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海外で「集団万引き」の高校生…SNSで物議「大きな代償」「進学はどうなる」→日本で罰せられる?【法律のプロが解説】

  • 2025.12.15
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

インドネシアのバリ島で、修学旅行中と思われる日本の高校生らが万引きをする様子の動画がSNS上で拡散し、話題となりました。

海外で起きた日本人の万引き事件。日本で処罰される可能性はあるのでしょうか?特に、未成年の高校生が関与している場合、どんな対応がなされるのか気になる方も多いはずです。

国外で起きた犯罪に日本の刑法が適用される「国外犯規定」や、未成年者への処遇を定める少年法の視点から、事件の取り扱い方や対応の流れについて、アディーレ法律事務所名古屋支店 正木裕美 弁護士に詳しくお伺いしました。

国外犯規定とは?海外での万引きも日本の刑法で処罰される?

---高校生が海外で集団万引きをした場合、日本の刑法における「国外犯」の規定により、帰国後に日本で処罰される可能性はどの程度あるのでしょうか?

正木裕美 弁護士:

「日本の刑法では、日本国内で犯した犯罪だけでなく、日本人が海外で犯した一定犯罪に対しても日本の刑法を適用することを定めています。これが「国外犯」と呼ばれている規定の一つです。

万引きは窃盗罪に該当しますが、先ほど述べた国外犯の規定には窃盗罪も含まれています。したがって、日本人が海外で起こした窃盗事件であっても日本で処罰される可能性があるのです。

また、刑法上、海外で確定判決を受けたとしても、同じ事件について日本国内で更に処罰を行うことを禁止されていないので、刑の減刑や免除はありえるものの、原則として日本での処罰は可能です。

もっとも、日本の捜査機関の捜査権は国内にしか及ばないため、犯罪事実を裏付ける証拠は海外捜査機関の協力なくして集めることは困難ですし、当該国で立件しない事件を日本で事件化する可能性は低いでしょう。

今回の事件は、研修旅行中の高校生らによる犯行だったとのことで、未成年者の可能性が高いと思われます。未成年者に対する犯罪について日本で扱う場合は、少年法に基づく少年事件として扱われますので、原則として、刑事手続ではなく、家庭裁判所の調査や審判によって処分が決められることになるため、刑罰が与えられる可能性は低いと思われます。

これは、未成年者は人格成長の途中で未熟な存在で更生する可能性が高いと考えられるので、刑罰ではなく適切な教育や処遇によることとされているためです。」

未成年者の海外窃盗はどう扱われる?少年法の役割とは?

---未成年者が海外で万引きをした場合、少年法の影響はありますか?

正木裕美 弁護士:

「あります。

先ほどのべたとおり、窃盗罪には国外犯規定がありますので、日本人が海外で犯した窃盗事件につき日本の刑法が適用できます。そして、未成年者による犯行の場合、少年法に基づく少年事件として扱われることになりますので、刑罰ではなく、処分(不処分、保護観察、少年院送致など)を受けることが原則です。

ただし、手続きの途中で20歳を超えた場合、家庭裁判所による調査の結果悪質な事件であり刑罰を科すことが相当だと判断されて検察へ事件が送られた場合(逆送)は刑事事件として扱われるため、有罪となれば刑罰で処罰されることになります。

いずれにせよ、未成年が海外で窃盗行為を行った場合は、帰国後であろうと、少年法による少年事件や刑事事件として扱われ、処分や処罰を受ける可能性はあります。」

海外での未成年万引き事件、どんな対策が必要?弁護士のサポートも重要

---海外で万引きをしてしまった高校生やその保護者が、帰国後すぐに取るべき「最優先の初動対応」について具体的に教えていただけますでしょうか。

正木裕美 弁護士:

「まずは弁護士に相談してアドバイスを受けることが望ましいと思います。

窃盗罪は、日本でも「10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」と軽くない犯罪です。今回のように学校行事中に起こした事件であることが明確で、それがSNSで拡散してしまっている状況であれば、学校や一緒に万引きした高校生らと連携を取って対応することが多いと思いますが、初動対応の遅れ、SNSの削除により証拠隠蔽が疑われるなど、さらに騒動が大きくなってしまったようにも思われます。

捜査が進むような状況なのかわからず不安なことも多いと思いますし、事件対応や停学・退学回避などに関する学校側との交渉、SNS拡散に対する対応など多方面にわたる対応が考えられます。
そして、被害者がおり実際に被害が発生していますので、可能であれば謝罪や被害弁償も検討されるでしょう。被害回復の意味だけではなく、高校生本人が更生に向けて自らや自らの行いとしっかりと向き合い、内省を深めることにも繋がります。本人の反省度合いや保護者を含めた更生への取り組みなどは少年審判の中でも考慮されることになりますので、一連の対応は弁護士と相談しながら進めるのがよいでしょう。

なお、学校行事と関係がない事件の場合でも、学校へと知られると停学や退学などの可能性がありますので、事件化したときは捜査機関や家庭裁判所に学校への連絡を避けてもらうよう弁護士が交渉する場合もあります。」

未成年の海外窃盗事件は法的措置と本人の更生支援が鍵

今回の件からわかるのは、海外での未成年による万引き事件も日本の「国外犯規定」に基づき処罰対象となり得ること、そして未成年には少年法による柔軟な対応が求められることです。

事件後の対応では、適切な法的手続きに加え、本人の反省と更生に向けた支援が非常に重要になります。また、SNS拡散による影響や学校との関係調整など、多角的な対応が必要です。

まずは経験豊富な弁護士に相談し、早期に適切なアドバイスを受けることで、本人の将来を考えた最善の解決を目指しましょう。


監修者:アディーレ法律事務所名古屋支店 正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属)

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アディーレ法律事務所名古屋支店 正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属)

一児のシングルマザーとしての経験を活かし、不倫問題やDV、離婚などの男女問題に精通。TVでのコメンテーターや法律解説などのメディア出演歴も豊富。コメンテーターとして、難しい法律もわかりやすく、的確に解説することに定評がある。
アディーレ法律事務所は、依頼者が費用の負担で相談をためらわないよう、弁護士費用で損をさせない保証制度(保証事務所)を導入しています。「何もしない」から「弁護士に相談する」社会を目指しています。

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