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「窓を全開にする」は間違いだった。ストーブによる“一酸化炭素中毒”を防ぐ…一級建築士が教える「正しい換気」方法とは?

  • 2025.12.23
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近年、高気密住宅が増えていますが、そこで多くの方が抱える疑問があります。

「なぜ高気密住宅は換気に注意が必要なのか?」「ストーブを使うときの安全対策はどうすればいいのか?」という点です。

高気密住宅は外気を遮断し快適さを保つ一方で、空気の入れ替えが難しく、一酸化炭素中毒などのリスクが高まる恐れもあります。当記事では、一級建築士 yukiasobiさんの見解をもとに、高気密住宅での換気の重要性と具体的な換気方法、また安全に暖房を使うためのポイントについてわかりやすく解説します。

これを読めば、家族みんなが安心して過ごせる住まいづくりのヒントが得られるはずです。

なぜ高気密住宅は「魔法瓶」のようで危険なのか?

---高気密住宅でストーブを使用した際に一酸化炭素中毒が起こりやすくなる構造的・換気的な要因について、どのように分析されていますか?

yukiasobiさん:

「一言で言うと、高気密住宅は『高性能な魔法瓶』のようなものだからです。

昔の家は隙間風が多かったので、意識しなくても勝手に空気が入れ替わっていましたが、今の家は『暖かさを逃がさない』ために、恐ろしいほど密閉されています。

ここで注意が必要なのが、国が義務付けている『24時間換気』です。これはあくまで、人間が呼吸し、生活する上での最低限の汚れを出すためのもの。

『室内で火を燃やす(ストーブを使う)』という、大量の酸素を消費する状況までは想定されていません。

『魔法瓶の中で火を焚いている』ような状態なので、24時間換気だけでは酸素の供給が全く追いつかず、あっという間に一酸化炭素が発生しやすい酸欠状態に陥ってしまうのです。」

高気密住宅で効果的な換気方法とは?

---高気密住宅で暖房器具を使用する際、多くの人が見落としがちな換気の頻度や窓の開け方について、具体的にどのような点に注意すべきでしょうか?

yukiasobiさん:

「高気密住宅では、窓の『数』と『幅』が換気効率を左右します。まず頻度としては、『1時間に1〜2回、各1〜2分間』が最低ラインです。窓の開け方については、以下の2点を意識してください。

・『窓は2箇所、5cmずつ』開けること
窓を1箇所だけ全開にするよりも、『対角線上にある2箇所の窓を5cmずつ』開ける方が、空気は圧倒的に早く入れ替わります。
実は、1箇所の窓をどれだけ大きく開けても、空気の出口(または入り口)がないため、室内全体の空気はほとんど動きません。
2箇所の小さな隙間を『入り口』と『出口』に設定することで、部屋全体を貫く『風の通り道』が完成し、効率よく汚れた空気を押し出すことができるのです。

・『対角線』が作れない場合の工夫
窓が隣り合っている場合や1箇所しかない場合は、扇風機やサーキュレーターを窓に向けて回し、強制的に空気を押し出す必要があります。」

今日からできる高気密住宅の安全な暖房と換気のポイント

---高気密住宅にお住まいの方が、冬場に暖房器具を安全に使うために、今日からすぐ実践すべき「換気の具体的なルール」を教えていただけますでしょうか。

yukiasobiさん:

「今日から『誰でもできる』3つの換気ルールです。

1.『立ち上がったら換気』をクセにする
『1時間に1回』と数字で考えるのは面倒ですが、『トイレに立つ時』『お茶を淹れに行く時』『テレビがCMに入った時』など、自分の動作に合わせて窓を開けてください。『座りっぱなしを防ぐついでに空気を入れ替える』のが、最も長続きする安全策です。

2.『ストーブの炎の色』を時々眺める
ストーブの炎がオレンジ色や赤っぽくなっていたり、嫌な臭いがしたりしたら、それは酸欠による不完全燃焼のサインです。すぐに火を消して全部の窓を開け放ってください。

3.『短時間の使い分け』を基本にする
高気密住宅で一番確実なのは、エアコンをメインにし、ストーブは『着替えの時だけ』『帰宅直後の数分だけ』と割り切って使うことです。」

まずは「立ち上がったら窓を2箇所5cm開ける」ことから始めよう

高気密住宅は、魔法瓶のように暖かさを保つ一方で、換気が不十分になるリスクをはらんでいます。

24時間換気だけでは、ストーブ使用時の酸素消費には追いつかず、酸欠や一酸化炭素の危険が高まるため、こまめな換気が不可欠です。窓は必ず対角線上に2箇所、5cmずつ開けることで効率的な空気の流れを作り出せます。

窓の配置が難しい場合は扇風機などを活用する工夫も大切です。そして、日常の動作に合わせて換気を習慣化し、ストーブの炎の色の変化に気をつけること、暖房の使い分けを意識することが、安心して暮らせるコツです。

まずは「椅子から立ち上がった時に窓を2箇所5cm開ける」ことを日々のルーティンに取り入れて、安全な住まいづくりを目指しましょう。


監修者:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。