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新築戸建てを購入も「夏は快適だったのに…」数ヶ月後、設計時にケチった30代夫婦の末路【一級建築士は見た】

  • 2025.10.9
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出典元;photoAC(画像はイメージです)

「夏は快適だったのに、冬はリビングで息が白くなります…」
Bさん(30代・夫婦+子ども1人)は、2年前に念願の注文住宅を建てました。

設計時、営業担当者から「南向きは暑くなるから、北向きリビングが人気ですよ」と勧められたといいます。

冬のリビングが寒さ地獄に

日射を避けられて夏は涼しい――その言葉を信じ、北向きに大きな吹き抜けと掃き出し窓を配置。
「少しでもコストを抑えたい」と、窓は安価なアルミサッシのシングルガラス、断熱材も最も安い薄型タイプを選びました。

完成直後の夏は確かに快適。
ところが、冬を迎えた途端、その家は“想像を超える寒さ地獄”に変わったのです。
「朝起きてリビングに行くと底冷えして、エアコンを入れても全然暖まらない。家の中なのに手がかじかむほどでした。」

“北向き吹き抜け”の構造的な落とし穴

Bさん宅がここまで寒くなった原因は、間取りと断熱性能のミスマッチにありました。

  • 吹き抜けで暖気が上に逃げる
  • 北側リビングのため太陽の熱がほとんど入らない
  • 大きな掃き出し窓から熱が大量に逃げる
  • アルミサッシが外気の冷たさを室内へ伝える

さらに、コストを抑えるため断熱材を薄型に変更したため、外の冷気が壁を通して室内に伝わりやすい構造になっていました。
結果として、Bさん宅は「外気温とほぼ変わらないリビング」になってしまったのです。

“断熱をケチった家”の末路

Bさん夫婦は、寒さをしのぐためにエアコン2台をフル稼働し、さらにヒーターと電気カーペットも併用。
電気代は冬だけで月5万円を超えることもありました。

「夏は涼しい家でした。でも、冬の寒さは想像以上。エアコンを切るとすぐに冷えてしまうので、一日中つけっぱなしです。」

初期費用を抑えるために削った断熱性能が、毎月の光熱費という“隠れコスト”になって跳ね返ってきたのです。
「最初から断熱をしっかり入れていれば、こんなに電気代に悩まされることはなかったと思います。」

一級建築士が見る原因と対策

北向きリビングそのものが悪いわけではありません。問題は、“窓・断熱・循環”のバランスを欠いた設計にあります。

北向きの空間は、光がやわらかく反射するため落ち着いた雰囲気をつくれますが、日射による蓄熱効果が少ないため、設計段階での断熱対策が不可欠です。

寒さを防ぐための主な対策は次の通りです。

  • 高性能樹脂サッシ+トリプルガラスで窓からの熱損失を防ぐ
  • 断熱性能を確保し、外壁や天井の熱を逃がさない
  • 吹き抜け上部にシーリングファンを設けて暖気を循環
  • 高断熱の基礎断熱工法の採用

これらを組み合わせれば、北向きでも十分に暖かく快適な家は実現できます。
つまり、Bさんの家が寒かったのは「北向きだから」ではなく、「断熱を軽視した設計」だったのです。

“断熱をケチる家”が生む後悔

Bさんのように「見た目重視」「コスト優先」で断熱性能を削った家は、住み始めてから“極寒住宅”になるリスクがあります。
2025年4月からは、断熱等級4以上が義務化されます。これは、まさにこうした住宅の寒さ問題を防ぐための基準です。

“おしゃれな吹き抜け”や“開放的な窓”も、適切な断熱と気密があって初めて価値を発揮します。
Bさんは最後にこう語りました。

「デザインや立地より、“暖かい家で過ごせること”が一番の贅沢でした。家づくりのときにそのことに気づいていれば、冬の電気代に悩むこともなかったと思います。」

家は見た目ではなく、家の中の温度が暮らし心地を決める。
断熱を“ケチる”ことは、快適さを“削る”こと――。
Bさんの後悔は、これから家を建てる人にとっての大きな警鐘となるはずです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。