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「警察は呼ばないで、5万円払うので…」事故相手から"思わぬ提案"。弁護士が警告する「その場で示談」の末路

  • 2025.11.25
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

軽い追突事故に遭った直後、相手から突然こう言われたら、あなたはどうしますか?

「警察は呼ばないで。修理代として5万円払うので、ここで示談にしませんか?」

一見すると、面倒な手続きを避けられて早く解決できそうに思えますが、実はこの提案には大きな落とし穴が隠れています。SNSでも「その場で示談したら大変なことになった」という後悔の声が後を絶ちません。

そこで今回は、事故現場での「警察を呼ばないで」に潜むリスクと、正しい対処法について、今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

「警察を呼びたがらない」相手…何を隠している?

交通事故が起きたら、まず警察に通報するのが法律で定められた義務です。それなのに、なぜ相手は「警察を呼ばないで」と言ってくるのでしょうか?

実は、その背景には深刻な事情が隠れている可能性が高いのです。

---軽い追突事故などで、相手から「警察を呼ばずに、ここで示談で済ませませんか?」と持ちかけられるケースがあります。まず、相手が「警察を呼びたがらない」背景には、どのような法的な事情が隠れている可能性が考えられますか?

寺林弁護士:

警察への通報を避けようとする相手には、以下のような事情が隠されている可能性が考えられます。

1. 飲酒運転・薬物使用

警察を呼べば呼気検査や身体検査が行われ、飲酒運転や薬物使用が発覚するリスクがあります。これは刑事罰の対象であり、免許取消や懲役刑の可能性もあるため、必死に回避しようとする傾向があります。

2. 無免許運転・免停中の運転

免許を持っていない、あるいは免停・取消中である場合、事故を起こすと道路交通法違反として重い処分が科されます。そのため、事故の発覚自体を避けようとする動機になります。

3. 自賠責保険・任意保険の未加入

自動車を運転する際には自賠責保険への加入が義務ですが、未加入であれば刑事罰(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)の対象です。任意保険にも未加入であれば、損害賠償能力が乏しく、後のトラブルを避けるために現場での示談を望むことがあります。

4. 過去の違反歴が多い・累積点数が危険水域

事故を起こして通報されれば、違反点数が加算され、免停・取消の可能性が高まる人もいます。そのため、「これ以上点数を増やしたくない」という理由で通報を避けることがあります。

5. ひき逃げや当て逃げを未遂しようとしていた

事故直後に一度逃げようとしたが、目撃者や被害者に止められた場合、「通報されるとひき逃げ未遂がバレる」という恐れから、示談を持ちかけてくることがあります。

6. 勤務中の事故で会社に知られたくない

業務中の事故であれば、会社に報告義務があるため、処分や懲戒を恐れて通報を避けるケースもあります。

つまり、「警察を呼ばないで」という提案の裏には、相手にとって都合の悪い事情が隠れている可能性が極めて高いということです。

その場で示談に応じたら…待ち受ける「末路」

では、もし相手の提案に応じて、警察に届け出ずにその場で示談してしまったら、どうなるのでしょうか?

---この提案に応じてしまい、警察に届け出ず、その場で現金や口約束による「示談」を成立させてしまった場合、被害者側が被る法的リスクは何でしょうか?

寺林弁護士:

このような「その場での示談」に応じてしまい、警察に届け出をしなかった場合、被害者側が被る最大の法的リスクは、自動車保険(特に任意保険)による補償を受けられなくなる可能性があることです。具体的には、以下のようなリスクが生じます。

1. 事故証明がないと保険が使えない

任意保険(車両保険・人身傷害保険・対物賠償など)は、原則として「事故証明」が必要です。警察に届け出ていない場合、事故証明が発行されず、保険会社が事故の存在を認定できないため、保険金が支払われない可能性があります。

2. 口約束は法的拘束力が弱く、後から反故にされるリスク

その場で「5万円払う」と言われて現金を受け取っても、示談書がない場合は証拠が不十分です。相手が後から「そんな約束はしていない」と主張すれば、法的に争うことが困難になります。

3. 後遺症や修理費の増加に対応できない

事故直後は軽傷・軽損と思っていても、後から症状が悪化したり、修理費が高額になるケースがあります。しかし、警察に届け出ていないと、加害者の責任を追及する法的根拠が弱くなり、追加請求が困難になります。

4. 加害者が虚偽の身元情報を伝えていた場合、追跡不能に

警察を呼ばないと、相手の身元確認が不十分になりがちです。その場では誠実そうでも、後から連絡が取れなくなり、泣き寝入りになるリスクがあります。

このように、「その場で示談」は、一見すると早く解決できそうに見えて、実は被害者にとって大きな不利益をもたらす可能性が高いのです。

「絶対にすべきこと」と「絶対に言ってはいけない一言」

では、事故に遭ったとき、被害者はどう対応すべきなのでしょうか?

---どれほど軽微な事故であっても、被害者が法的に「絶対にすべきこと」と、示談に関して「絶対に言ってはいけない一言」を教えてください。

寺林弁護士:

被害者が「どれほど軽微な事故でも絶対にすべきこと」

なんと言っても、警察への通報(事故届出)と事故証明の取得です。

事故の大小にかかわらず、必ず警察に連絡し、事故証明を取ることが法的・保険的に不可欠です。事故証明がなければ、任意保険の適用が受けられない可能性が高く、後の損害賠償請求が困難になります。

通報は、被害者自身の権利保護と、将来のトラブル回避のための最低限の備えとなります。

その場の示談で「絶対に言ってはいけない一言」

それは、「じゃあ、今回はこれで終わりにしましょう」です。

この一言は、法的に「示談成立」とみなされる可能性があり、後から追加請求や責任追及ができなくなるリスクがあります。

特に、口頭のみで金銭の授受があった場合、「終わりにする」と言ってしまうと、相手に免責を与えたと解釈されかねません。示談をする場合は、必ず書面(示談書)を作成し、内容を明確にすることが原則です。

「面倒だから…」が取り返しのつかない後悔に

事故に遭ったとき、「大した事故じゃないし、警察を呼ぶのも面倒だな」と思ってしまう気持ちはわかります。相手が丁寧に謝罪して現金を差し出してくれば、「この人は誠実そうだし、信じてもいいかな」と感じるかもしれません。

しかし、その判断が、後に大きな後悔を生む可能性があるのです。

事故に遭ったら、必ずやるべきこと

  1. すぐに警察に通報する(110番)
  2. 事故証明を取得する(後日、警察署で手続き)
  3. 相手の身元を確認する(免許証、車検証、保険証券)
  4. 現場の状況を記録する(写真・動画撮影)
  5. 保険会社に連絡する(自分の保険会社にも必ず連絡)

絶対にやってはいけないこと

  • 警察を呼ばずにその場で示談する
  • 「終わりにしましょう」と口約束する
  • 相手の身元確認を怠る
  • 事故証明を取らない

どんなに軽微な事故でも、後から思わぬトラブルに発展する可能性があります。「面倒だから」という理由で正しい手続きを怠ると、結果的にもっと大きな面倒とリスクを抱えることになるのです。

もし事故に遭ってしまったら、相手がどんなに丁寧にお願いしてきても、必ず警察に通報してください。それがあなた自身を守る、最も確実な方法なのです。


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