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新築を購入した30代夫婦「1年かけたのに…」洗濯する際に発覚した“まさかの大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2025.9.23
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「新築で理想の家を建てたはずなのに、なぜか毎日、洗濯に振り回されている気がします……」

そんな声を聞いたのは、30代共働き・2児のママであるMさんからの間取り相談でした。

マイホームへの憧れを胸に、1年かけて理想の家を建てたというMさん夫婦。しかし、実際に住み始めてからというもの、「洗濯だけで疲れ果てる」日々に悩まされていると言います。

洗濯にこんなに時間を取られるなんて…!

Mさんは、朝の出勤前と夜の帰宅後に洗濯を行う生活スタイル。子どもが小さく、毎日大量の洗濯物が出るため、洗濯機は1日2回まわすのが当たり前です。

「家事の中でも洗濯はラクな方だと思っていました。でも、新居に住んでからは“移動が多すぎて疲れる”って感じています」

実際にヒアリングすると、Mさん宅の洗濯ルートは以下のような流れになっていました。

  1. 1階脱衣所の洗濯機で洗う
  2. 2階のバルコニーまで運んで干す
  3. 乾いた洗濯物は1階リビングでたたむ
  4. 各部屋(1階と2階)にそれぞれ仕分けて収納する

「階段を上ったり下りたり、洗濯物を持って家じゅうを歩き回っている感じです。干す・たたむよりも、“運ぶ作業”が一番大変……」

さらに、小さな子どもがいるため、移動中に呼ばれたり中断されたりすることも多く、「一度で終わらない」「何度もやり直しになる」状況にストレスを感じていたのです。

せっかく家を建てたのに、なぜこんなに非効率なのか?そこには「洗濯動線の落とし穴」が隠れていました。

「洗濯動線がいい家」ってどういう家?

洗濯の負担が少ない家には、いくつか共通点があります。

  • 洗う→干す→しまうが“同じフロア”で完結する
  • 洗面脱衣室に室内干しスペースがある(=天候に左右されにくい)
  • 収納が家族分まとめて近くにある(=ファミリークローゼット)
  • 干す場所からそのままたためるカウンターがある

Mさんのように、「1階で洗って2階で干す」「収納が分散していて、たたんだ後に各部屋を巡回する」といった間取りでは、家全体が“洗濯のための移動ルート”になってしまいます。

「室内干しスペース」を見落とすと後悔する

共働き家庭では、洗濯を夜に回す人も多いでしょう。最近では、外干しよりも“部屋干し”を前提に間取りを考える人が増えています。

しかし新築時、「洗濯はベランダでするもの」という設計士の提案をそのまま受け入れてしまい、室内干しスペースが確保されていませんでした。

そのため、夜は浴室乾燥を使って対応しているそうですが、

「夫が夜お風呂に入る時間と、浴室乾燥のタイミングがかぶって、すごく使いづらいです……」

というお悩みも。浴室乾燥に頼ると、どうしても家族の生活リズムとのズレが出てきてしまうのです。

「洗濯のしやすさ」は暮らし満足度に直結する

Mさんは今、リフォームで“室内干し兼たたみスペース”と“ファミリークローゼット”を検討中です。収納の場所は家族全員分をまとめたファミリークローゼットに切り替えることで、移動の手間を大幅に減らすことができます。

家づくりでは、「リビングを広く」「キッチンの設備を豪華に」といった要望が先行しがちですが、実際に住み始めると、毎日の“地味な家事”のしやすさが、暮らしの快適さを大きく左右することが見えてきます。

一級建築士からのアドバイス「間取りに“洗濯動線”という視点を」

マイホーム計画では、「洗濯動線」を最初からしっかり考えることが重要です。以下のポイントを意識すると、暮らしの質は大きく変わります。

  • 1階と2階をまたがずに洗濯が完結できる動線か?
  • 室内干しスペースは確保されているか?
  • 家族分の収納が動線上にまとまっているか?

洗濯は、“ラクになるか、面倒になるか”が間取り次第で大きく変わる家事です。

「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、洗濯動線こそ、“建てる前に最もチェックすべき家事動線”なのかもしれません。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。