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お酒を飲まないのに肝臓がフォアグラ状に…「脂肪肝になりやすい人」が摂りすぎている2つの栄養素

  • 2025.10.30

世界的に増加傾向にある「脂肪肝」。日本では、お酒を飲まず、やせているのに脂肪肝になる人が増えている。肝臓専門医であり、新百合ヶ丘総合病院消化器内科の今城健人医師は、「糖質や脂質の多い食事や運動不足など、日々積み重なる生活習慣の乱れが肝臓に脂肪をため込む」という――。

まな板の上にフォアグラ
※写真はイメージです
フォアグラのように白くなる脂肪肝

肝臓に脂肪がたまった状態の「脂肪肝」。これまで脂肪肝は、さほど重大な病気とされていませんでした。しかし近年、さまざまな病気のリスクを高めることがわかり、世界的に危機感を持たれ始めています。

世界の調査では、1999~2005年の脂肪肝患者は成人の25.3%だったのに対し、2012~2017年では33.9%となり、増加傾向にあります(Jie Li, FujiiH, Jun DW, et al. Lancet Gastro 2019)。

特に問題視されているのが、お酒を飲まないやせ型の人に脂肪肝が増えているという事実です。「肝臓はお酒の飲み過ぎで悪くなる」「脂肪肝は太った男性がなるもの」というイメージを持っている人も多いでしょう。

脂肪肝には種類があり、飲酒量によってアルコール性か非アルコール性かに分類されます。お酒を飲まない人の脂肪肝を、「MASLD(マッスルド・代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」といい、2023年の調査では、世界で成人の25.8%、つまり約4人に1人がMASLDであると報告されています(Younossi et al. Hepatology 2015)。

脂肪肝は、生活習慣の乱れにより肝臓の細胞に中性脂肪がたまって起こります。脂肪が細胞の核を圧迫し、脂肪滴と呼ばれる透明な水滴がたまったように見えるのが特徴。健康な肝臓の細胞は赤いのに対し、脂肪滴が増えるとまるでフォアグラのように全体的に白っぽくなっていきます。

【図表】健康な肝臓と脂肪肝
資料提供=今城健人医師

病理学的には肝臓の5%以上に脂肪の沈着があると脂肪肝と診断されますが、腹部の超音波検査でわかるのは、30%程度になってから。5~30%にあたる「隠れ脂肪肝」の成人も少なくありません。

男性は40~60代の中高年に多く、女性は閉経後に増える傾向にあります。これは、女性ホルモンのエストロゲンが、コレステロールや中性脂肪をたまりにくくする働きがあるから。ホルモンの恩恵がなくなると、肝臓に脂肪がつきやすくなるため、閉経後は特に注意が必要です。

糖質・脂質の多い食生活が肝臓に脂肪をため込む

脂肪肝の大きな原因が、食生活です。炭水化物や甘い物などに含まれる糖質や、揚げ物などの脂質の多い食事を日常的に続けると、エネルギーとして消費しきれず、体内で余ってしまいます。その余剰エネルギーが、中性脂肪に合成されて、肝臓に蓄積していくのです。

また、果物や甘い清涼飲料水には、多くの果糖(フルクトース)が含まれています。果糖は糖質の中でも吸収がすばやく、肝臓に負担をかけるうえに、腸のバリア機能を壊すといわれています。そのため腸からバクテリアが侵入し、肝臓が炎症を起こしやすくなるという報告があります。

運動不足や長時間のデスクワークも、食事で摂取したエネルギーがなかなか消費されないため、脂肪肝のリスクを高めます。夜勤のあるシフトワーカーにも脂肪肝患者が多いことがわかっていて、睡眠不足や夜遅い時間の食事、不規則な生活も関連しています。

日本人は遺伝子の変異で「やせ型脂肪肝」になる人が多い

脂肪肝は気づかないまま放置しているとじわじわと肝臓の炎症が進み、5~10年ほどで線維化が起こります。肝臓自ら脂肪のたまった細胞を自壊したり、腸管から炎症が起こったりして、柔らかいフォアグラ状から細胞が徐々に硬くなっていきます。さらに5~10年経過すると肝硬変、そこから約10年で、割合は少ないですが肝臓がんへと進行します。

線維化や肝硬変への進行は個人差があり、脂肪肝の悪化には、「PNPLA3遺伝子」という遺伝子も関係していると考えらえています。日本人は、このPNPLA3遺伝子の変異がある人が多いことがわかってきました。欧米人と比較すると、お酒を飲まない「やせ型脂肪肝」が多く、肝硬変になる確率が高いとして、研究が進められています。

太り過ぎの男性と鍛えている男性の腹囲
※写真はイメージです

みなさんがご存じのとおり、肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、ちょっとのダメージでは症状は現れません。脂肪肝や線維化の段階では、ほとんどの人が無症状です。線維化が進行して肝硬変となり、腹水や黄疸が出て初めて病院を受診する人もいます。そうなると治療も困難になります。だからこそ、年1回の健康診断は必ず受けたほうがいいでしょう。

脂肪肝を早期に発見するには、血液検査の結果を確認することが大事。健康診断結果の「ALT」をチェックしてみてください。ALTは、肝臓がダメージを受けているほど数値が上がります。「ALT30以上」なら脂肪肝の可能性があります。

血液検査のほかには、健康診断や人間ドックで、肝臓の脂肪の付き具合がわかる腹部超音波検査を追加すると安心です。また、MRIで肝臓の脂肪量と肝臓の硬さがわかる脂肪肝ドックは、さらにくわしい肝臓の検査が可能です。肥満や糖尿病など生活習慣病を指摘された人は、医療機関でくわしく検査を受けることをおすすめします。

1日に飲んでもいい缶ビールの本数

肝臓の脂肪は、食生活を変えると落ちていきます。ポイントは、肉料理より魚料理を選ぶこと。地中海で食べられているような魚や野菜をふんだんに使った食事がおすすめです。DHA・EPAなどの良質な脂を含んだ魚は、血液をサラサラにして肝臓の脂肪代謝を促進します。

運動は、有酸素運動と筋トレの両方を組み合わせるのが理想的。忙しくてどちらかしかできない場合は、男性は糖や脂質を効率よく燃やす有酸素運動、女性は筋肉量を増やす筋トレを中心に行ってください。筋肉は、糖や脂質の貯蔵庫になります。筋肉が多いほうが、脂肪が余りにくくなり肝臓への脂肪蓄積を防ぎます。短い時間でも良いので運動する習慣を持ちましょう。

もちろん、アルコールの量にも気をつけます。アルコール性脂肪肝か、非アルコール性脂肪肝かは、週に飲むお酒の量によって決まります。どちらであっても、飲み過ぎるとアルコール分解で肝臓に相当な負担をかけます。500mLの缶ビールでアルコール量は約20g。飲んだとしても1日缶ビール1本に抑えましょう。

ビールで乾杯
※写真はイメージです

「休肝日を設けているから大丈夫」という人がいますが、それ以外の日で大量に飲んでいては意味がありません。一度に飲む量が多いと、肝臓を攻撃する因子が一気に増えて細胞が壊れやすくなると考えられています。肝臓を労わるためにも、深酒はNGです。

脂肪肝は、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のほか、心筋梗塞、脳梗塞など、さまざまな病気につながります。お酒を飲まない脂肪肝のMASLDは、乳がんや大腸・直腸がんといった肝臓がん以外のがんのリスクを上げることが報告されています(Kim GA,et al. J Hepatol 2018;68:140-146.)。

代謝や解毒など、生命維持の根幹となる働きを担う肝臓。アルコールを飲む、飲まないにかかわらず、休みなく働く肝臓を労わり、脂肪をためない生活を続けることが大切です。毎日の肝臓ケアで、病気を寄せ付けない健康な体を維持していきましょう。

構成・文=釼持陽子

今城 健人(いまじょう・けんと)
内科医
新百合ヶ丘総合病院 消化器内科 部長。福島県立医科大学 低侵襲腫瘍制御学講座 特任教授。金沢大学医学部医学科卒業後、平塚市民病院、横浜市立大学附属病院消化器内科勤務などを経て、現職。日本肝臓学会専門医、日本消化器病学会専門医。肝臓疾患や、非アルコール性脂肪肝疾患診察、肝細胞癌治療を得意とする。

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