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「鶏肉を洗わないで」農水省が“注意喚起”。管理栄養士「呼吸障害を引き起こすことも」…安全に食べる“正しい下処理”

  • 2025.12.17
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

鶏肉を調理する前に水で洗うのは、一見「衛生的」と思われがちですが、実は食中毒のリスクを高めてしまうことをご存知でしょうか。

12月12日(金)、農林水産省(@MAFF_JAPAN)がXで投稿した『鶏料理を楽しむための5原則』でも、「鶏肉を洗わない」という注意喚起がなされ、話題となっています。

なぜ鶏肉を洗うことが危険なのか、そして安全に調理するためには何に注意すれば良いのか、悩んでいる方も多いでしょう。

この記事では、鶏肉の調理に関する正しい知識と対策について、管理栄養士の工藤まりえさんに詳しく伺いました。食中毒を未然に防ぎ、安心して鶏肉料理を楽しむためのポイントを抑えましょう。

なぜ鶏肉は洗わない方が良いの?食中毒リスクの実態

---鶏肉を調理前に水で洗う人は多いですが、なぜそれがかえって危険なのでしょうか?肉眼では見えませんが、水しぶきに乗ったカンピロバクターなどの食中毒菌は、周囲の食器や、生で食べるサラダ用の野菜にどれくらいの範囲まで飛び散っているものなのでしょうか?

工藤まりえさん:

「鶏肉を調理前に水で洗うと、かえって食中毒のリスクが高まってしまう最大の理由は、菌を含んだ水しぶきによる二次汚染です。

鶏肉にはカンピロバクターなどの食中毒菌が付着していることが多く、表面だけでなく肉汁(ドリップ)にも菌が含まれています。調理前に鶏肉を水で洗おうとして、シンクで流水を当てると、水が跳ね返って細かな水滴が飛び散り、気付かないうちに目に見えない菌が周囲に広がってしまいます。これらの水しぶきは、シンク周辺の調理台やまな板、包丁、食器、さらには近くに置いたサラダ用の生野菜などを汚染する可能性があります。

カンピロバクターによる食中毒はごく少量でも発症するため、見た目がきれいでも安心はできません。こうした理由から、厚生労働省も「鶏肉は洗わない」ことを注意喚起しています。」

鶏肉の食中毒がもたらす深刻な健康被害とは?

---鶏肉の食中毒というと『お腹を壊すだけ』と軽く見られがちです。しかし、最悪の場合、手足が麻痺したり、呼吸困難に陥ったりする難病『ギラン・バレー症候群』を引き起こす可能性があるというのは本当ですか? 免疫力の低い子供や高齢者がいる家庭で、このリスクはどれほど致命的なのでしょうか?

工藤まりえさん:

「食中毒は「お腹を壊す程度」と軽く見られがちですが、鶏肉による食中毒はもっと注意が必要です。

カンピロバクター食中毒の後、数週間以内にギラン・バレー症候群という神経の病気を発症するケースが知られています。

ギラン・バレー症候群は、手足のしびれや力が入りにくくなる症状から始まり、重症化すると歩行困難や呼吸障害を引き起こすこともあります。

原因の一つとして、カンピロバクターの一部が人の神経と似た構造を持ち、免疫反応が誤って自分の神経を攻撃してしまうことが関係していると考えられています。

特に免疫力が十分でない子どもや、体力や抵抗力が低下しやすい高齢者がいる家庭では、食中毒自体が重症化しやすく、回復にも時間がかかる傾向があります。発症するケースは限られるものの、重い後遺症につながる可能性もあるため、「たかが食中毒」と油断せず、家庭で確実に防ぐ意識が重要です。」

家庭でできる!鶏肉の安全な扱い方3つのポイント

---鶏肉を調理する際、食中毒を防ぐために家庭で最も気をつけるべきポイントと、すぐに実践できる安全な下処理の方法を教えてください。

工藤まりえさん:

「鶏肉を調理する際に食中毒を防ぐため、家庭で最も気をつけたいポイントは、「鶏肉は洗わない・調理器具を分ける・しっかり加熱」の3つです。

まず、鶏肉は調理前に水で洗わないことが基本です。ぬめりなどが気になる場合は、流水に当てるのではなく、キッチンペーパーで軽く押さえて拭き取り、使ったペーパーはすぐに捨てます。

次に、生の鶏肉が触れた手や調理器具から菌が広がらないよう注意が必要です。まな板や包丁は、できれば肉専用のものを使い、共用する場合は使用後すぐに洗剤と流水で洗い流します。鶏肉を触った手で、冷蔵庫の取っ手や調味料容器、生で食べる野菜に触れないことも大切です。

そして最も重要なのが加熱です。鶏肉は中心部まで十分に火を通し、加熱後に中がピンク色でないこと、透明な肉汁が出ることを確認します。少しの手間を意識するだけで、家庭での食中毒リスクは大きく下げることができます。」

安心安全な鶏肉調理で家族の健康を守ろう

鶏肉を洗うことが、逆に食品衛生を脅かすことを知ると、調理の基本が変わるかもしれません。

鶏肉は「洗わない・調理器具は分ける・十分に加熱する」を毎日の調理に取り入れることで、食中毒のリスクをぐっと減らせます。

また、軽んじがちな食中毒の後遺症や重症化の可能性についても理解することは、健康を守る上で非常に重要です。小さなお子様や高齢者がいる家庭では特に意識して取り組みたいところです。正しい知識と少しの工夫で、安心しておいしい鶏肉料理を楽しみましょう。


出典元:『鶏料理を楽しむための5原則』農林水産省(@MAFF_JAPAN)

監修者:工藤まりえ
大学にて栄養学と分析化学を専門とし、管理栄養士免許を取得。卒業後は都内飲食系会社にてフードコーディネーターとして勤務。また、管理栄養士としてはスポーツジムに通う方を対象に、体質改善・ダイエットのための栄養指導を実施。短期的な痩身だけではなく、健康的で太りにくい体質への改善を目指した、専門的かつ行動に移しやすいアドバイスを毎月100名程に対して行っている。


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