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「禁止しています」JALが“異例の注意喚起”。軽い気持ちで航空券を譲った人の“末路”…弁護士「詐欺罪が成立する可能性も」

  • 2025.12.15
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

急な用事で旅行に行けなくなったとき、「もったいないから友人に譲りたい」と思ったり、SNSで「定価以下で譲ります」という魅力的な投稿に惹かれたりすることはありませんか?

一見、誰も損をしない便利な取引に見えますが、実は航空券の転売や他人への譲渡は、多くの航空会社で固く禁じられています。

2025年12月10日(水)には、JAPAN AIRLINES【JAL】(@JAL_Official_jp)が「航空券の第三者への譲渡や転売」について異例を行い、話題となりました。

軽い気持ちで行った行為が、搭乗拒否や最悪の場合は「犯罪」として扱われる可能性もあるのです。この記事では、なぜ航空券の他人への譲渡がNGなのか、その法的根拠とリスクについてベリーベスト法律事務所 齊田貴士 弁護士に詳しく伺いました。

 

なぜ「譲渡」すら禁止? 航空会社の規約が有効な理由

---2025年12月10日(水)、JAL(日本航空)公式アカウント(@JAL_Official_jp)による以下の投稿が大きな話題となりました。

【ご案内】
日本航空では、航空券の第三者への譲渡や転売を禁止しております。 ご搭乗の際、航空券のお名前とご搭乗者さまが同一人物でないことが確認された場合、ご搭乗いただくことができませんのであらかじめご了承ください。

---航空券の譲渡・転売を禁止する航空会社の約款や規約は、法的にどのような根拠に基づいて有効性が認められているのでしょうか?

齊田貴士 弁護士:

「憲法(22条1項)における「経営の自由」や、民法(521条・522条)の「契約自由の原則」に基づき、航空会社は「誰とどのような契約を結ぶか」を決める権利を持っています。つまり、航空会社側が「契約者本人以外は乗せない」というルールを定めることは、法的に認められた権利なのです。

また、航空機という性質上、万が一の事故やトラブルの際、誰が乗っているかを正確に把握することは極めて重要です。保安上の理由から「乗客の個人情報を正確に管理する」ことには強い合理性があるため、本人以外の搭乗を拒否する規約は有効と考えられます。」

バレたら搭乗拒否だけじゃない? 詐欺罪に問われる可能性も

---航空券の転売や譲渡を禁止する規約があるにもかかわらず、実際に行ってしまった場合、利用者にはどのような法的リスクや不利益が生じる可能性があるでしょうか?

齊田貴士 弁護士:

「航空券の転売や譲渡を禁止する規約があるにもかかわらず実際に行ってしまった場合、もっとも可能性があるのは『利用拒否(搭乗拒否)』になろうかと思います。これに対し、規約に違反しているのは利用者側なので、航空会社に対して文句を言う権利はありません。

なお、転売や譲渡禁止に違反した場合、当該行為によって航空会社に実損は生じていないため、損害賠償請求されるリスクは低いかと思います。(規約で違約金などが記載されていれば請求される可能性もあります。)

例えば、利用拒否(搭乗拒否)に対し、文句を言ったり、無理やり搭乗しようとしたりして、航空会社の業務を妨害し、それによって航空会社に損害が発生した場合には、損害賠償請求されたり、通報され刑事事件として立件されたりする可能性もあると思います。

また、あらかじめ他人を搭乗させる目的で航空券を購入した場合(転売や譲渡目的の人も該当する場合があると思います。)、航空会社に対する詐欺罪が成立し、刑事罰を受ける可能性があるので注意が必要です(最高裁第一小法廷平成22年7月29日決定)。」

トラブル回避の鉄則は「正規ルート」での購入

---利用者が予約時や搭乗前に気をつけるべき具体的なポイントを教えていただけますでしょうか。

齊田貴士 弁護士:

「航空券の転売、譲渡を防ぐため、利用者が予約時や搭乗前に気を付ける点としては、端的に、他人名義の航空券を買わない、利用しない、正規のルートで航空券を予約・取得するという点になろうかと思います。」

「軽い気持ち」が命取りに。ルールを守って安全な空の旅を

「安く手に入るから」「もったいないから」という軽い気持ちで他人名義の航空券を利用することは、搭乗拒否に遭うだけでなく、場合によっては詐欺罪という重大な犯罪リスクを負う行為であることが分かりました。

航空会社が転売・譲渡を禁止している背景には、私たちの安全を守るという合理的な理由があります。

目先の利益にとらわれず、必ず「正規ルート」で自分名義のチケットを手配すること。それが、トラブルなく安心して空の旅を楽しむための唯一かつ最大の自衛策と言えるでしょう。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。


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