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「非常によくある危険な間違い」一級建築士が警告。『水道管の破裂』を引き起こす…冬場にやってはいけない“NG行動”とは

  • 2025.12.22
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

冬になると気温の低下に伴い、水道管の凍結による破裂事故が増えます。

一般的に「マイナス4℃以下で凍結する」と言われていますが、それはあくまで風がない状況での話。実際にはそれ以上の気温でも凍結は起こり得ます。

なぜ気温以外の条件が凍結に影響するのか、また凍結を防ぐための最も確実な方法とは何か、一級建築士 yukiasobiさんの見解をもとにその疑問にお答えします。これからの本格的な寒さに備え、被害を未然に防ぐ対策を理解しましょう。

なぜ氷点下でなくても水道管は凍結し破裂するのか?

---気温が氷点下にならなくても水道管が凍ることがあると聞きました。どんな原因があるのでしょうか?

yukiasobiさん:

「一般的に『マイナス4℃』が凍結の目安と言われますが、これはあくまで無風状態での気温の話です。

実際には氷点下でなくとも、破裂事故は多発しています。

最大の要因は『風の吹きっさらし効果(風冷え)』です。配管が建物の北側に露出していたり、給湯器周りの配管が剥き出しになっていたりする場合、冷たい風が当たり続けることで熱が急激に奪われ、気温以上に配管表面温度が低下します。

また、住宅構造の問題として『断熱の切れ目』があります。床下換気口の近くや、壁内でも断熱材が薄い、または入っていない場所を通る配管は、外気の影響をダイレクトに受けます。特に築年数が経過した木造住宅や、リフォームで配管経路を変更した箇所は要注意です。

さらに、放射冷却現象により晴れた日の夜明け前は地表付近や外壁付近の温度が局所的に急降下するため、天気予報の最低気温だけを過信するのは危険です。」

冬場にしてはいけない凍結対策の誤りとは?

---冬場の留守中に水道管破裂を防ぐため、多くの人が実践している対策(例:水抜き、蛇口を少し開けるなど)で不十分なケースや、かえって逆効果になるNG行動はありますか?

yukiasobiさん:

「非常によくある危険な間違いが2点あります。

まず1つ目は『ブレーカーを落として出かけてしまうこと』です。

節電のために長期間の留守でブレーカーを切る方がいますが、これは寒冷地では自殺行為です。多くの給湯器や温水洗浄便座には、凍結防止用のヒーター(電気で作動)が内蔵されています。ブレーカーを落とすとこれらの安全装置が停止し、給湯器の釜(熱交換器)が破裂する事態を招きます。

2つ目は『保温材(タオルなど)を巻いただけで防水処理をしないこと』です。

露出した配管にタオルや布を巻くのは有効ですが、その上からビニールテープなどで防水措置をしないと、雨や雪で布が濡れ、夜間にその布自体がカチコチに凍ってしまいます。これでは配管を冷やす『氷の湿布』を巻き続けているのと同じで、かえって凍結を促進させてしまいます。

また、『水をチョロチョロ出す』対策も注意が必要です。排水口部分が凍って詰まると、溢れた水が床に広がり、それが凍結する二次被害を招くため、留守中に行うのは推奨できません。」

凍結破裂事故を最小限に抑えるための基本的な対策とは?

---冬の留守中に水道管の破裂を防ぐために、出かける前に最低限やっておくべき「これだけは」という対策を教えていただけますでしょうか。

yukiasobiさん:

「最も確実で、かつ被害を最小限に抑えるための対策は『水道の元栓(止水栓)を閉めてから家中の蛇口を開け、配管の圧力を抜いておくこと』です(簡易的な水抜き)。

本格的な水抜き(不凍栓の操作)が難しい住宅や温暖な地域であっても、メーターボックス内の元栓を閉めることは誰にでもできます。手順は以下の通りです。

1:水道の元栓を閉める。

2:キッチン、洗面所、浴室などの蛇口を開け、配管内の水を出し切る(出なくなったら開けたままにする)。

3:給湯器のリモコン電源は切っても良いが、家のブレーカーは絶対に落とさない(給湯器の凍結防止ヒーターを作動させるため)。

もし配管内に残った水が凍結して破裂しても、元栓を閉めていれば氷が溶けた後に水が噴き出し続ける『水没事故』を防げます。家財への被害を防ぐため、元栓の閉鎖を必ず行ってください。」

凍結リスクを理解し、適切な対策で冬を安心に過ごそう

水道管の凍結破裂事故は「マイナス4℃」という単純な数値だけでは測れません。風の影響や住宅の断熱状態、局所的な気温低下など、複合的な要素が関係しています。専門家が指摘するように、節電目的でのブレーカー遮断や保温のみに頼るのは危険です。

最も大切なことは、元栓を閉めて蛇口を開ける簡単な水抜き作業を行うことで、万一の凍結による破裂の二次被害から家財を守ることにあります。冬場の留守や寒波到来の際は、ぜひこの基本対策を実践してください。思わぬ被害や高額な修理費用を回避できるだけでなく、安心して冬を過ごせる大きな助けとなるはずです。


監修者:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。