1. トップ
  2. 「茨城の龍ケ崎まで」往復料金は65,000円!?目的を聞くと…現役タクシー運転手が語る『忘れられない1日』

「茨城の龍ケ崎まで」往復料金は65,000円!?目的を聞くと…現役タクシー運転手が語る『忘れられない1日』

  • 2025.10.11
undefined
出典元;photoAC(画像はイメージです)

「茨城の龍ケ崎まで」突然のオーダー

その日、Aさんが乗客を乗せたのは都内の高級住宅街。車に乗り込んで来たのは、上品な雰囲気の若い女性でした。

Aさんは当時を振り返ります。

「今までで一番の長距離は、茨城県の龍ケ崎までの往復ですね。料金は65,000円になりました」

東京都心から茨城・龍ケ崎は直線距離にしておよそ40〜45km。普通に考えてもなかなかの距離です。ましてや往復ともなれば、ちょっとした小旅行。Aさんも最初は「一体どこまで行くのだろう」と思ったそうです。

「お客さんはご友人らしき方と電話をしていて『今から茨城まで行くんだよね』『電車わかんないからタクシーで』って話していました。聞いていて“すごいな”と。興味津々でしたね」

電車の乗り換えがわかりにくいからタクシーで茨城まで。確かに贅沢ではありますが、時間と手間を考えれば、選択肢として理解できなくもありません。しかし、Aさんが本当に驚いたのは、その「目的」でした。

驚きの目的は「猫」

茨城まで何をしに行くのか。仕事か、それとも親戚の家か。運転席で静かに想像を巡らせていたAさんでしたが、その予想は見事に外れます。

「なんと『ブリーダーから猫を買いに行くため』だったんです」猫を迎えに行くためのタクシー、なんとも微笑ましい理由です。

Aさんは続けます。「『電車の乗り換えが面倒だから』ということだったようですね。現地で30分ほど待って、帰りは小さなゲージに入った猫ちゃんが乗車しました」

行きは2人、帰りは2人と猫1匹。Aさん曰く「後にも先にもないであろう珍しい乗車体験」だったそう。

新しい家族を迎えに行く大切な1日に、タクシーが選ばれた。その理由には、移動の快適さだけではなく、大切な命を安全に運びたいという想いがあったのかもしれません。

運転手が常に気にする「ガスの残量」という現実

こうした長距離乗車は、実はそれほど珍しいものではないとAさんは言います。

「同僚には大阪まで行って14万円になった人もいますよ」

東京からおよそ400km離れた大阪。そんな長距離にも対応できる背景には、タクシー業界ならではの働き方に理由がありました。

「僕の勤務は『隔日勤務』といって、1回の乗務が約20時間。仕事が終わった日(明け番)と翌日が休みになるんです。僕の場合は週3日勤務で週4日休み。時間の自由度が高いので、ミュージシャンを目指している人なんかもいますよ」

時間の融通が利くからこそ、急な長距離依頼にも応えられるというわけです。ただし、「現実的な問題」も付きまとうといいます。

「あまりに遠方だと、会社に1度連絡をするルールがあります。それともう1つ、常に気にしているのが燃料。タクシーはLPGガスで走るのですが、地方に行くと24時間営業のスタンドが少ないんです。ガス欠になったら帰れませんから」

華やかに見える長距離タクシーの裏には、こうした現実的な心配事がありました。ロマンと現実、その両方を抱えながら、運転手たちは今日もハンドルを握っています。

「小さな劇場」一期一会のタクシー

一期一会の出会いを乗せて走るタクシー。それは単なる移動手段ではなく、ときに誰かの人生のワンシーンに立ち会う、小さな劇場のようです。

新しい家族を迎えに行く喜びの日。誰かの元へ急ぐ夜、あるいは人生の転機となる旅立ちの瞬間。運転席から見える景色の中には、数えきれないほどの「人の物語」があります。

Aさんの語る非日常な体験は、私たちの日常を少しだけ豊かにしてくれる、不思議な魅力に満ちていました。次にタクシーに乗るとき、もしかしたらあなたも、運転手に「一番遠くまで行ったお客さんは?」と尋ねてみたくなるかもしれませんね。


取材協力:タクシー運転手Aさん
4年半のタクシー運転手経験を持ち、都内エリアで勤務している(2025年10月時点)


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】