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「常温で放置しないで」管理栄養士が警告。冬のカレーに潜む“食中毒”リスク…一晩置いた鍋が「危険なワケ」

  • 2025.12.18
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出典元:ophotoAC(※画像はイメージです)

作ったカレーやシチューを翌日に食べたとき、「腐っていないはずなのにお腹を壊してしまった」という経験はありませんか。

実はその原因、「ウェルシュ菌」かもしれません。この菌は熱に強い「芽胞(がほう)」という殻のようなものを作るため、グツグツ煮込んでも生き残ってしまう厄介な存在です。

そのため、私たちが普段何気なく行っている保存方法が、思わぬ食中毒のリスクを高めている可能性があります。

本記事では、ウェルシュ菌のメカニズムや、安全に食べるための正しい保存・加熱のポイントを、かきねキッチン 管理栄養士 小池 三代子さんに詳しく伺いました。

ウェルシュ菌ってどんな菌?加熱調理後も安心できない理由

---カレーを大鍋で加熱したのに、なぜウエルシュ菌が生き残るのか気になります。どんな特徴がある菌なのでしょうか?

小池 三代子さん:

「ウェルシュ菌は人や動物の腸管、土壌、水中など自然界に広く分布する、酸素を嫌う嫌気性菌です。熱に強い芽胞を作るため、高温でも死滅せず生き残ります。

芽胞とは、ウェルシュ菌が厳しい環境下で生き残るために作る、熱や乾燥に強い殻のようなものです。カレーなどの食品を大鍋で大量に加熱調理すると、他の細菌は死滅してもウェルシュ菌の耐熱性の芽胞は生き残ります。

芽胞は休眠状態で増殖しませんが、発育に適した環境になると再び菌に戻り増殖します。

つまり、ウェルシュ菌が休眠している芽胞の中で耐え忍んでいるような状態なのです。」

どんな条件でウェルシュ菌は増殖する?カレーやシチューの危険な理由

---一晩寝かせたカレーやシチューを「鍋ごと常温で保存→翌日再加熱」という方法で食べている家庭は多いと思いますが、これは具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか?

小池 三代子さん:

「カレーの鍋の中心部は酸素の無い状態になり、嫌気性菌のウェルシュ菌にとって好ましい環境です。

食品の温度が発育に適した12〜50℃の範囲まで下がると、芽胞が発芽して急速に増殖を始めます。特に43℃〜45℃で活発になり、約10分で菌数が倍増すると言われています。

カレーやシチューはとろみがあり冷めにくいため、菌が増殖しやすい温度帯が長く続くこともリスクを高めています。常温で一晩置いた場合、大量に増殖してしまう可能性があります。

増殖した菌は食べ物と一緒に胃を通過し、小腸でさらに増殖し、芽胞形成の際にエンテロトキシン(毒素)を産生。その毒素が下痢などの食中毒症状を引き起こすのです。」

ウェルシュ菌の毒素は再加熱で消える?安全な保存と加熱のポイント

---一晩置いたカレーを安全に保存・温め直すために、家庭で明日からすぐ実践できる最も重要なポイントを教えていただけますでしょうか。

かきねキッチン:

「ウェルシュ菌が作る毒素は熱や酸に弱く、60℃10分以上の加熱で不活化すると言われていますが、耐熱性の毒素の存在も報告されています。一方で、芽胞は100℃で長時間加熱しても死滅しないと考えられており、通常の再加熱では芽胞を完全に除去することは困難です。

そのため、一晩置いて大量に増殖したウェルシュ菌を単に再加熱しても安全とは言えません。

さらに、ウェルシュ菌の増殖は匂いや味にほとんど影響しないため、気づきにくいこともリスクを高めます。

最も重要なポイントは『菌を増やさないこと』です。

そのためには常温で放置しないでください。できるだけその日のうちに食べ切ることが大切です。
保存が必要な場合は、小分けにして急速に冷ますこと。鍋に入れっぱなしにせず、底の平たい容器に移したうえ、氷水や風を使って手早く冷ましましょう。

また、温め直す際は電子レンジを避け、鍋に移して全体を均一にかき混ぜながらしっかり沸騰させることが大切です。
加熱後はなるべく早く食べ、時間があく場合は65℃以上での保温を心がけてください。」

今日からできる!ウェルシュ菌対策で安全な食卓を

ウェルシュ菌は自然界に広く存在し、熱に強い芽胞を通じて調理後も生き残ります。

特にとろみがあるカレーやシチューは菌が増殖しやすい条件がそろいやすいため、放置に要注意です。匂いや味に変化がないため気づきにくい感染リスクを減らすには、菌を増やさないことが何よりの防御策。

小分けにして早く冷ます、電子レンジを避けてしっかり再加熱、保存は温度管理を徹底するなど、今日から実践できることばかりです。安全でおいしい食品を安心して楽しみましょう。


監修者:かきねキッチン 小池 三代子(Instagram / ブログ
管理栄養士×保育士|実務経験13年|現在はフリーランスの管理栄養士として、栄養相談や食事指導、献立作成、記事執筆・監修を中心に活動中。「人に寄り添い、無理なく実現できる食生活のサポート」をモットーに、忙しい中でも続けられる、簡単でおいしい時短レシピを発信している。