いて表現するサイン隊、約50名(東京チーム21名を含む)、歌声を担当する九響合唱団80名、演奏を担当する九州交響楽団60名、総勢約190名による演奏が予定されています。練習はそれぞれに行われているそうですが、私が取材した福岡サイン隊のワークショップ&合同練習には、九響合唱団から有志の数名が自主的に参加されていました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

練習に参加していた合唱団の方々にお話を伺うと、こんな声が返ってきました。「今回共演することで『手歌』というのを初めて知りました。どういうものなのかを自分たちなりに調べてはみたものの、実際に私たちが歌う歌声とどのように合わせていけるのか?というところがあって、練習に参加させていただきました。」

『手歌』という新しい表現のかたちにどのように歌声で寄り添い、全体としての音楽を紡いでいくのかを、皆さんが真剣に探っている様子が伝わってきました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

一つ一つの『手歌』の動作を丁寧に確認しながら、真剣さの中にも穏やかな空気が広がるなか、練習は続いていきました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

本公演まで残り1週間となった今、私が一番驚いたのは『手歌』の動作が変更されたことでした。「『手歌』は進化するものです。こちらの表現でいきましょう。本番前に最終確認を行います。」と、笑顔でサイン隊に伝えたのは、今回サイン隊の講師を務め、ご自身も音楽会に参加する、馬場昌子さん。

出典:リビングふくおか・北九州Web

合同練習の講師の為に東京から来ていた、バリトン手歌ソリストを務める、井崎哲也さんはこう語ります。「『手歌』は、手話歌とは異なり、歌詞の意味を自分たちに深く落とし込み、どう表現していくのかを子供たちを含め、皆でアイデアを出し合いながら作り上げていきます。そのため、演じながらも「この歌詞の部分はこちらの表現の方が良いのではないか」と変化していくのです。」

出典:リビングふくおか・北九州Web

左:馬場昌子さん 右:井崎哲也さん

私の質問に応じて、井崎さんはこう語ってくださいました。「音が聞こえないので、音を音色として捉えています。この曲は喜びを表現しているのか、悲しみを表現しているのかなど、しっかりと情報を得て、理解することで表現しています。」

一方で、参加していた合唱団の方もこう話していました。「歌詞の意味はもちろん理解して歌っていましたが、『手歌』の表現を実際に自分で行ってみると、より深く歌詞の意味が自分の中に浸透してきました。」

第九という「歓喜の歌」が、『手歌』と歌声でどのように紡がれるのか、本当にたのしみですね!

出典:リビングふくおか・北九州Web

子供たちの表現を引き出すうえで大切にされていることや、今回の音楽会に込めた想いを、メイン講師を務めるコロンえりかさんに伺いました。取材当日にお会いすることは叶いませんでしたが、事前にコメントを寄せていただいております。 コロンえりかさんは、ソプラノ歌手であり、ホワイトハンドコーラスNIPPON芸術監督を務めていらっしゃいます。

出典:リビングふくおか・北九州Web

「子どもの内面にある心は宇宙のように広い想像力が生まれる場所です。「表現」としてまだ外に顔を出していない、その子独自の感性を探しに行く時間が私にとっては最高に楽しい時間です。手話は「ことば」。音楽のエネルギーにのった歌は、手歌も含め「ことば」の究極の表現です。表現のすべを得た子どもは、想像力に翼を得ることになります。その自由な飛び立ちの瞬間を楽しみに子どもたちと向き合っています。約2年間の準備期間を経て、私たちはたくさんの出会い、葛藤、感動を経験しながらベートーヴェンと共に歓喜に続く道を歩んで参りました。一人一人の人生をかけて歓喜をお届けします。新しい第九を、ぜひ発見しにいらしてください。」

出典:リビングふくおか・北九州Web

今回の福岡公演の開催は、2年前に福岡市文化芸術振興財団の事業コーディネーターである吉津麻央さんと、ホワイトハンドコーラスNIPPONとの出会いから始まります。障がいのある人を含め全ての人が芸術に触れ、親しむことができる環境づくりをめざす、社会参加促進事業の一環として企画されたそうです。

福岡公演では、今年の8月に『手歌』による表現者を、障害の有無を問わず、小学4年生以上を対象として公募したそうです。まさに、誰もが参加できる音楽会ですね。約4か月という短い練習期間ながら、皆さんの表現はぐんぐんと磨かれていったそうですよ!

新しい音楽のかたち♪♪

今回、ホワイトハンドコーラスNIPPONと音楽で繋がるのは「公益財団法人九州交響楽団(九響)」。長きに渡り九州の音楽文化を牽引してきた九響との出会いが、どのような音楽の可能性を生み出すのでしょうか。もう、ワクワクがとまりません!

今回の音楽会では、九響の演奏家の皆さんによる合同練習は、本番前日の12月6日を予定されているとのことで、取材日にお話しを伺うことができませんでした。そのため、事前にコメントをお寄せいただいております。

~今回、ホワイトハンドコーラスNIPPONとの共演と聞いて、どのような印象を持たれましたか?

「楽団として全く初めての試みでどんな舞台になるのかな?と驚きを持って受け止めました。」そう語ってくださったのは、九州交響楽団の皆さん。

参加するすべての出演者たちが、それぞれの想いを乗せた『手歌』の音色と、九響が奏でる「第九」の響きが、どのように舞台の上で共鳴していくのか。新しい音楽の世界に出会えそうで、とても興味深いですよね!

~共演に向けて、どのような準備や意識をされているのでしょうか?

「楽団として第九の音の部分を担当する訳ですから、まずはしっかりと音楽的に高水準の第九を演奏すること。次に、初めて出会う様々な出演者がいるので、それらがスムーズにリハーサル、公演を行えるように準備することを意識しました。」

とても、力強いお言葉ですよね(^^♪ 今回の音楽会では、九響の皆さんによって高水準に保たれた演奏がしっかりと土台を支え、その上で、サイン隊が自由に表現していく。そんな舞台を想像するだけで、なんだかワクワクしてきます。

~「ぼくらはみんなうたいたい」というテーマに対して、演奏者としてどんな想いを持たれましたか?

「音楽はアイデアを共有するためのツールだと思います。これまで楽団が共有、交流ができなかった人とも、このテーマの下、それができるのだなと思っています。そしてそれは第九の歌詞であり、第九が持っている「すべての人が兄弟となる」というテーマに通じています。」

まさか、「フロイデ シェーネル ゲッテル フンケン・・♪」と続くドイツ語の歌詞に、そのような壮大なテーマが込められていたとは・・・驚きとともに、深く学ばせていただきました。同時に、長きに渡り演奏されてきた理由を、少し垣間見た気がします。

~本番に向けて、楽しみにしていることや読者に伝えたいことがあれば教えてください。

「単に聴覚や言語に困難がある人のための公演でなく、誰もが目と耳を使って第九の新しい魅力を発見する公演になると思います。」

私もまだ、ホワイトハンドコーラスNIPPON×九響合唱団×九州交響楽団が、実際に一つになった舞台を体感しておりませんが、目や耳だけではなく体全体で、共鳴・共振していくような舞台になるのでは・・・と想像しております(^^♪ ほんとうに、本公演が楽しみですね!

12月7日(日)本公演のお知らせ♪♪

2025年12月7日(日)13:30開演 福岡市民ホール・大ホールにて『みえる かんじる 新しい第九~ぼくらはみんなうたいたい~』の公演が開催されます。

出典:リビングふくおか・北九州Web

「第九のもつ熱、そして喜びで共生社会を作っていくことが出来れば・・。誰もが純粋に、一緒に楽しめる「誰もが主役になれる舞台」にしたいと思っています。」と語る吉津さん。観客の皆さんにも入場前に白い手袋が渡されるそうです。会場の皆で音楽会を作り上げていく、まさに「誰もが主役になれる」音楽会。

手のひらに歌声を乗せ、顔の表情も交え、体いっぱい『手歌』で歌うサイン隊、それに寄り添い歌声を響かせる合唱団、そして九響が奏でる至高の演奏が織りなす新しい音楽の世界。その瞬間にしか生まれない響きを、ぜひ会場でご体感ください。チケットは残りわずかです。ご興味のある方は、ぜひお早めにどうぞ!

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