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「SNSに映画の切り抜き流れてくるけど犯罪じゃない?見ていいの?」弁護士が徹底解説!「1000万円以下の罰金の可能性も」

  • 2025.9.6
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出典:Photo AC ※画像はイメージです

SNSは私たちの生活に深く根ざし、日々さまざまなコンテンツが共有されています。映画やドラマの感想を語り合ったり、お気に入りのシーンについて盛り上がったりという経験のある方も多いでしょう。

しかし最近、そんな便利なSNSで深刻な問題となっているのが、映画の無断転載問題です。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』や『8番出口』など、現在劇場で公開中の映画が、TikTokなどで切り抜き投稿されているケースがあり、SNS上では「楽しみにしてたのに最悪」「どこに通報したらいいの!?」と議論を呼んでいます。

はたして、映画をSNSに投稿することや拡散することは、どのような罪になるのでしょうか?気になる疑問について、弁護士さんに詳しくお話を伺いました。

映画の無断転載は著作権法違反!弁護士が詳しく解説

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

映画をSNSに無断転載するのはどんな罪になる?

---劇場公開中の映画をSNSに無断転載することは、法的にどのように扱われるのでしょうか?

結論から言えば、劇場公開中の映画をスマートフォン等で撮影するなどしてSNSに投稿する行為は、著作権法に違反する可能性が極めて高いといえます。

1、映画は著作権法で保護される「著作物」にあたります
著作権法上、映画は「著作物」として保護されます。映画には、脚本、映像、音楽、演技、編集といった多くの創作的要素が結集しており、それらすべてが著作権の対象です。上映中の映像を無断で撮影・録画することは、著作物の「複製権」や「公衆送信権」を侵害する行為にあたります。

2、無断転載が侵害する著作権
SNSへの投稿は、単なる私的利用ではなく「不特定多数への公開」にあたります。そのため、映画会社や配給会社が持つ以下の権利を侵害する可能性があります。

  • 複製権:映画をスマホで録画すること自体が「複製」にあたります。
  • 公衆送信権:録画した映像をSNSにアップする行為は「公衆送信」にあたり、許可が必要です。

この2つの権利を無断で侵害すれば、民事法上、損害賠償請求や投稿削除の請求を受ける可能性があり、刑事法的にも、著作権法違反(10年以下の懲役または1000万円以下の罰金)に問われることがあります。

3、映画館での盗撮はさらに厳しく規制
加えて、日本では「映画盗撮防止法」(正式名称:映画の盗撮の防止に関する法律)が存在します。この法律により、上映中の映画を録音・録画する行為は、たとえ個人的に楽しむ目的であっても犯罪とされ、刑事罰の対象になります。SNSへの投稿以前に「盗撮した時点」で違法となるので注意が必要です。

SNS閲覧側も処罰されることってある?

---SNSに流れてきて、閲覧、いいね、リポスト(拡散)、保存などをした場合、それぞれ罪に問われることはありますか?

1、「閲覧するだけ」の場合
基本的に、ユーザーが単に無断投稿された動画を閲覧するだけで、著作権侵害に問われることはありません。著作権法が直接規制しているのは、著作物を「無断で複製・配信・公衆送信する行為」であり、視聴すること自体は処罰対象ではないからです。

ただし、違法動画を繰り返し視聴・利用することは、著作権者の権利を害する行為を助長していると見なされ、社会的批判を受ける可能性はあります。

2、「いいね」をした場合
いいね(評価・ブックマーク)自体は著作権侵害には当たりません。単なるリアクションにとどまるためです。

3、リポスト・シェア(拡散)をした場合
こちらは注意が必要です。リポストはプラットフォームの仕組み上「元の投稿をそのまま再表示する」行為であり、通常は新たな複製や送信にはあたりません。したがって、原則として著作権侵害には問われません。

しかし、違法性が明らかなコンテンツを積極的に拡散する行為は、違法行為を助長していると評価される可能性があります。裁判例として直接的な責任が問われた事例は少ないですが、モラル面・SNS規約上のリスクは大きいといえます。

4、「保存(ダウンロード)」の場合
「保存」に関しては線引きが厳格です。

個人の端末に保存する行為は「複製」にあたり、著作権者の許可がない以上、違法ダウンロード禁止規定(著作権法第30条)に該当する可能性があります。

特に「違法にアップロードされたコンテンツ」と知りながら保存した場合は、刑事罰の対象となることもあります(2年以下の懲役または200万円以下の罰金)。

無断転載は許せない!私たちに何ができる?

---SNSにこのような無断転載動画が流れてきた場合、私たちはどのような対応ができるでしょうか?

1、「通報機能」を活用する
多くのSNS(X、Instagram、YouTube、TikTokなど)には、著作権侵害や不適切なコンテンツを報告するための通報機能が備わっています。

  • 動画の右上などにある「…」マークから「報告」「通報」を選ぶ
  • 「知的財産権の侵害」「著作権侵害」など該当する項目を選んで送信

このようにすることで、SNS運営側に対して削除や制限を促すことができます。

2、著作権者(映画会社・配給会社)への連絡
自分が発見した違法動画を、公式サイトや問い合わせ窓口に知らせるのも有効です。映画会社は自らの権利を守るため、専門部署や弁護士を通じて迅速に削除要請を行うことができます。

個人から直接削除を求めることはできませんが、権利者に知らせることで違法行為の是正につながります。

3、拡散しない・保存しない
「違法動画を知らせたいから」といって拡散や保存をしてしまうと、結果的に違法コンテンツの流通に加担することになりかねません。

  • 見つけてもリポスト・シェアはしない
  • 画面録画やダウンロードもしない

ということを徹底し、違法コンテンツを広げない姿勢が、最も効果的な対応の一つです。

「知らなかった」じゃ済まされない!作品を守る意識が大切

映画の無断転載は明確な著作権侵害であり、法的にも重い処罰の対象となります。そして、違法アップロード動画を保存した場合も禁止規定に該当したり、刑事罰の対象となったりする可能性もあり、決して他人事ではありません。

映画は多くのクリエイターが時間と情熱をかけて作り上げた作品です。もし違法動画を発見したら、適切な方法で通報することで、作品とクリエイターの権利を守っていきたいですね。

SNSを楽しく安全に利用するためにも、著作権への理解を深めることが大切なのですね。

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