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「玄関応対料金1分5,000円」ステッカーに法的効力はある?訪問セールス対策の有効性を弁護士に聞いてみた

  • 2025.9.28
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出典:Photo AC/画像加工:TRILL ※画像はイメージです

近年、宅配サービスの普及やネットショッピングの定着により、私たちの住まいを訪れる人の種類も多様化してきました。

一方で、依然として根強く存在するのが、アポなしの訪問セールスや勧誘です。インターネット回線やリフォーム工事など、さまざまな商品やサービスの営業マンが突然やってきて、長時間にわたって話を聞かされた経験がある人も多いのではないでしょうか。

SNS上で「自宅にアポなくやってくる訪問セールスや勧誘を防ぐために『玄関応対料金 1分5,000円 呼び鈴を押した場合、上記に同意したとみなします』等の文言の書かれたステッカーをインターホンに貼っている」といった趣旨の投稿がされ、「法的には無効では?」「『払うから話を聞け』と言われても困る」等と話題になりました。

はたして、このようなステッカーは法的に有効なのでしょうか?気になる疑問について、弁護士さんに詳しくお話を伺いました。

「料金ステッカー」の法的効力と訪問セールス対策を弁護士が解説

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

---このようなステッカーは法的に有効なのでしょうか?

寺林弁護士:

結論から言うと、「玄関応対料金」のような貼り紙に法的な効力は限定的です。

法的な契約は、原則として当事者双方の合意に基づいて成立します。この貼り紙は、一方的な意思表示に過ぎず、相手方がその内容に同意したとは言えません。

貼り紙には「呼び鈴を押した場合、上記に同意したとみなします」等と記載されていますが、これは民法上の「黙示の同意」とは異なります。「黙示の同意」とは、当事者が明示的に言葉にしなくても、その行動や状況から合意があったと客観的に認められる場合に成立します。

しかし、訪問セールスや勧誘員が、貼り紙の内容を熟知した上で料金支払いに同意する意思をもって呼び鈴を押したと判断することは困難です。そのため、法的に有効な方法とまでは言えないでしょう。

---例えば「5分対応したので、張り紙の通り、25,000円を払ってください」と請求することは違法でしょうか?

寺林弁護士:

「5分対応したので25,000円を払ってください」と請求する行為は、ただちに違法とは言えませんが、その態様によっては法律に抵触する可能性があります。

もちろん、相手方が任意に支払いに応じるのであれば、問題はありません。ただし、法的な支払義務がないことを理解した上で請求する必要があります。

執拗な請求を行った上、「払わないと警察を呼ぶぞ」「会社に乗り込むぞ」などと脅迫的な言動を伴う場合は、恐喝罪(刑法第249条)が成立する可能性があるので、十分に注意する必要があります。

貼り紙を見て「金を払うから話を聞いてくれ」と強制する行為は…

---逆に、セールス側が「貼り紙の通り、3万円払うので必ず今すぐ6分話を聞くように」などと強制することは可能なのでしょうか?

寺林弁護士:

結論から言うと、セールス側がこのような形で「話を聞くことを強制する」ことは、法的に認められていません。このような行為は、「特定商取引法」によって厳しく規制されています。

特定商取引法は、消費者と事業者間のトラブルを未然に防ぐため、訪問販売などの取引形態において事業者が守るべきルールを定めています。セールス側が「3万円払うから話を聞け」と迫るような行為は、特定商取引法6条3項で、消費者を「威迫して困惑させる」勧誘行為として禁止しています。

・「3万円払うので」という金銭の提示
この行為は、一見すると有利な条件のように見えますが、消費者に対して心理的な圧力をかけ、冷静な判断を妨げる行為とみなされる可能性があります。特に、その場で即座の決断を迫る態様であれば、「威迫」とまでは言えなくとも、消費者を「困惑」させる行為に該当するでしょう。

・「必ず今すぐ6分話を聞け」という強制
これは消費者の「話を聞かない」という自由な意思を無視するものであり、消費者のプライバシーや平穏な生活を侵害する行為です。消費者側が「結構です」「話を聞く気はありません」と意思表示をしたにもかかわらず、居座ったり、金銭を理由に話を聞くことを強要したりする行為は、明確な違法行為となります。

そのため、消費者庁からの業務改善命令や業務停止命令、業務禁止命令の対象となりえます。また、セールスマンについては、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金、あるいはこの両方が科される可能性があります。さらに、セールスマンが所属する会社には、1億円以下の罰金が科される可能性があります。

しつこい訪問セールスを避ける手段!

このような貼り紙、ステッカーは法的効力は限定的であることがわかりました。

では、突然やってきて話を区切らせず、断ってもしつこく引き下がってくる訪問セールスを避けたい場合、どのような対策ができるのでしょうか?寺林弁護士に、法的観点からアドバイスをお伺いしました。

相手について確認し、拒絶する

寺林弁護士:

以下の方法が考えられます。

1. 相手の情報を確認し、明確に断る
最も基本的な対策ですが、最も重要な対策といえます。

・ドアを開ける前にインターホン越しに対応する
不審な場合はドアを開けず、インターホン越しに用件を確認しましょう。

・「特定商取引法」を盾に情報を確認する
訪問販売員には、勧誘の前に以下の4点を告げる義務があります。
1、販売事業者の氏名・名称
2、担当者の氏名
3、勧誘に係る商品・役務(サービス)の種類
4、勧誘が目的であること

・明確な「拒絶の意思」を伝える
「お断りします」とハッキリと伝えましょう。「いりません」「買わないです」と明確に意思表示したにもかかわらず、居座ったり、再度勧誘を継続する行為は「特定商取引法第17条(再勧誘の禁止)」に違反します。この法律があることを伝えるだけでも、相手は引き下がる可能性が高まります。

---「特定商取引法」について頭に入れておくとスムーズですね!

ステッカーも法的根拠は薄くても効果はある

寺林弁護士:

2. 訪問を物理的に・心理的に拒否する
前述の「玄関応対料金」のステッカーが示すように、法的な根拠は薄くとも、訪問を事前に防ぐための心理的な対策も有効です。

・「セールス・勧誘お断り」のステッカーを貼る
「当家は訪問販売・勧誘の一切をお断りします。ご用件のない方の呼び鈴・ドアノックはご遠慮ください」といった内容のステッカーを、インターホンや玄関ドアに貼っておくことで、訪問販売員に事前に断りの意思を明確に伝えることができます。

これ自体に法的効力はありませんが、多くの訪問販売員はトラブルを避けるために、こうした明確な意思表示がある家を避ける傾向にあります。

・オートロックや防犯カメラの設置
マンションなどのオートロックは、不審な訪問者を物理的に遮断する最も有効な手段です。

玄関先に防犯カメラを設置しておくことも、相手に「記録されている」という心理的な圧力を与え、不審な行為を抑止する効果があります。

あまりにも悪質なケースは通報を

寺林弁護士:

3. 警察や消費生活センターへの通報
悪質なケースや、明確に「特定商取引法」に違反していると思われる場合は、公的機関に相談・通報することも有効です。

●警察への通報
・不退去罪:相手が帰るよう求めたにもかかわらず、居座り続ける場合は「不退去罪」に該当します。この場合は、ためらわず「警察に通報します」と告げ、110番通報しましょう。

・迷惑防止条例違反:相手が、過剰な言動やつきまといによって生活の平穏を害している場合は、都道府県の迷惑防止条例に違反する可能性があります。

●消費生活センターへの相談
事業者の不当な勧誘行為について、詳細な情報(事業者名、担当者名、商品名、勧誘内容など)を添えて相談することで、消費生活センターが事業者に対して指導を行う場合があります。

「お断り」の意思表示と適切な対処法が何より重要

「玄関応対料金」のステッカーについて、法的効力は限定的であるものの、心理的な抑止効果は期待できるようです。

より確実な対策としては、特定商取引法に基づいた適切な対処法を知っておくことが重要です。訪問販売員には法的な義務があり、消費者側にも明確に断る権利があります。「結構です」「お断りします」という意思表示をした後の再勧誘は法律違反となるため、この事実を知っておくだけでも大きな武器になるでしょう。

一方で、悪質な業者による強引な勧誘や脅迫的な言動があった場合は、一人で対処しようとせず、警察や消費生活センターなどの公的機関に相談することが大切です。

最終的には、消費者自身が特定商取引法などの知識を身につけ、適切な対処法を実践することが、訪問セールスのトラブルを防ぐ最も確実な方法といえるでしょう。

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