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70歳男性客「お前はバカだ」40分間、密室で罵倒され続けるタクシー運転手。予想外の結末に「気持ち悪かったです」

  • 2025.10.11
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出典:photoAC(写真はイメージです)

多くの人の移動を支えるタクシー。その「密室」は、ときに理不尽な言葉の暴力で満たされることがあります。

都内エリアで4年半のキャリアを持つ現役運転手、Aさん(2025年10月時点)。これは彼が新人時代に経験した忘れられない「40分間の地獄」の記録です。

言葉の暴力を静かに受け止め続けた空間で、彼は何を目撃し、どんな教訓を得たのか。その重い真実を静かに語ってくれました。

「親が悲しむぞ」小さなミスから始まった、40分間の人格否定

Aさんが今でも鮮明に覚えているのは、運転手になって間もないころの出来事。当時はまだ運転にも接客にも余裕がなく、焦る気持ちを抱えながら日々走っていました。

「反対車線で手を挙げていた70歳くらいの男性客を、余裕がなくて通り過ぎてしまったんです」

そして次の瞬間、Aさんは予想もしない事態に巻き込まれることになります。

「赤信号で追いつかれ、乗せるなり説教が始まりました」

Aさんの声には、今もそのときの緊張が少し残っていました。

「中央区の八丁堀から世田谷までの40分間、『お前はバカだ』『親が悲しむぞ』「お前みたいな人間はクソだ』といった人格否定の言葉を浴びせ続けられたんです」

40分間、逃げ場のない車内。ミスへの指摘ではなく、人格への攻撃。想像するだけで息が詰まるような状況です。Aさんはその間、ひたすら耐えるしかなかったといいます。

ひたすら謝罪…無力だった当時。今なら言える「降りてください」

その当時、Aさんはどうしたのでしょうか。

「当時はただ『おっしゃる通りです…』と謝り続けることしかできませんでした」

新人でのお客様相手。どう対応すればいいのかわからず、ただ耐えるしかなかった。Aさんの言葉から、当時の無力感が伝わってきます。

タクシーの車内は「お客様が神様」になりやすい空間。閉ざされた密室で、上下関係が極端に生まれる瞬間。

「タクシー運転手って、社会的に見下されやすい職業なんです。だからちょっとしたきっかけで攻撃の対象になってしまう。あのときの心の傷は今でも完全に消えていません」

一呼吸置いて、Aさんは静かに言葉を続けました。

「でも、今同じことが起きたら、はっきりこう言います『お金は結構ですので、ここで降りてください』と。自分の心を守るためには、それしかないんです」

毅然とした言葉。それは、経験を積んだからこそ言える“覚悟”の一言でした。

後味の悪い結末と、タクシー業界が抱える構造的問題

Aさんの話には、もう1つ不可解な点がありました。

「不思議なことに、あれだけ罵倒されたのに、最後はひどく嫌な感じの終わり方ではなかったんです。それが余計に気持ち悪かったですね」

Aさんは苦笑しながらも、そのときの違和感を今も鮮明に覚えています。怒鳴り続けた男性は、目的地に着くと静かに降り、何事もなかったかのように料金を支払って去っていったそう。

「この経験を通じて、タクシー運転手という職業が、いかにカスハラ(カスタマーハラスメント)の標的になりやすいかを痛感しました。会社として明確な対処マニュアルもなく、結局は運転手1人で耐えるしかないのが現状なんです」

耐えるしかない。この言葉が、胸に重く響きます。

タクシーという仕事は公共の側面と個人の裁量に頼る側面を併せ持っています。乗客とのトラブルは外部から見えにくく、記録にも残りにくい。この「見えにくさ」こそがカスハラを助長する要因になっているのかもしれません。

サービスの向こう側にいる、1人の人間

今回のAさんの体験談は、単なる一個人の不幸な話ではありません。それは、サービスを「受ける側」と「提供する側」の歪んだ関係を映し出す鏡でもあります。

タクシーの車内は、ほんの数十分の「人と人の出会い」の場です。その関係を壊すのはたった一言の暴言。そして救うのも、たった一言の思いやりです。次に私たちが誰かのサービスを受けるとき、目の前の相手が、感情を持った1人の人間であることを決して忘れてはいけません。


取材協力:タクシー運転手Aさん
4年半のタクシー運転手経験を持ち、都内エリアで勤務している(2025年10月時点)


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