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「駅近で、保育園まで徒歩5分」のマイホーム購入も…30代夫婦を襲った“まさかの大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2025.9.23
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「駅近で、保育園まで徒歩5分。共働きにとっては理想的な環境だと思って決めました。でも、住んでみたら……想像以上に大変です」

そう話すのは、家を建てて半年が経ったYさん夫婦(30代)。共にフルタイム勤務の2人にとって、「子育てと仕事の両立」は最重要テーマでした。第一子の出産を機に、念願のマイホームを取得。「保育園に通いやすい立地」を最優先に選んだはずが、思わぬ“通園の罠”に悩まされることになったのです。

想定外だった「保育園までの通園ルート」

Yさんが購入した土地は、分譲地内の静かな住宅街。すぐ近くには認可保育園があり、「ここなら朝の送迎もラク」と即決したそうです。

しかし、実際に通園が始まってみると、地図上では見えなかった問題が立ちはだかります。

自宅から保育園までは、一見すると徒歩5分圏内。ところが、その間にある「私道」が思わぬ障害となりました。

私道とは、道路のように見えても実際には個人や団体が所有している通路で、公道と違って自由な通行や整備が制限されている場合があります。Yさん宅の近くにあった私道には、車両の通行を制限するポールが設置されており、通れるのは歩行者のみでした。

「その道にはポールが立っていて、ベビーカーも自転車も通れません。結局、遠回りするしかなくて……」

通れるのは歩行者のみ。ベビーカーを使うときは抱えて持ち上げるか、大きく回り込んで徒歩15分かかる舗装道を選ぶしかない状況。特に雨の日や子どもが寝てしまった帰り道などは、大きなストレスになります。

「最初は我慢していましたけど、荷物が増える週末や、上の子と下の子を連れて歩くときは本当にしんどくて。毎朝“時短”どころか、余計にバタバタです」

こうして、「保育園が近い」という立地のメリットは、「私道」という落とし穴で大きく崩れてしまったのです。

兄弟で別園になってしまった悲劇

さらにYさん一家を悩ませたのが、“兄弟別園”の現実でした。

「第一子のときはすんなり入れたので、同じ園に下の子も入れると思っていましたが……まさかの別園。しかも逆方向」

朝は上の子を南側の園に、下の子を北側の園に送ってから自転車で駅へ向かう毎日。移動だけで30分以上かかるうえ、それぞれの園で保育士さんと会話する時間や持ち物のチェックもあり、毎朝が時間との戦いです。

「“近くに保育園があるから大丈夫”って思っていましたが、実際は2園をハシゴする日々で……。もっと事前に調べておけばよかったと後悔しています」

多くのの自治体で兄弟同園の「優先枠」を設けていますが、それはあくまで空きがある場合に限られる措置。Yさんが希望した第一子と同じ保育園は、駅近で人気の高い園だったため、そもそも空きが出にくく、兄弟でも同じ園に入れない可能性が高かったのです。

「便利そう」だけで選ぶと、育児ストレスは倍増する

現場で数多くの相談を受ける立場として強く感じるのは、「地図や数字だけで判断してはいけない」ということです。

実際、Yさん夫婦のように、「ベビーカーや自転車が通れない道が通園ルートにある」「兄弟で同じ保育園に入れない可能性を見落とす」といった“想定外”は、暮らしのなかで確実に負担となっていきます。

とくに「徒歩○分」といった距離表示は、子ども連れ・荷物持ち・雨天時といった条件ではまったく参考にならないことも多く、「実際に歩いてみる」などの事前検証が不可欠です。

「地図上で便利そう」だけで選んでしまうと、日々の通園や育児の動線がかえって非効率になり、朝から疲れ切ってしまう生活が始まる可能性もあります。

「地図」より「暮らしの動線」を見よう

一級建築士として多くの家づくりに携わってきましたが、共働き・子育て世代の設計で一番大切なのは、「通園・通勤・家事」の動線シミュレーションです。

徒歩○分、駅チカ、土地価格──いずれも重要な判断材料ですが、それだけでは見落とすリスクも大きいのです。

子どもが何歳のとき、どのルートで通園するのか。悪天候のとき、ベビーカーはどこを通れるのか。

このように、具体的な“生活の風景”を細かく想像しながら計画を立てることが、後悔しない家づくりの第一歩です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。