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タワマン購入者「投資目的なら実質ゼロ円で…」甘い話を信じた人の末路は…“デカすぎる代償”【一級建築士は見た】

  • 2025.9.4
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出典元:ChatGPT(イメージ)

「実質ゼロ円でタワマンが持てる」「住まずに貸せば高利回り」――そんな言葉をSNSやで見かけたことはありませんか?

実はこのような投資スキームの多くが、住宅ローンを“本来の目的”以外に使う契約違反行為にあたる場合があります。とくに近年では、タワーマンションを購入後すぐに賃貸へ回す“住宅ローン偽装”が問題視されており、一括返済やブラックリスト入りといった深刻な事態につながるケースも出てきています。

居住用ローンと投資用ローン――その違い、知っていますか?

住宅ローンは「本人や家族が住むこと」を前提とした金融商品です。金利が低く、審査も比較的通りやすいのは、あくまで「生活のための住宅取得」という目的があるから。一方で、投資目的の不動産購入にはアパートローンや不動産投資ローンといった、まったく別の枠組みが用意されています。

それにも関わらず、あえて住宅ローンでタワマンを購入し、購入直後から他人に貸し出す。これは「居住の意思がない」と見なされれば、契約違反と判断され、金融機関からの一括返済請求につながるリスクがあるのです。

「みんなやってるから大丈夫」では済まされない

ネット上では、「実際に住んだことにしておけばOK」「1回でも光熱費を使えば問題ない」など、いかにも“抜け道”のような話が語られがちです。しかし、こうした情報の多くは、表面的であったり、運よく発覚を免れただけの例にすぎません。

住宅金融支援機構をはじめ、各金融機関はここ数年で実態調査を本格化させており、購入後に住民票や電気・ガス契約の有無を確認したり、物件が賃貸サイトに掲載されていないか監視したりするなど、事後チェックの網目は確実に細かくなってきています。

一括返済が突きつけられるとき、何が起きるか?

たとえば5,000万円の住宅ローンを組んだ場合、本来なら35年かけてゆっくり返していく想定です。しかし契約違反が発覚すれば、金融機関は「ただちに全額を返済してください」と求めてきます。

多くの人は当然、そんな現金をすぐに用意できません。では物件を売って返せばいいかといえば、売却価格がローン残債を下回れば差額分が借金として残り、任意売却も進まず、最悪の場合は競売へ移行することもあります。

そして一括返済に応じられなければ、個人信用情報に“事故”として記録され、ブラックリスト入り。新たなローンはもちろん、クレジットカードの発行や住宅の再取得も難しくなります。家族にも少なからず影響が及ぶでしょう。

安全で“合法的”な資産形成の道はある

たしかに、タワマン投資で成功している人もいます。しかし、その多くは投資用ローンを使ったり、法人名義で管理したりと、リスクを理解し、正規の手続きを踏んだ人たちです。

いまは新NISAなどの非課税制度を活用することで、少額からでも堅実に資産を増やしていける時代。どうしても不動産を組み入れたいなら、中古物件を現金で取得したり、正規の投資ローンで運用する方法も検討できます。

住宅ローンは本来、「安心して暮らすための住まい」を取得する手段。
それを本来の目的から逸脱して使うことは、甘い話に見えても、後々高くつく選択肢になりかねません。

冷静な判断が、未来の安心をつくる

他人の成功談やSNSの“おいしい話”に乗る前に、一度立ち止まってみてください。
住宅ローンは「住むための家」を手に入れるためのもの。そこに投資や副収入の要素を無理やりねじ込むことで、あなた自身の未来に“安心”ではなく“爆弾”を抱え込むことになりかねません。

金融機関との契約書にある「居住用として利用すること」という一文。
それは、金融機関からの縛りではなく、あなたと家族の人生を守る「最後のルール」かもしれません。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。