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3000万円の罰金も!?「BBQで家族と食べる分だから」「知らなかった」は通用しない→“密漁”の境界線を弁護士に聞いた

  • 2025.9.24
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出典:Photo AC ※画像はイメージです

夏休みに、海水浴や磯遊びを楽しんだ人も多いのではないでしょうか。岩場でカニを捕まえたり、潮だまりで小魚を観察したり、家族連れにとっては楽しいひとときです。ですが、魚介類の採捕には注意が必要なのです。

SNS上で「家族で食べる分だからと海でアワビを獲って捕まった」というニュースが拡散され、「知らなかった」「毎年こりない奴らがいるなあ」と話題になりました。

はたして、サザエやアワビを無断で獲る行為は、法的にどのような問題があるのでしょうか?気になる疑問について、弁護士さんに詳しくお話を伺いました。

実際にはこんな事件が

2025年7月から8月にかけて、酒田海上保安部は庄内浜での密漁事件で県内外の男女16人を摘発しました。摘発された人たちは、鶴岡市の由良、今泉、温海などの海岸で道具を使用してサザエやアワビを密漁していた疑いが持たれています。

また、青森県では9月3日、消防署に勤務する30代の男性が深浦町北金ヶ沢の海岸でアワビを獲っているところを青森海上保安部に発見され、取り調べを受ける事件も発生しました。

これらの事件で注目すべきは、摘発された人たちの動機の多くが「家族で食べる分なら」「バーベキューで友人と食べよう」といった、いわゆる“レジャー感覚”だったということです。売り払って儲けてやろうという営利目的ではなく、「ちょっとくらいならいいだろう」と行為も違法となるのです。

「家族で食べる分」でも犯罪?弁護士が解説する密漁の実態

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

許可なく海でサザエやアワビを獲る行為はどんな罪になる?

---許可なく海でサザエやアワビを獲ることは、どういった法に触れるのでしょうか?

許可なく海でサザエやアワビを獲る行為は、主に以下の2つの法律・規則に抵触する可能性があります。

・漁業法
多くの沿岸では、漁業協同組合(漁協)に特定の水産物を採捕する「漁業権」が与えられています。アワビやサザエなど、定着性の貝類は「共同漁業権」の対象となっていることがほとんどです。

この漁業権が設定された区域内で、組合員でない一般人が許可なく採捕すると、漁業権の侵害にあたり、100万円以下の罰金が科される可能性があります。

加えて、アワビやナマコは、2020年の漁業法改正により「特定水産動植物」に指定され、密漁に対する罰則が大幅に強化されました。これを許可なく採捕すると、3年以下の懲役または3,000万円以下の罰金が科せられる可能性があります。これは、個人への罰金としては最高額クラスであり、密漁防止の強い意志が示されています。

・都道府県漁業調整規則
各都道府県が水産資源の保護・管理のために、独自に定めている規則です。

アワビやサザエの採捕可能期間やサイズ、使用できる漁具・漁法(例:水中メガネや潜水具の使用禁止)などが細かく規定されています。

これらの規則に違反した場合も、懲役や罰金が科されます。罰則の内容は各都道府県によって異なりますが、例えば「6か月以下の懲役若しくは10万円以下の罰金」と定めている例もあります。

どこからが「違法」?

---どのような行為が合法と違法の境目なのでしょうか?

観光客や地元住民が磯遊びをする場合、「どこまでが合法か」という線引きは、以下のポイントで判断されます。

・漁業権の有無
最も重要なポイントです。漁協が漁業権を持つ場所では、原則として漁業権の対象となる水産動植物(サザエ、アワビ、ウニ、ワカメなど)を採ることはできません。看板などで「磯遊び禁止」や「採捕禁止」と表示されていることが多いです。

・獲ってよい種類と量
釣りや素手での採捕が許可されている場所でも、獲ってよい魚介類の種類や、採捕できるサイズ、一日の量が制限されている場合があります。

・使用する道具
モリ、水中銃等の漁具の他、ダイビング器材なども、多くの場所で一般人の使用が禁止されています。素手や竿釣り、タモ網などの、一部の簡単な漁具のみ許可されていることが多いです。

一見、レジャー感覚で楽しんでいるように見えても、上記のルールに違反している場合、それは「密漁」とみなされ、法的な罰則の対象となります。

---本人は楽しんで獲っているだけという感覚でも「密漁」にあたる可能性があるのですね。サザエやアワビ以外の魚介類も「密漁」とみなされる場合はありますか?

サザエやアワビ以外の魚介類(イカ、タコ、イセエビ、ウニなど)も、多くの場所で漁業権の対象となっています。特にイセエビやナマコも高価なため、アワビと同様に密漁の対象となりやすく、厳しい規制が設けられています。

一般的な魚や、一部のアサリなど、漁業権が設定されていない水産物もありますが、各地域の漁業調整規則で採捕できる期間や量、方法が定められています。安全にレジャーを楽しむためにも、事前に目的地のルールを確認することが不可欠です。

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出典:Photo AC ※画像はイメージです

どのような刑罰が科される?

---実際に摘発された場合、どのような刑罰や罰金が科される可能性があるのでしょうか?「違法だと知らなかった」場合も罪になりますか?

1、「違法だと知らずに少量獲った」場合

・刑罰の可能性
法律を知らなかったことは、原則として罪を免れる理由にはなりません。

しかし、初犯で、採捕した量がごくわずかであり、反省の態度が見られる場合、微罪処分(正式な起訴をせずに、検察官の判断で起訴猶予や不起訴処分とすること)や、略式起訴による罰金刑で済まされるケースが多いです。

・罰金の相場
漁業法や都道府県漁業調整規則に定められた罰金が科されることになります。罰金の金額は事案によって異なりますが、数十万円程度の罰金となることもあります。

アワビやナマコの場合、たとえ知らなかったとしても、法定刑の3,000万円以下の罰金という高額な罰則が適用される可能性があり、特に注意が必要です。

2、「違法だと知っていて少量獲った」場合

・刑罰の可能性
違法性を認識していたため、悪質性が高いと見なされます。

罰金刑となる可能性が高く、特に悪質性が高いと判断されれば、懲役刑が科されることもありえます。

・罰金の相場
法律の定める上限額に近い罰金が科される傾向にあります。アワビやナマコであれば、やはり3,000万円以下の罰金が科せられる可能性があり、数十万〜数百万円の罰金刑になることも想定されます。

3、「販売を目的にしている」場合

・刑罰の可能性
これは最も悪質性が高いケースであり、商業的な密漁と見なされます。

営利目的の密漁は、漁業者の生計を直接脅かす行為であるため、厳罰に処される可能性が非常に高いです。懲役刑が科されることも珍しくなく、執行猶予がつかない実刑判決となるケースもあります。

・罰金の相場
アワビやナマコであれば、3,000万円以下の罰金が科せられる可能性が高く、数百万〜数千万円の高額な罰金が科されることもありえます。

さらに、密漁で得た収益や使用した漁具なども没収される可能性があります。

つまり、(1)「法律を知らなかった」としても刑罰の対象にはなりえること、(2)目的によって悪質性が変わり刑が重くなっていくこと、(3)少量であっても違法であることに変わりないことに注意が必要です。

---「やってはいけないと知らなかった」は通用しないのですね。海遊びに行く前に知識を入れておきたいですね。

 

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出典:Photo AC ※画像はイメージです

「密漁」にならないように注意すべきこと

---一般の人が密漁とならないためには、どのような点に注意すべきでしょうか?

以下のようなことが考えられます。

・「漁業権」の存在を理解する
日本の沿岸の多くの漁業権設定区域では、漁業協同組合(漁協)が持つ「共同漁業権」が設定されています。この漁業権は、特定の水産物(アワビ、サザエ、ウニ、イセエビなど)を、漁協の組合員のみが採捕する権利を定めたものです。

「磯に生えている海藻や、岩場にいる貝は誰でも獲っていい」という考えは間違いです。漁業権の対象となる水産物は、許可なく獲ると「密漁」となり、罰則の対象となります。

・事前に現地のルールを調べる
漁業権や各都道府県の漁業調整規則は、地域によって異なります。

訪れる予定の場所の地元の漁協や自治体、観光協会のウェブサイトなどを事前に確認し、何が獲れて、何が獲れないのか、どのような道具が使えるのかを把握しておくことが不可欠です。

多くの海岸や漁港には、「採捕禁止」「密漁は犯罪」といった警告看板が設置されています。これらの看板を見かけたら、その場所での磯遊びは控えるべきです。

・獲ってよいものを知る
場所によっては、釣りや潮干狩り(アサリなど)が許可されているところもあります。しかし、その場合も、採捕できる期間や量、サイズが厳しく定められていることがほとんどです。

許可された水産物であっても、稚貝や規定サイズ以下のものは獲らないようにしましょう。これは資源保護のためのルールであり、守らなければ違反となります。

・「レジャー」と「漁業」の道具を区別する
磯遊びを楽しむ際は、許可されている道具(例:素手、タモ網、釣り竿)に限定しましょう。

水中メガネ、シュノーケル、フィン、モリ、水中銃などは、一般人が使用すると密漁行為とみなされる可能性が極めて高いです。これらは「漁具」とみなされ、特別な許可なしでの使用は違法です。

・不審な行動をしない
人目につかない場所でコソコソと獲ったり、夜間に懐中電灯を持って採捕したりする行為は、「密漁」を目的とした悪質な行動だと見なされやすくなります。

また、獲ったものを隠したり、過剰に獲ったりする行為も、摘発のきっかけとなります。

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法律を知らないでは済まされない現実

「家族で食べる分だから」「少しだけなら」という気軽な気持ちでも、犯罪行為になります。特に、アワビについては最高3,000万円という個人の罰金としては高額な金額が設定されています。

多くの人にとって漁業権や漁業調整規則は馴染みのない法律かもしれません。しかし、法律を知らないことは違法行為を免れる理由にはならないというのが原則。知らず知らずのうちに犯罪になってしまわないよう、海でのレジャーを楽しむ前には必ず現地のルールを確認することが大切です。漁業調整規則は都道府県ごとに異なるため、注意が必要です。

海での磯遊びは家族連れにとって楽しい思い出になりますが、ルールを守ってこそ本当の楽しさを味わえるもの。「これくらい大丈夫だろう」という安易な判断が、取り返しのつかない結果を招く前に、正しい知識を身につけて安全に海を楽しみましょう。


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