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都内ゲリラ豪雨で「タワマン2階浸水、1階は無事」なぜ?一級建築士が明かす“意外な落とし穴”

  • 2025.10.8
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

2025年9月、都内を襲ったゲリラ豪雨で衝撃的な現象が報告されました。一部のタワーマンションで「1階は無事なのに、2階だけが浸水した」

この信じられない事態がSNSで大きな話題となったのです。

高層階だから水害に強いはず、という従来のイメージを覆すこの現象に対し、「なぜ2階だけ?」「設計ミスでは?」といった驚きや疑問、憤りの声が多数見られました。

今回は、この不可解な「タワマン2階浸水の謎」について、住宅・不動産分野に10年以上携わり(※2025年10月時点)、建築基準や防災対策に精通するyukiasobiさんに、その構造的な原因と、住民やこれから購入を検討している方に向けて今すぐできる対策を詳しく伺いました。

「タワマン2階浸水、1階は無事」なぜ?

---今回、最も不可解な現象として「1階は大丈夫なのに、2階が浸水した」という報告が多数あがっています。建築構造上、どのようなメカニズムでこのような事態が発生するのでしょうか。ベランダや建築物内部の排水設備に原因があるのでしょうか。

タワーマンションでは、1階の上に広いテラスや共用スペースを設ける構造が多くあります。そこに大雨が降ると、排水口が落ち葉や土で詰まったり、雨水を流す配管が下水道の限界を超えて逆流したりして、2階レベルに水がたまることがあります。

その水が窓や出入口の敷居を超えて室内へ入り込み、2階だけが浸水するという事態につながるのです。

---豪華なエントランスや2階部分に設けられたテラスや植栽など、タワーマンション特有のデザインが、今回のような「上層階の浸水」リスクに繋がる側面はありますか。

豪華なエントランスや緑化されたテラスは魅力的ですが、広い平場を設けることで排水能力に負担がかかりやすくなります。排水口や非常用の水の逃げ場が十分に整備されていない場合、デザインが浸水リスクにつながることがあります。

---想定を超える降雨量だったことはもちろんですが、設計段階でこのような「建物上部での浸水」はどの程度予見されているものなのでしょうか。

設計時には想定降雨量に基づいて排水設備が計画されています。ただ、近年は想定を超える短時間豪雨が増えており、従来の前提を超えて水があふれるケースが起きやすくなっています。今後はより余裕を持った設計が求められます。

---併せて、エレベーターが停止する被害も多く見られました。これは地下ピットへの浸水が原因と思われますが、2階部分の浸水と関連している可能性はありますか。

多くの場合、エレベーター停止は地下や低層の機械室・ピットに水が入り込んだことが原因です。必ずしも2階の浸水と直結するわけではありませんが、大雨の中で複数の浸水経路が同時に作用することで被害が重なった可能性は考えられます。

既存の建物における対策は?

---すでにあるタワーマンションで、今回のような「2階部分の浸水」などを防ぐために、管理組合や保有者が優先的に点検・実施すべき対策は何でしょうか。

バルコニーやテラスの排水口を定期的に清掃することが第一歩です。管理組合は雨水管や桝の定期点検・清掃を行い、水が室内に入る前に屋外へ逃げる仕組みが機能しているかを確認する必要があります。

また、テラス出入口や共用廊下に簡易止水板を備えておくことも有効です。

---ハード面だけでなく、ソフト面(避難計画や情報伝達など)において「浸水は地上階だけの問題ではない」という前提で、管理組合が見直すべき点はありますか。

「浸水は地上階だけの問題だけではない」という認識を持つことが重要です。大雨警報や短時間大雨情報が出た際に、排水口の巡回や止水板の設置を即時に行うルールを作っておくと安心です。

情報伝達については、アプリや掲示板といったデジタル手段に加えて、紙の安否札や住民同士の声掛けを組み合わせることが、高齢者世帯には特に有効です。

住民・購入希望者が注意すべきポイントは?

---これからタワーマンションの購入や賃貸を検討している人が内覧などの際にチェックすべき「ゲリラ豪雨に対する脆弱性」のポイントを教えてください。

2階や低階層のテラスに排水口が十分にあるか、床に水を流す傾斜がついているかを確認するとよいでしょう。

---今回問題となった2階や低階層のバルコニー構造、窓サッシの高さなどで注意すべき点はありますか?

窓やサッシの敷居が低すぎないかも大事な視点です。また、電気室や非常用発電機が地下にあるか高い階にあるかによって、被害の出やすさが変わります。

---すでにタワマンに住んでいる方が個人で備えておくべきことは何でしょうか。特にベランダや窓際で、今すぐできる対策があればご教示ください。

ベランダやテラスの排水口を定期的に掃除し、植木鉢やデッキ材で塞がないようにすることが最も簡単で効果的です。大雨の予報が出たときには、簡易止水板や吸水土のうを窓際や出入口に設置すると被害を軽減できます。

また、家具や家電を直に床に置かないなど、日常の工夫も役立ちます。

今後の建築デザインのあるべき姿

---今回の一件は、多くの人に「タワマン=水害に強い」というイメージを覆す衝撃を与えました。今後、ゲリラ豪雨の頻発が予想される中で、都市部の集合住宅、特にタワーマンションの設計思想はどのように変わっていくべきだとお考えですか?

これまで「タワマンは高層だから水害に強い」と思われがちでしたが、実際には2階や低層部分で浸水が起こるリスクがあります。今後は、より大きな排水設備や非常時に水を外へ逃がすルートを設けること、サッシや出入口の立ち上がりを高くすること、電気設備を上層階に配置することなどが設計の標準になるべきでしょう。

---とても参考になりました。貴重な情報をありがとうございました。

「高層だから安全」では守りきれない住民の暮らし

今回の「2階だけ浸水」は、タワーマンションの構造的弱点を露呈させました。高層だから水害に強い、その思い込みはもはや通用しません。

yukiasobiさんが指摘するように、バルコニーやテラスの排水口を定期的に清掃するなど、日常的な対策が水害から暮らしを守る上でとても重要です。

すでに住んでいる方は管理組合と連携した点検・清掃体制の確立を。これから購入や賃貸を検討する方はハザードマップの確認とあわせて排水設備のチェックを忘れないようにしましょう。


取材協力:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。