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「レシートを処分しないで」お金のプロが指摘。確定申告で“数万円戻る”…見逃しがちな「意外な控除対象」とは?

  • 2025.12.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

確定申告の際、控除の申告漏れを経験したことはありませんか。

なぜ、控除可能な支出を見落としてしまうのか、その背景には複雑な制度だけでなく、生活費と仕事関連の支出を無意識に区別してしまう認識不足が大きく関わっています。

この記事では、仕事に関わる支出がどのように控除や経費として認められるか、働き方の違いによる税務上の取扱いのポイント、さらに支出管理の具体的なコツまで、金融機関勤務 現役マネージャー 中川佳人さんに詳しく伺いました。

確定申告で控除を最大限活かすための第一歩を一緒に学びましょう。

確定申告で控除を見落とす最大の原因は「認識不足」

---確定申告で見落とされがちな控除の背景には、制度の複雑さ以外に、どのような生活費目や支出パターンの認識不足が関係しているのでしょうか?

中川 佳人さん:

「確定申告で控除を見落としてしまう背景には、制度が複雑で分かりにくいという理由だけでなく、『これは生活費だから関係ない』と無意識に線引きしてしまう認識不足が大きく関係しています。

多くの人は、医療費控除や住宅ローン控除のように名称が明確で、メディアでも頻繁に取り上げられる支出しか控除の対象にならないと思い込みがちです。しかし実際には、仕事や収入を得るために必要だった支出で控除の対象となるものが、日常生活の中の支出と重なっており、申告されていないケースも少なくありません。

たとえば、仕事で使う書籍代やセミナー参加費、資格取得のための費用などは、『将来のための自己投資』として処理されがちですが、職種や働き方、収入との関連性によっては、経費や控除の対象として認められる可能性があります。特に、副業をしたり、フリーランスとして活動している方の場合、プライベートと仕事の支出が混在しやすく、整理が面倒という理由から、本来申告できたはずの支出まで申告を諦めてしまうケースも多く見られます。

『日常的に使っているお金でも、何のために使ったのかによって税務上の扱いが変わる』という視点を持てていないことが、控除を逃してしまう最大の要因と言えるでしょう。」

所得区分によって大きく異なる控除の可否

---見落としがちな控除対象として、医療費や住宅ローン以外に「通勤用自転車の購入費」や「在宅勤務の光熱費」なども申告できる可能性はあるのでしょうか?

中川 佳人さん:

「条件を満たせば申告できる可能性はありますが、誰でも無条件に控除できるわけではありません。

判断のポイントとなるのは、その支出が『仕事や収入を得るために必要だったかどうか』に加えて、『どの立場で働いているか』という点です。

個人事業主と会社員では、同じ支出であっても税務上の取扱いが大きく異なります。たとえば、通勤用の自転車購入費については、会社員の場合、通勤費は会社からの手当や非課税枠で整理されるため、原則として確定申告で控除や経費として申告することはできません。

一方、個人事業主やフリーランスであれば、取引先への訪問や業務上の移動など、仕事との合理的な関連性が説明できる場合に限り、必要経費として認められる余地があります。

また、在宅勤務にかかる光熱費についても注意が必要です。会社員として在宅勤務をしているだけでは、光熱費を家事按分して控除することは原則として認められていません。しかし、副業を行い、事業所得が発生している場合や、個人事業主として自宅を事業に使用している場合には、仕事で使用している時間や部屋の面積に応じて按分し、必要経費として申告することが可能です。

重要なのは、『自分はどの所得区分に該当するのか』を正しく理解したうえで、『仕事との関連性を具体的に説明できるか』『根拠となる記録が残っているか』を確認することです。働き方によって税務上の扱いは大きく変わるため、思い込みで判断せず、一度確認してみることが、控除を正しく活用する第一歩と言えるでしょう。」

控除を逃さないためのレシート管理術

---確定申告で控除を見逃さないために、今日から始められる「レシートや領収書の管理方法」について、具体的なコツを教えていただけますでしょうか。

中川 佳人さん:

「控除を確実に活かすためには、『完璧に管理しよう』と気負うよりも、『続けられる仕組みを作ること』が大切です。

最初から細かく分類しようとすると手間がかかり、結果的に長続きしないことが多いため、無理なく続けられる方法を選ぶことが重要になります。

まずおすすめなのは、レシートを受け取った時点で『仕事に関係していそうか』『将来、確定申告で使う可能性がありそうか』を大まかに判断し、専用の保管場所に入れる習慣をつけることです。細かい仕分けや経費区分は後回しで構いません。とにかく「捨てない」「まとめておく」ことを優先しましょう。

次に、スマートフォンでレシートを撮影して保存する方法も非常に有効です。紙のレシートは時間が経つと文字が薄くなったり、消えてしまったりすることもありますが、写真で残しておけば証拠として十分に役立ちます。画像は月別や年別にアルバムを分けておくと、確定申告の際に探す手間が大幅に減り、作業効率も上がります。

また、『これはどうせ使えないだろう』と自己判断でレシートを処分しないように、まとめて保管しておくことも大切です。申告のタイミングで税理士に相談したり、会計ソフトで入力したりすると、意外な支出が控除や経費の対象になるケースも少なくありません。レシート管理は節税の第一歩と考え、今日から無理のない形で取り入れてみてください。」

控除を活かすための第一歩は「正しい認識」と「無理のない管理」から

確定申告で控除をうまく活用できない背景には、「生活費と仕事関連の支出は別」という誤った認識が大きく影響していました。

働き方によって控除の対象となる支出や申告方法は異なるため、まずは自分の所得区分を理解し、仕事との関連性を整理することが大切です。さらに、控除対象となりそうな支出は「捨てない」「まとめる」というシンプルな仕組みでレシートを管理することから始めましょう。完璧を目指すよりも続けやすい方法を選ぶことで、控除漏れを防ぎ、税金の負担軽減につなげることが可能です。

今日から少しずつ意識して取り組むことで、確定申告の不安や悩みを減らし、賢く節税を実現しましょう。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。
専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。