1. トップ
  2. 「大火災につながる」一級建築士が警告。冬に増える“コンセント”の発火…家具の裏で起こる「恐ろしい異変」とは?

「大火災につながる」一級建築士が警告。冬に増える“コンセント”の発火…家具の裏で起こる「恐ろしい異変」とは?

  • 2025.12.20
undefined
出典元;photoAC(※画像はイメージです)

冬になると耳にすることが増える「トラッキング現象」。家の中で突然火花が散るような発火事故はなぜ起こるのでしょうか?

乾燥と湿気が同時に存在するこの季節に、どうしてコンセント周りでトラブルが増えるのか、疑問に思う方も多いはずです。

この記事では、トラッキング現象が冬場に多発するメカニズムや、特に注意したい場所、そして今日からできる最も効果的な予防法について、一級建築士のyukiasobiさんに詳しく伺いました。知らなかったリスクを知り、いざというときに慌てないために、ぜひ読み進めてください。

冬場にトラッキング現象が増えるのはなぜ?

---冬場にトラッキング現象による火災が増加する背景には、湿度の低下以外に、どのような環境要因や使用状況が関係しているのでしょうか?

yukiasobiさん:

「冬場にトラッキング現象が増える理由は、『乾燥』と『結露』という一見矛盾する要素が重なり合うためです。

まず、空気が乾燥すると静電気が発生しやすくなり、空気中のホコリがコンセントやプラグ周辺に吸い寄せられ、蓄積しやすくなります。そこに、冬特有の『結露』が加わります。

暖房で温められた室内と外気の温度差により、窓際や壁際にあるコンセント付近で微細な結露が発生します。この水分が、溜まったホコリに吸収されることで『漏電の通り道(トラック)』が作られ、放電・発火に至るのです。

また、冬場は電気ストーブやヒーターなど消費電力の大きい暖房器具を長時間使用するため、プラグやコード自体が熱を持ちやすく、絶縁体の劣化が進みやすい点もリスクを高める要因となります。」

特に注意すべき「ホコリ・湿気・換気不足」の3条件とは?

---長期間差しっぱなしのコンセント(例:冷蔵庫や洗濯機の裏など)で発火リスクが高まるのは、どのような環境条件や使用状況が重なった時でしょうか?

yukiasobiさん:

「最も危険なのは『ホコリの蓄積』『湿気』『換気不足』の3条件が揃った時です。

例えば、冷蔵庫や洗濯機の裏は普段掃除をしないため、綿ボコリが大量に堆積しています。ここに、キッチンならではの『油煙を含んだ湿気』や、洗面脱衣所の『湯気』が付着すると、ホコリが湿って粘着質になり、プラグの刃(端子)の間に強固に付着します。

この状態で通電し続けると、プラグの刃の間で微小な放電(シンチレーション)が繰り返され、プラスチック部分が炭化して電気が流れやすい『導電路』が形成されます。

家具の裏は空気の対流がほとんどないため、発生した熱が逃げず、ある日突然、一気に発火して燃え広がるのです。発見が遅れやすいため、大火災につながるケースも多いのが特徴です。」

今日から始められる!冷蔵庫コンセントのお手入れで命を守る方法

---読者が明日からすぐに実践できる、トラッキング現象による火災を防ぐための「最も効果的な最初の一歩」を教えていただけますでしょうか。

yukiasobiさん:

「最も効果的かつ重要な第一歩は、『冷蔵庫のコンセントを一度抜き、乾いた布で拭くこと』です。

家中のコンセントを全て確認するのはハードルが高いですが、統計的に見ても最も危険で、かつ見落とされがちなのが、24時間365日通電している冷蔵庫です。

まずは冷蔵庫を少し前に引き出し、プラグを抜いて、刃の根元に溜まった黒ずんだホコリを乾いた布で拭き取ってください。もしプラグの根元が変色していたり、熱で変形していたりする場合は、即座に使用を中止し交換が必要です。

また、復旧する際は、100円ショップやホームセンターで手に入る『トラッキング防止カバー(プラグにかぶせるゴム製のキャップ)』を装着してから差し込むことを強くおすすめします。この『たった一箇所』のケアが、命を守ることに直結します。」

冬のトラッキング現象、今すぐできる備えで安心な暮らしを

冬場のトラッキング現象は、乾燥によるホコリの蓄積と結露による湿気という、一見すると相反する条件が重なり合って起きています。

特に換気が悪く、ホコリが溜まりやすい場所でのリスクは非常に高く、冷蔵庫の裏など見落としがちな場所の定期的な清掃と、トラッキング防止カバーの利用が最も効果的な予防策です。

この記事を参考に、冬の間も安心して電気製品を使える環境づくりを始めましょう。ちょっとした手間で大きな火災リスクを減らせることをぜひ覚えておいてください。


監修者:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】