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「1人あたり月5200円補助」“給食費の無償化”に波紋…「結局は税金」「手取りが減る」→お金のプロ「誤解です」“真の狙い”とは?

  • 2025.12.25
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12月18日(木)、2026年春から全国の公立小学校の給食費について、保護者の所得にかかわらず1人当たり月額5,200円を上限に支援する方針で3党(自民、日本維新の会、公明)が合意し、話題になりました。

給食費の無償化が進むなか、『結局は税金で賄われるだけ』『手取りが減る』『無償化に騙されている』といったSNS上の声が散見されます。これらの疑問や不安は、なぜ生まれるのでしょうか?税制や社会保障の仕組みが複雑なこともあり、正確な理解が難しいという点が背景にあります。

本記事では、金融機関勤務の現役マネージャー 中川佳人さんの見解をもとに、給食費無償化の実態や財源の仕組み、世帯への影響をわかりやすく解説します。

給食費無償化に対する誤解と実態:税負担増は本当?

---給食費無償化に対する「手取りが減るだけ」「騙されている」といったSNS上の批判的な声は、税制や社会保障制度のどのような仕組みへの誤解から生じているのでしょうか?

中川 佳人さん:

「給食費無償化に対してSNS上で見られる『結局は税金で賄われるだけで、手取りが減る』『無償化に騙されている』といった批判の多くは、税制や社会保障制度の仕組みに対する誤解から生じています。

こうした声の背景には、『公費で賄われる支援は、いずれ必ず税金や社会保険料の負担増につながる』という見方があります。

しかし、今回の給食費無償化については、政府が歳出改革や租税特別措置の見直しによって財源を確保する方針を示しています。少なくとも現時点で国民の税負担や社会保険料が直接的に引き上げられる予定はなく、負担が増えるというのは誤解です。

また、低所得世帯については、すでに就学援助制度によって給食費が全額免除されているケースが多く、今回の無償化による新たな恩恵は、これまで給食費を自己負担してきた中間層以上の子育て世帯に及ぶ仕組みとなっています。

一見すると無償化によって別の形で負担が増えるように感じられがちですが、給食費無償化は家計の固定費を確実に減らし、子育て世帯の実質的な手取りを支える狙いを持った施策です。税制の仕組みを正しく理解することで、『騙されている』といった見方が必ずしも実態を反映したものではないことが見えてきます。」

扶養控除と給食費無償化の関係 年収が高い世帯はどうなる?

---給食費無償化に伴い扶養控除が縮小されることで、実質的に手取りが減少する世帯(例:年収が一定以上の共働き世帯など)があるという指摘がありますが、どのようなケースで損をする可能性があるのでしょうか?

中川 佳人さん:

「扶養控除が縮小した場合、給食費が無償化になったとしても『年収が高い世帯で高校生を含む子どもがいる家庭』では、無償化の恩恵を受けられない可能性があります。

ただし、12月18日、政府・与党が高校生年代の子を持つ親の扶養控除を維持することを決めました。

これにより、検討されていた扶養控除の縮小は見送られることになっています。控除の縮小は見送られましたが、指摘のあった手取りが減少するケースについて確認しておきましょう。

まず、前提として、給食費無償化の財源を確保するために扶養控除の縮小が検討されていたわけではありません。扶養控除の見直しは、2024年に児童手当の所得制限が撤廃され、支給対象が高校生まで拡大したことに伴い議論されたものです。

その上で、実質的に手取りが減少する可能性があるのは、年収が高い世帯で高校生を含む子どものいる世帯です。年収が高い場合、所得税の税率も高くなります。仮に扶養控除が縮小された場合、給食費が無償化になったとしても、高校生は給食費無償化の対象外であるため支払う税金が多くなりトータルでマイナスになる可能性があるという指摘です。

今回は、控除の縮小がされませんでしたが、少子高齢化が進む中、貴重な財源をどこに使うのかという議論は常にされていきます。私たちがすぐにできることは、制度が改正されても耐えられる『強い家計』を作っておくことです。今回のことを機に、ライフプランや家計を見直してみてはいかがでしょうか。」

給食費無償化の正しい理解と活用法:SNSの情報に惑わされないために

---家計への実質的な影響を正しく理解し、制度を最大限活用するために家庭で今すぐできる具体的な対策を教えていただけますでしょうか。

中川 佳人さん:

「給食費無償化を最大限活用するために今すぐできることは、正確な情報を把握することです。

給食費無償化は、子育て世帯の家計負担を直接的に軽減できる、有用で分かりやすい支援策の一つです。

一方でSNS上では、『財源が不安』『将来的に税金が上がるのではないか』『給食の質や量が下がるのでは』といった批判的な声も見られます。しかし、制度の内容や狙いを正しく理解すれば、過度に不安視する必要はありません。

給食費無償化では、児童一人あたり月およそ5,200円の給食費が公費で賄われるため、その分、家庭の支出は減少します。子ども一人で見ても、小学校6年間で約37万円の給食費負担が軽減される計算になり、兄弟が二人いる家庭では、月1万円以上、年間では十数万円規模の家計改善につながるケースもあります。このように、給食費無償化による経済的効果は決して小さなものではありません。

また、浮いたお金を学用品費や食費に充てることで生活のゆとりを感じやすくなります。教育費として計画的に貯蓄すれば将来への備えにもつながるでしょう。

制度のメリットを実感するためには、単に『無償になったかどうか』だけを見るのではなく、家計全体の固定費がどれだけ下がったのかを意識することが重要です。断片的なSNSの情報に惑わされず、国や自治体が発信する公的な情報をもとに家計管理を見直すことが、給食費無償化を最大限活用するために今すぐできる現実的な対策と言えるでしょう。」

給食費無償化を正しく理解し、賢く活用しよう

給食費無償化についての理解には、税制や社会保障制度の基本的な仕組みを知ることが不可欠です。誤解や不安があるものの、多くのケースで国民の税負担が増えることは現時点ではありません。また、主に中間層以上の子育て世帯を支える経済的施策として有効に機能します。

今後も財源の使い道や制度の変更が議論されることが予想されますが、私たちにできることは「強い家計」をつくること。ライフプランの見直しや家計の固定費管理を進め、給食費無償化をはじめとした公的支援策を適切に理解・活用していくことが大切です。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。
専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。