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「慎重に確認して」お金のプロが警告。12月の給与明細で“見るべき数字”…手取りが減る「知られざる原因」とは

  • 2025.12.16
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

12月の給与明細を見て「あれ?手取りが減っている…」と驚いたことはありませんか?

年末は賞与だけでなく年末調整や社会保険料の改定など、普段とは違う事情が絡んで手取りが変動しやすい時期です。では、具体的にどんな要因が12月の手取り減少を引き起こしているのでしょうか。

今回は、元厚生労働省のファイナンシャル・プランナー 柴田充輝さんに、手取り減少の原因や見分け方を詳しく伺いました。この記事を読めば、12月の給与明細を正しく理解し、納得できる理由を知ることができます。

12月の手取りが減るのは総支給減少か控除増加か?

---12月の給与明細で手取りが減少する主な要因として、年末調整や社会保険料の変動以外に、どのような制度改正や控除の見落としが影響しているのでしょうか?

柴田 充輝さん:

「12月の給与明細で手取りが減るときは、「総支給が減った」のか「控除が増えた」のかで原因がほぼ決まります。まずは先月の明細と見比べ、増減している行を特定してください。

年末調整(所得税の精算)と健康保険・厚生年金(標準報酬の改定)を除いても、12月の手取りが下がる要因は複数あります。たとえば、「源泉徴収の区分(甲欄・乙欄)」「主要な所得控除の申告漏れ」などが考えられます。

見落としでインパクトが大きいのが、源泉徴収の適用区分です。「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している給与は源泉徴収税額表の甲欄、提出がない給与は乙欄で計算されます。乙欄は一般に税額が重くなりやすいので、申告書の提出漏れや、2か所給与で従たる給与として乙欄適用になっていると、月々の所得税が増えて手取りが減ります。

控除の「提出漏れ」も12月に表面化しやすい典型です。生命保険料控除などは、控除を受けるために支払額を証明する書類(控除証明書等)が必要で、年末調整で出し忘れるとその年の給与側では控除が反映されません。

あまり多くはないですが、確定拠出年金(企業型DC)のマッチング拠出を行っている方が掛金額を変更した場合や、給与連動型の掛金設定をしている場合、12月の昇給や賞与に応じて控除額が変動することがあります。ほかにも、組合費・互助会費の年会費が、年末に一括徴収されている可能性もゼロではありません。」

12月に手取り減少を招く主な要因とは?

---12月の給与明細で手取りが急に減っていた場合、多くの人が見落としがちな項目や数字(例:社会保険料の改定、年末調整の還付額など)を具体的に教えてください。

柴田 充輝さん:

「年末調整といえば還付金をイメージする方が多いですが、実際には追加徴収となるケースも少なくありません。

たとえば、配偶者の年収が想定より増えて、配偶者控除・配偶者特別控除の適用区分が変わった場合です。また、扶養していた子どもがアルバイト収入などで123万円(令和7年からは所得要件が58万円以下=給与収入123万円以下に緩和)を超えた場合も同様です。令和7年は税制改正の影響が大きいため、例年以上に慎重な確認が求められます。

毎年9月に「定時決定」で社会保険料が改定されます。例えば、標準報酬月額が1等級(約2万円)上がると、健康保険料と厚生年金保険料を合わせて月額約3,000円から4,000円の増加となります。12月のタイミングでじっくりと給与明細を見て、手取りへの影響を実感する方も少なくありません。

なお、初年度の住宅ローン控除は確定申告が必要であり、年末調整では適用されません。「今年から住宅ローン控除が受けられるはず」と期待していたものの、12月の給与明細を見て還付がないことに驚くケースがあるかもしれません。

また、年末調整や社会保険料以外の要素で、シンプルに収入が減ったという可能性もあります。残業時間の減少によって収入が減少することもあるため、「控除」だけでなく「支給」の欄も確認してみてください。」

年末調整と社会保険料改定が12月の給与明細に与える影響

---12月の給与明細を受け取った会社員が、手取り減少の原因を正しく理解し、すぐに確認すべき項目や見逃さないための具体的なチェックポイントを教えていただけますでしょうか。

柴田 充輝さん:

「12月の給与明細を受け取った際、手取り減少の原因を正確に把握しましょう。勤務先によって給与明細のフォーマットは異なりますが、12月と11月の明細を並べて「雇用保険」「所得税」「社会保険料」「年調過不足(過不足税額)」などの項目を確認してみてください。

通常、12月の所得税は年末調整の結果を反映しており、以下のいずれかになります。

・還付の場合:所得税がマイナス表示、または「年調還付金」として別記載
・追加徴収の場合:所得税が通常月より大幅に増加、または「年調徴収金」として記載

追加徴収となっている場合は、提出した「給与所得者の扶養控除等申告書」や「保険料控除申告書」の内容を再確認しましょう。

社会保険料(健康保険・厚生年金)は、9月改定の影響を12月になって実感することが多いため、8月の給与明細と12月の明細で、健康保険料・厚生年金保険料を比較します。

税金の仕組みを理解することも有効な対策です。給与所得者の多くは、税金や社会保険料が給与から自動的に天引きされる「源泉徴収制度」に慣れています。自分がいくら納税しているのか、なぜその金額なのかを深く考える機会が少ないのが実情です。

会社員や公務員の中には、一度も確定申告をしたことがないという方も多いでしょう。しかし、住宅購入時の住宅ローン控除、出産・育児に関する給付金、退職金の課税方式など、人生の節目には税金の知識が必要になる場面が数多くあります。

12月の給与明細を詳しく確認する作業は、税金や社会保険の仕組みを学ぶ絶好の機会です。「なぜこの金額が引かれているのか」を一つずつ調べることで、自然と制度への理解が深まります。

特に昨今は物価上昇だけでなく,税金や社会保険料の負担が重くなっており、これからも続くと考えられます。受け身ではなく、自分の収入と税金を主体的に管理する意識を持つことが、これからの時代を生き抜く上で欠かせない力となるでしょう。」

12月の給与明細を読み解くことで得られる知識とメリット

給与所得者の多くは源泉徴収制度に慣れており、「いつの間にか引かれている」感覚がありますが、自分がいくら納税し、なぜその金額なのかを理解する機会は案外少ないものです。

12月の給与明細を通じて税金や社会保険の仕組みを学ぶチャンスとして活用しましょう。

特に近年は物価上昇とともに税金や社会保険料の負担が増えており、これからも続くことが予想されます。自分の収入と税金を主体的に管理する意識を持つことが、安心して生活していくために必要不可欠な力になるでしょう。


監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。


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