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「組織犯である可能性が高い」元警察官が明かす、都内で「水道メーター」が狙われるワケ

  • 2025.11.21
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出典元;photoAC(画像はイメージです)

東京都都内の集合住宅で、水道メーターが大量に盗まれるという異例の事件が相次いでいます。東京都水道局は10日、公式Xアカウント(@tocho_suido)で「水道メーター盗難が多発しています」と注意喚起を発信。

住民の生活に直結する設備が狙われたことから、SNSでは「なぜ水道メーター?」「うちも狙われるのでは…」と不安や疑問の声が広がっています。

なぜ、水道メーターという生活インフラが突然盗難の標的になっているのでしょうか。犯人の目的は何なのか、そして被害に遭ってしまった場合、生活にはどんな影響が生じるのでしょうか。

今回、元警察官で防犯アドバイザーとして活動するりょうせいさん(@ryosei_bouhan)に、水道メーターが狙われる理由や犯罪の裏側、さらに住民が今日から実践できる具体的な防犯策まで詳しく教えてもらいました。

「金属としての価値」が犯行の大きな動機に

そもそも、水道メーターがなぜ狙われるのでしょうか。

りょうせいさんは、水道メーターの盗難が「金属としての価値」を目的とした犯罪であると説明します。

水道メーターは黄銅(真鍮)でできており、スクラップ市場では一定の価格で取引されるため、犯人にとって効率のよい窃盗対象になるそう。

過去には金属価格の高騰に伴って、銅線やマンホール、農機具が全国的に盗まれたことがあり、水道メーターもその延長線上にあるというのです。盗まれたメーターはスクラップとして転売されるほか、海外で修理され再利用されるケースもあるなど、「換金できる資源」として扱われてしまうことが犯罪の背景にあります。

さらに被害が出ると、水が突然止まったり、配管の破損が原因で漏水やサビの混入が生じたりと、住民の生活に直接影響が及ぶこともあります。

「なぜ盗まれるのか」を知ると同時に、「盗まれると困るもの」であるという認識を持つことが必要だと強調します。

まとまった量を一度に盗む“組織犯”の可能性

今回は、都内の集合住宅で相次いで盗難事件が発生しました。これらの犯行は個人犯ではなく、組織犯である可能性は高いのでしょうか。

りょうせいさんは、こうしたケースを見る限り「個人の単独犯というより、複数人で計画的に動く組織犯である可能性が高い」と語ります。

まとめて盗むことで効率を上げ、換金ルートも確立していることが多く、水道メーターのように軽くはない金属を複数持ち去るには複数人での作業が前提になるため、偶発的な犯行とは考えにくいといいます。

また、集合住宅が集中的に狙われた理由として、メーターが外から簡単に触れる位置にあり、同じ構造のものが規則的に並んでいるため、短時間で大量に盗むことが可能だったのではないか、とりょうせいさんは推測します。

さらに夜間や早朝など住民の出入りが少ない時間帯であれば、作業員を装ったとしても不審に思われにくいという特徴があります。

りょうせいさんは、これまでの窃盗事件を振り返りながら「犯人はとにかくリスクを下げ、効率を上げることを重視する」と語り、今回のケースも“盗みやすい構造の住宅が狙われた”可能性が高いと指摘します。

市民ができる防犯は「完全防止ではなく、リスクを下げること」

では、水道メーターの盗難を市民はどこまで防ぐことができるのでしょうか。

水道メーターは水道局からの貸与品であり、個人が勝手に施錠したり覆いを設置したりすることはできません。この点から、りょうせいさんは「盗難を完全に防ぐことは難しい」と認めます。しかし、その上で「リスクを下げるために住民ができることは確実にある」と強調します。

まず、不審な作業員を見かけたら必ず声をかけて確認することが重要だといいます。本物の作業であれば、事前に管理会社から告知されているはずで、少しでも不自然に感じた場合は迷わず警察に通報するべきだと強調します。

また、住民同士が日頃から挨拶を交わし、顔見知りになることで「いつもと違う人」に気づきやすくなります。こうした小さなつながりが、犯人の警戒を高める大きな抑止力につながるそうです。

さらに、メーター周辺の変化に注意しておくことも大切だといいます。蓋のズレ、工具の跡、周辺の物の移動、水が急に止まるなど、日常の違和感が防犯のきっかけになります。万が一水が止まった場合は、すぐに水道局へ連絡することで早期発見につながると説明します。

そして、何より重要なのは住民同士の情報共有だといいます。犯人にとって“人の目”は最も嫌う存在であり、管理会社とも連携しながら異変を見逃さない体制づくりが、集合住宅全体の防犯力を高める鍵になると語りました。

「気づく姿勢」と「つながり」が犯罪への大きな抑止力に

水道メーターの盗難は、単なる金属窃盗ではなく、住民の生活を直撃する深刻な被害です。

構造上、防ぎきれない部分もあるからこそ、りょうせいさんが語るような「気づく姿勢」と「つながり」が、犯罪への大きな抑止力になります。

日常の中にほんの少しの警戒心を持つことで、被害のリスクを確実に下げることができるのです。集合住宅にお住まいの方だけでなく、一人ひとり心がけるようにしましょう。


監修者:りょうせい(りょうせい 元生活安全課

元警察官(警察歴10年)。生活安全課で行方不明やDVなどの人身事案を担当し、防犯の広報や啓発活動にも携わる。
現在は防犯アドバイザーとして活動し、Xや音声配信(StandFM)を通じて、日常生活に取り入れやすい防犯の工夫を発信している。


参考:「東京都 水道・下水道」公式X(https://x.com/tocho_suido/status/1987821832909570275?s=20



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