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二世帯住宅を購入した30代夫婦「詰んだ…」友人の一言で絶望…2年後に発覚した“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2025.9.20
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

「親と一緒に住めば、子育てもしやすいし安心だと思っていました。でも、正直こんなに気を使うとは……」

これは、相談を受けた30代共働き夫婦の声です。

夫の親からの「土地提供」や「頭金の援助」などが後押しとなって、二世帯住宅を選びました。ところが、住み始めて2年、家はすっかり“心の休まらない場所”になってしまっていたのです。

「“ほぼ”完全分離型」は予想以上につながっている

相談者のKさん夫婦が建てたのは、「玄関共有」の“ほぼ”完全分離型二世帯住宅。

建てた当初は、

  • 育児を親に頼れる
  • 将来的な介護にも備えられる
  • 土地代を節約できる
    といったメリットを想定していました。

しかし、実際はどうだったかというと──

「子どもが泣くと、すぐ親がリビングに顔を出して“どうしたの?”って…正直、毎回ちょっとした緊張感があります」

構造上、音が筒抜けになることや、生活リズムが異なることで生じる気配の干渉が、じわじわとストレスになっていったのです。

「頼れる」から「踏み込まれる」へ──親との距離感が崩れる

当初は「夫の親が近くにいてくれて心強い」と感じていた奥様。特に育児においては、保育園の送り迎えや急病時の対応などで親の協力が得られるのは大きな安心でした。

しかし、次第に“ありがたさ”が“圧力”へと変化していきました。

「“そんなに遅くまで働くなんてかわいそう”とか、“もっとしっかりご飯作ってやらないと”とか……気遣いというより、干渉に近い言葉が増えてきました」

「生活のペースも価値観も違うのに、いつも“一つ屋根の下に住んでいるのに”って当然のように求められるのが苦しい」

実際のところ、世帯が違えばライフスタイルも価値観も違うもの。家という空間を共有してしまうと、それがどうしてもぶつかりやすくなります。

「売れない家」に気づいた、二世帯住宅の落とし穴

もうひとつ、見落とされがちな問題が「資産性」の低さです。

Kさん夫婦は「いずれ親が高齢になったら売却して、別の場所へ移ろう」と考えていました。しかし、不動産会社に勤めている友人に相談してみると──

「これは買い手、相当限られるよ……。二世帯住宅ってニーズが特殊だから」

と言われたのです。

実際、中古住宅市場では二世帯住宅は

  • 一般家庭には間取りが合わない
  • 設備が特殊すぎる(キッチン・浴室が複数など)
  • リフォームに費用がかかる

といった理由で買い手が限られ、価格が付きにくい物件の代表格になっています。

「売れないし、親がいなくなった後に広すぎる家だけが残るかと思うと……正直、“詰んだ”と思いました」

建てる前に知っておきたい「二世帯住宅のリスク」

もちろん、二世帯住宅すべてが悪いわけではありません。
しかし、それが機能するためには以下のような条件が必要です。

  • 親世帯と子世帯の生活リズムや価値観に大きなズレがないこと
  • 建物構造上、完全にプライバシーを確保できる分離性があること
  • 将来、1世帯でも住みやすい間取り設計であること
  • いざというときにリフォームや売却しやすい構造・立地であること

これらをクリアせずに「なんとなく親と住めば安心」「土地代が浮くから」といった理由だけで進めると、将来取り返しのつかない後悔に繋がることがあります。

「家」は“長く住む自分たち”のために設計するもの

二世帯住宅という選択肢は、親孝行や安心感、そして土地や資金の援助による経済的メリットなど、魅力的に見えることが多いものです。特に「親から土地をもらえるから」「援助してもらえるなら」と、建築費を抑える目的で選ぶケースは少なくありません。

しかし、その判断が「生活の自由を奪われる」「資産価値が下がる」といった後悔につながることは、決して珍しくないのです。

一級建築士として現場で数多くの相談を受ける中で、こうした“援助ありき”の家づくりが、将来的に選択肢を狭めてしまうリスクを強く感じています。

これから家づくりを考える方には、「今の得」ではなく「将来の自分たちの暮らし」を見据えて、冷静に判断していただきたいと願っています。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。